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第11回 なぜ写真館だったのか?(その4・マイナスイメージは逆手に取れ)

前回「写真館」という言葉にはサービス内容がすぐに伝わるという素晴らしい価値が存在しているというお話と同時に、「古くさい」などのマイナスイメージも与えてしまうかもしれない問題があると書きました。
改めて伺います。みなさんは「写真館」と聞いてどうイメージしますか?
「重厚な作品・高級な額・暗いスタジオ・お堅い写真・入りにくい・おじいちゃんカメラマン・ジャケットにスラックス……」
じゃあ「子供写真館」のイメージはどうでしょう?
「明るい店内・可愛いアルバム・ぬいぐるみ・キーホルダー・有名キャラクター・子供ドレス・テンションの高いカメラマン……」いろいろあると思います。

では、もう一度その「写真館」をイメージして次の写真をみてください。

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いかがですか?ハレノヒを知らなければ、おそらく「えっ?」となると思います。そうなんです。
「なぜ写真館だったのか?」その4の理由は、古民家リノベーションプロジェクトによって、従来の写真館の(ビジュアル)イメージを覆すスタジオを作ることが可能だとわかっていたからです。
そもそも第6回で書いた私がスタジオを作ろうと思い立った時、直感的に「古民家」と考えたのは他店との「差別化」と、古民家というワードが持つ「おしゃれ(そう)」というイメージに惹かれたからでした。「古民家=お洒落」最近はどうかはわかりませんが、少なくとも当時は古民家といえば「お洒落」を連想しました。「お洒落な古民家カフェ」なんてと言うと「頭痛が痛い」みたいなもの(ちょっと違うかな?)で、わざわざ言わなくとも「古民家」といえば「お洒落なカフェ」というイメージを伝えられることができたのです。
つまり「古民家のスタジオ」=「お洒落(そうな)スタジオ」であり、それだけでも他とは差別化が図れます。加えてラッキーなことに私はさらなる武器を持つことができました。それが「リノベーション」です。
古民家スタジオはただ古い家をスタジオにしても作ることができますが、+リノベーションとなれば、さらに差別化が図れます。このように「古民家リノベーション写真館」というものを作ることで、写真館というワードの持つ「サービス内容がすぐにイメージできる」メリットと、古民家リノベーションの「お洒落で個性的なイメージ」を両立させ、古臭いなどのイメージデメリットを解消させるだけでなく、そのギャップによって興味を引かせることが可能だと考えました。
実際その狙い通りにすることができたのは、完成後に撮影した先ほどのキービジュアルの写真です。
「写真館ってダサいかも」というイメージがある間はチャンス。誰かがそう思っていればいるほど、そのマイナスイメージを逆手にとって大きく覆すべきです。

ちなみにこのギャップについては様々なところで応用が効きます。以前、朝日新聞出版の週刊誌 AERA(アエラ)に取材を受けた時に、私が発したコメント「田舎のくせに」がブランドを生むという言葉は見事表紙にも使われ、山手線など首都圏の電車の中吊り広告で数十万人に見られたのですが、まさに「〇〇のくせに」という表現はそのギャップの効用を表しています。

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(AERAのWeb記事はこちら)
「くせに」って少し言葉が汚いので「〇〇なのに!?」でも大丈夫。自分の周りでそのようなものを作ることができれば、またいつか書く「ブランディング」の一つの要素になるかもしれませんね。

(あとがき)
最近お会いするカメラマンさんから「ハレノヒさんは古民家をスタジオにしてるんですよね?私も将来考えてるんです」と言われることが増えました。でもだいたいこう答えます。「いいと思います!でも、それだけでお客さんが来るわけじゃないので、事業をするならぜひその他のこともしっかり考えてくださいね」と。
私は運良く古民家リノベーションスタジオを作ることができました。単純にビジュアルだけなら興味を引かせることができるでしょう。しかし、事業経営はそこが全てではありません。まず自分がなぜそれ(写真館やリノベーションなど)をするのか?を立ち止まって考えてみてください。お洒落なスタジオならいけるかもという単純な理由ではなく、戦略的でポジティブな理由としてそれを計画をしているならきっと大丈夫。写真で人を幸せにしてちゃんと食べられる。そんなカメラマンさんを増やしたいと思い私はこのブログを書いています。
なので安易にお洒落なスタジオを作れば儲かるよ。なんて伝わって欲しくありません。まだまだ書くことが山ほどありますが、少しでもヒントになってくれたら嬉しいです。
そうそう、ギャップで言えばさらなるギャップを今考えて動いています。ビジュアルだけでなく活動でももっと「くせに」&「なのに」を増やしていきたいです。

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(改装前のスタジオ)

ギャップってすごいでしょ。笑

株式会社ハレノヒ代表取締役/2015年、築100年の古民家をリノベーションした写真館をオープン。地方写真館の再定義を行うことによって人とまちが豊かになる仕組みをつくろうとしています。その他セミナー講師や各種メディアにも出ています。