柳町1

第17回 開業までの時間は何をする?

私には写真館をオープンすると決まってから、実際に開店するまで1年半という準備期間がありました。今回はその準備期間に何をしたか、そして何をするべきかを書いていきたいと思います。

当然開業するまでの間も生活があります。なので撮影の仕事は続けました。また公庫からの融資もあるとはいえ、開業資金も潤沢にあった方がもちろん良いでしょう。
しかし私の場合、がむしゃらに働いてお金を増やすというよりは、時間のある間にできることをしようと思いました。その多くが自己投資です。
・写真館を始めるにあたり必要になるだろう成人式撮影をはじめとした和装撮影
・集客するためのマーケティング知識
・販促物やホームページをデザイナーに発注するための共通言語となるデザイン知識
・SNSやブログなどの発信には欠かせないライティング(書く)ための知識
・知らないじゃ務まらない経営や経理の基礎など
お金を貯めるどころか、それまでの蓄えを切り崩してとにかく「学び」に時間とお金を使いました。なぜならオープンが近くなると目の前のことだけで一杯一杯になり、新しく学ぶ時間を作ることは難しいと予測がついていたからです。学びをするタイミングとしても最適でした。具体的なアウトプット(この場合は写真館オープンになりますが)が決まっていればいるほど、インプットの質がとてつもなく良くなります。人生もかかっているので尚更です。当社の写真館運営のスタートダッシュが成功したのは、この時期の学びによるものと言っても過言ではありません。

この他、この時期に行っていたのは情報収集。参考になりそうなお店に足を運んだり、人に会いに行ったりと全国を飛び回っていました。開業前にも関わらず、とにかく交通費とセミナー参加費がかかって大変だったのを覚えています。
<事業の内容を考える> →<足りない&必要な知識があれば調べる&学びに行ったり見に行く> →<それを事業計画や戦略に取り込む> →<またわからないことができる> →<調べる&学びに行く> →・・・・・・とにかくこの繰り返しです。
もしあなたが何かを始めようとしていて少しでも時間があるならば、まずは自分と自分の始めようとする事業のことを深く考えてみて下さい。足りないことはありませんか?もし「ない」と思うならば「知らないことを知らない」かもしれません。
また事業を動かしながら「問題が出てきたら考えればいいか。」というのは必ず後手に回り時間を消費します。時間と資金に余裕があるならばそれでもいいですが、開業当初はどちらもないはず。約60%の事業が開業後1年以内に廃業するなんて言われてたりしますが、その原因の一つに足りていないことへの「準備不足」があるのではないかと個人的には思っています。
いずれにせよ、自己投資はきっと自分の価値を何倍にもしてくれます。興味のあることから行動を始めてみてはいかがでしょう?

(あとがき)
開業前に人に会っていたと書きましたが、私の場合近くの人(商圏)に会うことはあまりありませんでした。
「今度、古民家をリノベーションした写真館を作るのでオープンしたらぜひお願いします!」
なんて言って回った方が、オープン時に有利なんじゃないかと思うかもしれませんね。しかし私はそうは思いませんでした。
なぜなら「人は見えるものを信用する=見えないものはあまり信用しない」からです。自分はお店ができることがわかっているから、嬉しくていろんな人に言いたくなる気持ちはわかります。でも人は思っているより他人に興味がないのです。
さらに地方都市で早々とそんな情報を出していたら、既得権益を損なう可能性のある人が何か行動を起こしてもおかしくありません。
また当時、何かの足しになるかと異業種交流会にも何回か参加してみました。が、やはりほとんどの人の反応は同じです。ビジネス交流会の現場の多くの人は「いま、この人が何か自分の役に立つかどうか?」を探しに来ています。個人的な意見ですが、自分が何者であるか明確でない時期はビジネスへの発展を期待するのではなく、友達探しの気持ちで参加するくらいがおすすめです。それならばきっといい人に出会うと思います。
ちなみに士業(税理士さんや社労士さんなど)の方や保険屋さんは多くそのような会に参加されているので、将来のビジネスパートナー探しとして参加してみるのも良いかもしれません。

株式会社ハレノヒ代表取締役/2015年、築100年の古民家をリノベーションした写真館をオープン。地方写真館の再定義を行うことによって人とまちが豊かになる仕組みをつくろうとしています。その他セミナー講師や各種メディアにも出ています。