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大人が子どもから学ぶべきもの

子どもはチャレンジの天才


部屋の床に初めてテープを貼った時、娘にはそれが何を意図しているものか分からないので、触ったり踏みつけたりしながら観察していた。


娘は警戒心が強いのか、初めての環境やモノに触れるとき、いつも人一倍じっくり時間をかけて観察することが多いように思う


このテープは、最近ジャンプを覚えた娘が、今朝からジャンプで少し前に進んでいるのを見て、重心を前に進めるチカラを養うチャンス!と踏んだ親心(笑)で貼ったもの。



テープを跳び越える見本を見せると、娘はすぐに真似をして跳び越えようとする。
何度か転んで失敗しながら、私に見本を見せろと要求してくる。


子どもの成長は速い。
すぐに転ばずに連続で前に跳べるようになる。


何かをひらめいたように踊りだしたり、自分なりの楽しみ方を織り交ぜながら、何度もジャンプする。


私の動きが今までと違うときはよく観察していて、見たあとの娘の動きも少しずつ違っていく。


私の手を借りたり、道具を持ってきたりしながら、動きにアレンジが加わる。


娘の目には私の動きが一体どんな風に映っているのか、よく分からない動きも開発し始める(笑)


誰かのせいで身動きがとれなくなっても(笑)、自分で色々と動いてちゃんと解決できる。




大人が子どもから学ぶべきもの


子どもの遊びのプロセスは、大人の知識学習を加速させる方法に応用できる。


①教育者は、テープを貼る。つまり、課題を設定する。


頭の学習にしても運動の学習にしても、学習をスピードを上げるには効果的な課題設定が重要だと感じている。



何が効果的な課題か?


それは、誰が見ても同じひとつの見方しかできないような課題である。


課題設定でありがちな失敗は、ひとつの課題に複数の見方を持たせてしまうことである。


教育者があれもこれもと欲張れば学習者の注意が分散し、結局一番の目的を達成することにも時間がかかってしまう。


二兎を追う者は一兎をも得ず。急がば回れ。
課題はひとつずつ提示した方が確実に前進する。




②何度も手本を見せ、真似させる


おそらく、手本を見せることを怠る教育者が多いのではないだろうか?


「口で説明はしたから、やるかやらないかは学習者次第でしょう?」


これでは学習は進まない。


百聞は一見にしかず。
私なら、説明は要らないからやっているところを一度だけ見せてくれれば良いのにと思う。


口での説明に徹し見習わせることをやらなくなると、観察力が育たなくなり「指示待ち」を量産する。


初めに必要な指示は、「見て」 と 「真似して」 の二言。
後から出てくる質問に対して回答すれば、説明は完了する。


うまくできていれば賞賛し、失敗しても叱責せず、手本との違いをよく観察するよう促す。
細かいことは言わない。何度も手本を見せ、真似するようにだけ指示すればいい。


手本との違いを観察し修正するプロセスを何度も経験すれば、問題解決力も身についてくる。


何度も手本を見せることが難しいなら、動画を撮っておけばいい。残しておけば、何度でも繰り返し見せることができる。



初めのうちは学習者の進歩が見えず、教育者は我慢を強いられるかもしれない。しかし目先の結果にこだわると後々まで尾を引く課題を残すこともある。


手本を見せ、真似させ、褒めて、待つ。
どこが欠けても、学習は遅延すると思っておいた方が良い。



③楽しみ方を探す


これは特に学習者へ伝えたい。


教育者が設定した課題をやり遂げることで、自身のスキルアップに繋がることは間違いない。


しかし、同じ課題を同じ期日までにやり遂げた2人の新人へ再び課題を出した時、新人Aは課題を2日で仕上げたのに対し、新人Bは1週間を要した。この2人は何が異なっていたのだろうか?


この差は、潜在的な能力や才能の類いではない。
課題を自分なりに楽しむ方法を見つけられるかどうかの違いだ。



2人の新人が1つ目の課題を仕上げたプロセスを見てみよう。


新人Aは、楽に人一倍の成果をあげる方法を考えることが好きだったので、示された課題の意図を深く知るために質問し、課題を効率よく終わらせるための良いアイディアがないかを、インターネットやビジネス書を読んで探し、実際に試しながら取り組んだ。


新人Bは、教育者に言われるがまま、ひとまず課題をこなすことしかしていなかった。



期日までに課題を仕上げたという結果は同じだったが、2人のプロセスは全く異なるものだ。


どうせやるならプロセスを楽しめる方が気分が良いし、「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるように、熱中できることの方が上達は早い。



例え自分が好んでやりたいと思えない課題でも、自分なりの楽しみ方を探すことで課題解決のスピードも上がる。


好んでやりたいと思えない課題に対して、どんな楽しみ方ができるだろうか?いくつか例を挙げてみる。


・期日の半分の期間で終わらせることに挑戦する
・ライバルを設定して競う
・その課題が誰を喜ばせるものかを考え、喜ぶ姿を想像する
・再び似たような課題に取り組むときに、10倍のスピードで仕上げるための仕組みを考える
・自分へのご褒美を用意する(これは動機づけにはなっても、スキルアップには繋がらないかもしれないが)



もちろん、何に楽しみを感じるかは人それぞれなので、自分なりの楽しみ方を見つけられるのが良い。それが自己研鑽にも繋がる楽しみ方であればなお良いと思う。



④モノマネからアレンジ、オリジナルへ


マニュアル通り教えていては応用の利かない人間を作ってしまうからと、マニュアルすら使わない教育者がいる。


しかしこれは、初めて床に貼られたテープを見た子どもに、手本を見せずに「このテープで遊べ」と言っているようなものだ。

子どもならこれだけの指示でもなんとかなってしまうかもしれないが、悲しいかな、大人はそう簡単にはいかない。



基本も何も知らない新人には何をしていいのか全く検討もつかず、先輩・上司にとっては当たり前のことが当たり前にできないことすら珍しくない。


まずは基本となる部分の手本を見せ、徹底的に基本を習得させること。その上で応用となる部分の手本を見せ、あらゆる可能性を見せること。


応用や臨機応変な対応というのは基本の上にのみ成り立つと考えるべきであるし、そのための基本の習得には数年を要することもあると考えておいた方がいい。


学習を加速させたければ、焦りは禁物である。







子どもの遊び=運動学習を大人の知識学習へ応用するためのアイディアを紹介した。


これらのアイディアが、子どもを持つ親や社内研修担当者の教育のヒントになれば幸いである。

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