SEIYU某店は私の庭

11月9日
さて、そろそろ自宅の食料が尽きそうである。

休職したことで以前より格段に家で食事を摂ることが多くなったためだろう、食料の減りが早くなっている。
まぁ、それでもコンビニ弁当や外食よりは、家で料理をした方が安く済んでいるので構わない。
外はあいにくの雨だが、今日買い出しに行かないと本当に何もないので、腹を括って外へ出た。

食にあまりこだわりのない貧乏人である私のモットーは、「とにかく安く、量ある食事を」。
もやし、キャベツ、パスタ……愛している。彼らは間違いなく私の味方だ。
反対に精肉コーナーは私の敵だ。1パック分の値段でもやし何袋買えると思っているんだ。こいつを買ったら財布が火を吐いてしまうというのに、私はその誘惑に毎度ドキドキさせられる。
いつか……いつか牛肉を何も考えずにカゴに入れたい……。はぁ、とため息を吐き、後ろの激安価格の卵を購入した。

菓子売り場の横を通りかかった時、キャハハ、と楽しそうな声が聞こえてきた。
反射的にそちらの方を見てみると、制服姿の幼稚園児の男の子が母親と買い物をしているようだった。
「ねぇいいでしょー?!おかし、かおうよー!」
「えー?また買うのー?」
「いいじゃん!ぼく、きょうがんばったよ!きのうもがんばった!いっぱいがんばったもん!」
彼は母親に『自分がいかにお菓子を買ってもらうのに相応しい人材か』を必死にプレゼンしていたが、残念ながらそこに具体性は1mmもなかった。
しかし、その小さな身体をバタバタと大きく動かす全力のパフォーマンスに母親は心を打たれたのか、
「んもう……じゃあ、1つだけね?」
と彼の案を採用した。
「やったぁ!ありがとう!おかあさんにも、わけてあげるね!」
ふむ、彼はしっかり御社へのメリットも提示できるタイプだったようだ。

私は私で、頑張る自分への『自己投資』としてチョコレートの大袋を購入した。
今日購入した食品のどれよりも単価が高かった。
ドブゼニでないことを祈っている。

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