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色気がないんだろうな

3月16日
アテンド2Days!Day1!

朝早い時間からの集合にも関わらず、私は上機嫌だった。
理由は今日の服装にある。
下は動きやすいスキニーにスニーカーであるが、トップスには好きなイラストレーターさんのデザインした白いパーカーを着ていた。ゆるいタッチでギリシャ神話に登場する三つ頭の犬の怪物・ケルベロスの描かれたお気に入りのパーカー。それを着た私を見るなり、他の現場に向かう途中偶然会ったPや演者さんに「かわいい!」と褒めていただけた。
そうでしょう!可愛いでしょうこのパーカー!
心の中でそう叫びながら、えへへと照れ照れした。

演者さんを連れて車両に乗り込み、郊外のショッピングモールへ。
一度来たことのある場所だったので動線もバッチリ!それにここは牛タン弁当を売っているお店があるから、お昼はそれ用意できれば喜んでもらえそう!よし、今日はノーミスで終えれそうだ!
そう思っていたのに。
なのに。
どうして店が潰れているんだ!!!ガッテム!!!

ショッピングモール自体がリニューアル期間中というのは仕方のないことだが、個人的に予定を一つ崩されたようで少し悲しい。
仕方がないので、トンカツ屋さんでお弁当を注文した。弁当を5つも注文する私を見て、店員のおじさまの心の中で『何か』が動いたのだろう。終始ニコニコ優しい口調で接客をしてくれたり、ご飯大盛りをサービスしてくれたり、ポイントカードにスタンプを多めに押してくれたり、「重いけど持てる?大丈夫?頑張ってね」と声をかけてくれたり、とにかく至れり尽くせりだった。
あの優しさの正体を『庇護欲』だということに薄々気が付いていたが、おじさまの目にはきっと『家族のお弁当を買いに行くよう頼まれた高校生』に見えているのだろう。本当は『演者さんのケータリングの買い出しをする23歳のフリーター』であると気がつかれてしまっては、おじさまの感情を傷つけてしまいかねない。そう思い、いつも以上に滑舌を甘くしたりなど、マイナス5歳の振る舞いを徹底した。
私は事件の手がかり見つけて大人に気がつかせる時のコナンくんか何かか?

お弁当問題も解決し、ステージはスタート。
普段、こういうステージの時には後ろの方でPに『今日のステージはこんな感じでした』と報告するための写真を撮影している。
今日もいつものように写真を撮ろうと立見スペース後方に向かうと、イベントの主催元の社員さんと思しき人が笑いかけてこう言う。
「どうぞ、もっと前で見てってください!」
ぐいぐいと最前列鑑賞を勧めてくる。あ、これ絶対お客さんと勘違いされてるわ……
「すみません、演者の事務所のものです……」
多少誇大な自己紹介になってしまったが、こうでもしないとわかってもらえないだろう。社員さんは
「ああっ!大変失礼いたしました!」
と頭を下げた。いえ、いいんです。私が特に社員証みたいなネックストラップも下げず、阿呆丸出しの未成年フェイスなのがいけないんです。
そう思いつつも、違う社員さんを含め合計3回同じやりとりをさせられた。
3回目に関しては、
「これ着てください!そしたらもう絶対間違われないんで!」
と社員さんが着ていた蛍光イエローの眩しい『いかにも客寄せ担当』というデザインのハッピを着せてもらった。
そうだけど、そうじゃない気がする……。

明日はもっと大人っぽく振る舞おう。
そう心に誓った。

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