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仰げば尊死

4月23日
昼過ぎに起きた。
しかし、今日の予定は夕方からのライブスタッフのみだ。

そういえば、と思い出したかのように辺りを見渡す。
部屋が信じられないくらい汚い。物が溢れているというわけではない。トイレ、浴槽、キッチン、リビング……純粋に汚いのだ。そういえば最後にちゃんと掃除したのはいつだったかな……?
普段は人が来るタイミングで掃除しているのだが、掃除って本来そういうものじゃないよなぁと改心し、雑巾掛けやぬめり取りなど徹底して行った。とてもえらい(自己肯定感上げておこう)。

ライブは、頼れる先輩スタッフやおもしろいネタの数々のおかげで大変楽しくできた。
終演後、後片付けをするため、使用した折りたたみ式ステージやパイプ椅子を倉庫に運ぶ。舞台から少し離れた場所にあり、間に扉があって運ぶのに一苦労いるのだが、これも立派な仕事である。そう思いながらステージを引きずっていると、扉の向こうから誰か走ってきた。
小学1・2年生とみられる、小さな女の子だった。
彼女の走りは、てててと可愛らしい効果音でも聞こえてきそう。それだけでも可愛いのに、なんと扉を開けて私のことを待っていてくれたのだ!ええー!すごい可愛い!!
「ありがとうねぇ!すっごく助かっちゃった!」
私がデレデレしながらお礼を言うと、
「ううん!ひとりではこぶの、たいへんそうだったから!」
と誇らしげに返してくれた。
んもー!心が優しいし可愛い!天使じゃん!!
「お手伝い得意なの、すごいね!!」
私がそう褒めると、彼女はさらに胸を張り
「おうちでもね、おてつだいたくさんしてるの!だから、とくいなの!」
とドヤ顔。こりゃ天使じゃなくて大天使だな!!はーーー尊い!!

「すごいねー!おねえさんだねー!」
と賞賛の言葉を送ったあと、私たちはバイバイと手を振りあった。
5mくらい歩いたあと、少しの期待感から振り返ると、彼女は扉を閉めずにまだこちらを見てくれていた。愛おしくてさらに手を振ってまた歩く。ほぼ見えない距離になって、もしかしたらもしかするかもと思い振り返ると、彼女は閉めた扉のガラス窓からこちらを見てくれていた。人目を気にせずブンブンと手を振った。
曲がり角を曲がり舞台に戻ってきた私を、演者はギョッとした顔で見ていた。おそらく、とんでもないにやけっぷりだったのだろう。

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