我が父を思ふ

本日は実家を出てから初めて迎える父の日。

とは言ったものの、別に同居していた頃から父の日を盛大に祝っていたわけでもない。なんなら毎回ギリギリまで忘れていて、滑り込みでプレゼントを渡していたくらいだ。
しかし、だからと言って父のことをどうでもいいと思っているわけでもない。

私の父は、つかみどころのない男である。
学生時代から文武両道、一家の大黒柱として日々働く頑張り屋。尊敬すべき存在かと思えば唐突な冗談をぶち込んだり、よくよく聞けばまともな学生時代を過ごしていなかったようだ。

高校生の頃、剣道部に所属していた父は文化祭でお化け屋敷をやることになったそうだ。
「装飾を凝りたいなぁ」
クラスの誰かの発言を受け、『部屋を竹林みたいにしたら怖そう』というアイデアが浮かび学校の裏山へ行き、木刀を使い持ち前の剣術で竹を刈り取ったらしい。

極論が過ぎる!

思い立ったら即行動に振り切りすぎ!

あと絶対この人、力持っちゃいけないタイプだ!

その話を聞いた時、私は笑いながらそう叫んだ。
ちなみに、竹で装飾したお化け屋敷は午前で廃業。理由は『客で来た女性教諭の足をつかもうとしたところ誤ってケツに触ってしまったため』。オチ秀逸すぎるだろ。

その他にも、『通学に使うバスで友人と「アメリカ横断ウルトラクイズ」ごっこをして、遅刻ギリギリのバスでもクイズに負けると途中下車をする』、『英語のテストで「無茶苦茶」を「no tea hard tea」と訳して先生に呼び出される』などろくなことをしていない。

しかし、それもあってか父は滅多なことでは怒らなかった。
私自身が反抗期らしい行動をしていなかったのもあるが、私の記憶の中の父は大抵笑っているか、冗談を言っているか、YouTubeで昔の特撮を見ているかである。
私が学生時代にテストで大喜利回答をして先生に晒しあげられた時も、母は呆れた表情だったが、父は「お前は本当俺の子だな」とゲラゲラ笑っていた。なるほど、確かに血は争えない。

私と父は性根が似ているらしい。お笑いが好きで、甘いものに目がない。
違いを挙げるとするなら、父の笑いがブラックユーモア寄りということくらいだろうか。父の部屋からカッターを借りようとして「カッター借りるよ」と伝えた時には、「おう、手首切るなよ」と言われた。あまりにナチュラルに言うもんだから一瞬スルーしかけ、気付いた時に慌てすぎて「それを言うなら『手』!」と大変ひねりのないツッコミをしてしまったことを今でも覚えている。どうせならもっとセンスあるツッコミがしたかった。

そんな父が私は好きだった。世の娘が父を嫌う風潮はいまだに理解できない。たぶん、これで1mmも面白くなかったら「私の服と父さんのパンツと一緒に洗濯しないで!」と訴えていただろう。外見はしっかりおじさんだし。

……いや、それだけではない。尊敬しているからだ。
父は今でも定期的に資格取得のために勉強をしたり、毎週欠かさずウォーキングをしたり、自分に必要なものへの努力を惜しまない男である。
そして、私を一人の人間として真摯に接してくれていた。母は割と『娘=自分のもの』という意識が根源にあるらしく「あれしなさい」「これしちゃダメ」と自分の意見を押し付けがちな人だった(今は『この子何言っても聞きゃしない』と気付いたらしく、まじでどうでもいいと思われている。いい意味で)。しかし父は「どうしてこれをしようと思ったのか」と理由を尋ねてくれた。私がそれを伝えると決して良いとも悪いとも言わず、ただ「俺はこう思う。お前が物事を決める上での参考材料にしなさい」と言った。
仕事を辞めて物書きを目指していると伝えた時もそうだった。指示らしい指示と言えば「年金とかはちゃんと払えよ」という当たり前のことだけ。それ以外は「そういう生き方もあるよな。とりあえず、会社員歴先輩の俺の意見も聞いといて」という具合に彼の意見を並べられたくらいだ。きっと「そんなことやめなさい」など指図されていたら、「うるせえ!俺はこれで行くって決めたんだ!」と無駄に意地を張って、今頃あの家に帰らなくなっていただろうな。

先日家に帰った時も改めて言われた。
「お前のやりたいこと・やっていることを、俺は勧めも止めもしない。でも、もし上手くいかずに実家に帰って来ても拒みもしない」
私という人間を、心の底から大切に思ってくれているのだ。
第三者と正面から向き合う誠実さを、どんな娘も受け入れる懐の深さを、私は尊敬している。

今年の父の日は実家に帰れず、初めてプレゼントを郵送した。
父の好物の葛餅、値段は威張れるほどのものではない。
来年はもう少しいいプレゼントができるよう頑張るよ。だから元気でいてよね。

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もちもちの記

気まぐれエッセイ集。 タイトルの読み方はもちろん「もちもちのき」。
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