おいしい1日

11月10日
久しぶりに予定のある1日。

まず、同期の芸人と江古田の茶漬け屋(というか海鮮丼屋。〆でだし汁をかけてくれる。)でランチをした。
私の茶漬け好きを知っていて、その店に案内してくれたという心使いがもう嬉しい。
その上、味噌の味わいを含むだし汁は、なかなか食べたことのない味わいで面白く、何より美味しかった。

昼食後は駅前の喫茶店でコーヒーを啜りつつ、他愛もない会話をした。
私は名もなき文筆家、彼も道半ばの芸人である。
何かしなくちゃね。
こんなことやりたいな。
こんなのっておもしろそうだよね。
どこか通ずるところがあって、長い時間話していて心地よかった。

夕方、彼と別れた後、他の人と待ち合わせのあった私は新宿へ向かった。
1年前、大学4年生だった私は養成所の先輩にあたるプロデューサーの方から、しょっちゅうお仕事をいただいては小遣い稼ぎをしていた。
本業バイトのコンビニ店員で退屈していた私には、その人のくださるある種変わったバイトが魅力的で、よくお手伝いをさせていただいていたものだ。
先日、その方に「休職したのでまたお手伝いできます」的なことを伝えたところ、早速頼みたいことがあるので今日食事しながら話しましょう!と誘ってくださったのである。

私から見てお姉さんのような存在のそのプロデューサーは、とにかく私を甘えさせてくださる存在だった。
出会った瞬間に「少し痩せたんじゃない?」「何食べたい?好きなもの食べていいよ!」と仰った。
有り難すぎる。
しかし、見せられたのは新宿タカシマヤのレストラン街一覧、どれも高級そうで正直怖い。
アウェーな環境にビビり倒しながらも、小さな声で「お米が…食べたいです…」と言うと、お寿司屋に行くことになった。
入ったお店はお寿司屋というか、なんというか、もう『お鮨屋』だった。
皿は回っていない。
カウンターには、寿司ネタになる刺身の原型(貧乏人なのでこれの正しい言い方がわからないのだ)があり、そして職人の雰囲気醸し出す板前さんが構えている。
店員さんが上着を預かってくださる。
握りたての鮨が少量ずつ出てくる。
デザートのバニラアイスが明らかに明治エッセルスーパーカップの味がしない。
そもそも寿司の盛り合わせが5000円する。
すげえ……知らない世界だ……。
ていうか、よく寿司の値段より安いコート預けられたな私。もう誰かしらに怒られるんじゃないか?

そのプロデューサーには感謝しかない。
こうやってご馳走をしてくださるのもそうだが、学生の頃からたくさん色々なバイトをさせてくださったし、何より小娘の私のことを信頼してくださっていた。
3月、「もちづきさんならうまくやれるよ!」といって、就職する私を送り出してくれた。
結果うまくいかなかった私のことも受け止め、心配し、我が事のように将来を考えてくれた。
こんな私でも大切にしてくれる方がいる、その事実が純粋に嬉しくて、お鮨を毎貫食べるたびに本気の『美味しいです』と、わさびのせいではない涙が出た。
滲んだ視界のおかげで大トロが2貫に見えた。

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