まずは相手を知ることからだぜ?お嬢さん

1月23日
午前中に公募用作品をやっとこさ書き上げ、マッハで支度をしてバイトへ。

一昨日と同じ料亭で料理サービスのバイトである。ただし、今日は洋室でのサービスなので、喪服みたいなワンピースを着せられた。
一緒の部屋を担当するのはチーフポジションの女性と、受験を終えた高校3年生の女の子だった。
この女の子、かなりものをハキハキ言うタイプの子で、初対面で挨拶もそこそこに、
「これやってください」
「ここはこうしてください」
と指示を飛ばしてくる。
たまに
「ちがう、そうじゃなくて……」
とタメ口が混ざることから察するに、また例の如く同い年くらいだと勘違いされているようだ。
しかし、ここでの職歴はきっと彼女の方が長いのだろう。2回目の私は「かしこまりました」と返事をして指示をこなした。

休憩のタイミングで、
「ここで働くの何回目ですか?」
と彼女に聞かれた。
「2回目です。一昨日と、今日」
そう答えると彼女は
「えー!一緒!緊張しますよね!」
と喜々として反応した。
いや職歴も一緒なんかい!ただ舐められてただけかい!

終業間際、彼女と私、あともう1人の女子高生とグラスを磨いていると、もう1人の子が
「高校生ですか?」
と私に尋ねてきた。私は
「いいえ、ちがうんです」
と答える。
「あ!じゃあ大学生ですか?」
その子はもう一度尋ねた。普段ならここで『はい!4年生です!』とでも嘘をつきたくなるところなのだが、今日だけはちがった。性格の悪い話だが、ちゃんとあの彼女に、年上であることをアピールしたかったのだ。
「大学生……でもないんです」
私はへらりと笑いながら答えると、質問をしてきた彼女は
「ええ!」
と大きなリアクションをとった。ちらりとあの子を見ると、目を大きく見開いていた。おお、ビックリしてらぁ。
「お、おいくつなんですか?」
驚いた彼女がそう尋ねてきたので、正直に
「22ですよ。今は副業的にこの仕事をしてるんです」
と笑った。ずっと質問をしていた方の女子高生は、
「若く見えますね!本気で同い年くらいに思ってました!」
と息巻いていた。『若く見える』っていうか『幼く見える』って感じだけど……と思いつつ、そのテンションから彼女は純粋に褒めてくれているということがわかったので、「ありがとうございます」と微笑んだ。

それからというもの、ずっと私に指示を飛ばしてきた女子高生は、私が通ろうとするとさっと道を開けてくれたり、『お疲れ様でした』とやたら挨拶してくれるようになった。
ちょっとやりすぎたかしら……?とも思ったが、たまにはお姉さん扱いされたかったし、と自分に言い聞かせ、大層歩きやすくなった廊下を闊歩した。

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