生きたかった朝、生き返った夜

6月18日
自己嫌悪の朝。

10時から18時、ホテルでバイトをする予定だった。
朝起きた時点でやる気はなかったが、これは通常運転。頑張って電車に乗らなきゃ。
やりたくもない仕事に向かう満員電車に乗って、はたと気付く。
これ、AD時代となんら変わらない心境じゃないか。あの頃、こんな思いをしすぎたせいでうつ病を発症して、あの会社から逃げてきた。それなのに、今また『やりたくない仕事』に向かって気を病んでいる。
途端、最悪の気分の悪さ。駅のトイレへ駆け込む。朝気分を上げるために食べた茶漬けが全部出た。

「嘔吐しちゃったら衛生面的にも働かせられない。今日はお休みしてください」
そう現場の人に言われ、さっき来た道を戻っていく。わたしはなんて弱いんだろう。そう思うと情けなくて泣けてきた。
どうにもならなくて、同期の中でも1番信頼を置いている友人に懺悔のようなLINEを送ると、夜うちに来る?、電話で話聞こうか?、とすこぶる気にかけてくれた。ありがたくてたまらなかったが、自分の気分を自分であげることもしないといけない。深夜、電話に付き合ってもらう約束をお守りに、家に帰ってとにかく好きなことをやってみた。文章を書き、本を読み、お笑いを観て、少し眠った。夕方にはだいぶ元気になったので、もともと約束していた中学時代の友人と飯を食べに行った。

銀座『とんかつ にし邑』のとんかつ。薄い桃色のお肉ととサクサクの衣。噛めばプリッと柔らかく、ジューシーだ。お肉のもたらす幸せホルモンと、デザイナーである彼とのつくり手トークで悩みを聞いてもらったりした効果もあり、朝のあの最悪な気分は払拭された。

そして深夜、約束通り彼女に電話をした。
「たぶんね、もちこ働きすぎ」
自分は怠惰だしマトモに働いている実感がなかったので、彼女の診断は目から鱗だった。
「実働時間がなくても色んな現場行ってるでしょ?その分精神的にもエネルギー使うから、今になって蓄積された疲れがどっと来てるんだと思う」
なるほど……そうか、そうだったのか。そう言ってもらえたおかげで、今朝の自分が少し許されたような気がして心が軽くなった。
「これは極論だけど、職務を全うすることよりも自分が生きることの方が大事だからね。そういう考え方もあるよ」
そうだ、命は何物にも代えられない。自分を大切にすることの重要性を彼女から教えてもらった。バイトを変えよう。もっと好きなことを仕事にしよう。彼女に求人サイトの見方や探し方、オススメの媒体等を教えてもらい、あとは他愛もない会話を3時間近くした。
長く、楽しく、生きた心地のする夜だった。

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