私のうつぬけの話「私は元気」

今回、Twitterの5000フォロワーさん感謝企画として、質問コーナーを設けさせてもらいました。
その時寄せられた質問の一つがこちら。

「先生は以前ブログでうつ病だったと書かれていますが、断薬に至るまで、どのようにして乗り越えられましたか??」

これは気合を入れて書かねばならんと思い、一つ記事に仕上げる事にしました。
ただし、色々割愛していますので、欲しい答えではないかもしれませんが、よければご覧ください。

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さあ!
これから、元気な方には「何言ってんだこいつ」というお話をしますよ。
今回の話は、渦中で苦しんでいる方の一助になればと思って書いています。
これは、私の医者としての言葉ではなく、うつ病をした一人の人間の言葉として、お読みください。

読むのが辛くないよう、疲れたら是非目を休め、読む気力が湧いた時にまた続きを読んでやってください。

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私はうつ病でした。研修医の真っ最中にやられました。
寝たきりの生活をし、自殺未遂もしました。一言で言うと地獄でした。
(この辺りの話は本が一冊書けそうなくらい長くなるので割愛。)
それでもなんとか薬飲みながら仕事復帰し、そうこうしているうちに結婚も決まり、「結婚式を目標に薬を抜こう」ということになりました。

しかし、これが辛い。
長く長く馴染んだ薬なので、減らすのに時間がかかります。
少し減らすと、これまで体験した事がないような頭痛に襲われたり、胸をかきむしりたいような不安に襲われたり、喉が詰まったような感じに苦しんだり(所謂ヒステリー球)。
耳鳴りはするし、よくわからないふるえは起こるし、元々めまい持ちだったのが更に酷くなるし。
体調は最悪、心も最悪。
うつ病自体が悪化してるのか、体調に引きずられてるのか、離脱症状の一環なのか……
もうなにがなんだかわからないくらい毎日が辛く、

「もうこのまま、一生薬を飲んだ方が楽なんじゃないか?」
「子供産まなくてもいいじゃないか、もう薬を飲んでそれなりに仕事して生きていける方が幸せじゃないか」

そんな風に考える日もありました。
いや、毎日考えました。
辛くて辛くて、毎日死にたいと思いました。

「でも、死なない約束をしたから、死ぬ事はできない。死ぬまでただ苦しみ続けるだけだ。死ぬまで苦しみながら、生きるだけだ」

毎日考えました。
死にたかった。
心もきついんですが、体調が最悪な状態が続くのが一番きつかった。

「苦しい、死にたい、きつい、いやだ、もういやだ、いやだ」

毎日毎日考え続けて考え続けて、


ふと。


あれ。
こんな事考えてたら、
治るもんも治らないんじゃないか?


と、思いました。


プラセボ効果、というものがあります。
薬としての効果がない薬(ラムネみたいなもの)であっても、「これは薬だ!」と思って飲めば、効果が出ます。不思議なことに。


人の心は不思議なものです。
信じる事で、病気を治す事があります。
そしてそれは逆もしかり。

「毎日死にたい死にたいと言ってたら、元気になるもんも、ならないんじゃないか?」

そこで、私は、マイナスな言葉を考えそうになったら、「嘘でいいから」こんなことを考えるようにしました。

「私は元気!」
「心は晴れやか!」
「気分爽快、気持ちいい!」
「体の中から元気がわき出てくる!」
「体が軽い!」
「私は、元気!」

笑い話のようでしょう?
嘘でいいんです。
こんな事考えて、馬鹿じゃないの?
いいんです、その気持ちで大丈夫です。というか、私自身、そんな風に思いながら、「私は元気私は元気」と考え続けました。
暗い気持ちに負けそうになったら、声に出して言います。小さく呟くだけでOKです。

「私は元気! 全然きつくない。毎日どんどん元気になっていく。すごい!」


そうしたら、

楽になったんです。
体も、心も。

勿論きついんですが、全然違うんです。

気力がわきました。
体が軽くなりました。
苦しいのが、減ったんです。

突然、明かりが見えました。

それから毎日「私は元気!」と考え続け、そして、時間はかかりましたが(一年以上かかった薬もあります)、薬を全てやめる事ができました。

今も、揺り返しが来る事があります。
頓用で薬を飲む事もあります。
辛い日が毎日続きだしたら、一番辛かった時の事を思い出します。

「あの頃に比べたら、今は天国だなあ」

そして、呟きます。

「私は元気、私は、元気!」

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あなたの苦しみと、辛さは、私とは違います。
恐らく「あなたは元気だから、こんな気楽な事が書けるんだ」と思われるかもしれません。
実は、私自身がそうでした。
他の元気な人たちの言葉に耳を貸せませんでしたし、今でも「あなたにはわからない」と思う瞬間があります。
そのくらい、うつ病は、辛い。

私は涙を流しながら呟き続け、そして、ようやく「うつぬけ」をしました。
自分の辛さをただ否定するという行為に見えますが、これは長い長い「自分の辛さを丸ごと受け止める」という時期を過ぎてからの話です。
もう治りそうなのに、最後の最後で抜けきらない。
そんな時にこの話を少しでも思い出してもらえたらな、と思います。

あなたの心と体が少しでも軽くなる事を、心からお祈りしています。
どうか、あなたの今日が、明日が、昨日より少しだけ穏やかで、優しい日でありますように。

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