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キャラクターとライセンス <1>基本

キャラクターのライセンスって話は一般の人にはわからないことかもしれないよね。
みんな使っている文房具(シャレた人はステーショナリーって言うけど)についているキャラクターは、ほとんどがライセンス商品ですよ。
ライセンス商品とは、文房具の製造メーカーが、そのキャラクターが好きな層に向けて買ってもらえるように、キャラクターの権利を持っている会社から借りて自社の商品にデザインして販売するもの。

文房具だけではありません。
バッグ(もっと細かく、トートバッグ、ハンドバッグ、ビジネスバッグなどもっと分ける場合もある)、アパレル、帽子、靴、寝具、家具、ゲーム、ガジェット、デジタル、時計、トイレタリー、スマホケース、インテリア・・・
何でもありです。

当然、権利借りるからには対価が発生するわけで、作った数に小売価格を掛けて、その数%を権利を持っている会社に支払うのです。
時にはキャラクター人気にチカラを借りて、メッチャ売れちゃったりする。すると権利を持っている会社は、契約しただけで(実際はデザインや商品クオリティを監修するわけだけど)数百万円数千万円の収入になるのですよ。これがいわゆるロイヤリティ収入ってやつで、印税みたいなもの。
だから、キャラクター商品は少しだけ上代が高いのです。

多くの人に気に入られる人気キャラクターの権利をメーカーは探しているのだけれど、ライバル会社と権利の取り合いになることもあります。
そのときには、権利保有会社が「どっちにしようかな〜?」って考えて、たくさん売るのは?いい商品つくるのは?というような判断基準でメーカーを選ぶ。時には金額ではなく、仲の良い会社や担当を優先することも。

冒頭の話の専門用語を教えましょう。
権利を貸すこと/借りること=ライセンスする/される
権利を持っている会社=ライセンサー(ディズニーとかワーナーとか)
権利を借りる製造メーカー=ライセンシー
ロイヤリティの割合=ロイヤリティ

ライセンサーが海外の会社だったり、契約書が英語でむずかしかったり、ライセンシーにライセンサーへの伝手(コネクション)がなかったりしたときのために、エージェントという会社が存在したりします。
エージェントはライセンシーの代行をしたり、交渉したり、ライセンシーをまとめてキャラクターを一緒に盛り上げたり、契約書の書き方を教えたり、情報を共有するためにニューズを発信したりする重要な立場なのです。(これやってます、私)

簡単に権利を借りると言うけど、いろいろあるのですよね、実際。
ロイヤリティは作った数に対してだったり、売った数に対してだったり、最初に最低保証金というものを払わなきゃいけなかったり、ロイヤリティの率だったり、売れ残ったときの余った商品の処理の仕方だったり。
裁判になったときにどこの裁判所で争うかも。
すべてぜ〜んぶ契約書に書きます。

契約書に書くといってもだいたいの場合、ライセンサーが各メーカー用にテンプレートで作ったもの(これを雛形といいます)があって、それを基本に交渉しながら決めていきます。
ライセンサーが海外の場合、契約書のページ数が膨大なので、ディールメモってものがあります。
ディールメモがいわゆる日本のライセンス契約書程度のことが書かれていて、これを見れば基本的な内容がわかるようになっています。

もしメーカーが自分の会社でオリジナルキャラクターを制作して商標登録をし、そのキャラクターを商品化すれば、ロイヤリティを支払う必要はありません。ヒットすれば万々歳ですね。

でもちょっと待って!
そのキャラクターって出来たてで、認知度ゼロです。
商品化して売れればいいけど本当に消費者に喜ばれるキャラクターになっている?
確認しなきゃなりませんよね?

リスク大を覚悟して自社商品にデザイン印刷して販売してみましょう。
まず、小売店が売れているミッキーの商品をどかしてまで仕入れますか?
メーカーが自社店舗持っていればいいですけど。
自社サイトで販売しますか?そこへの誘導どうしましょう?

けっこう大変なのですよ。オリジナルキャラを有名にするのは。
例えばペコちゃんとかガリガリ君とかがオリジナルキャラクターですね。
登場してから相当長い時間を掛けて有名になりました。

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そういう意味で、他の会社が作ったキャラクターのライセンスというものが存在します。
だいたい成功報酬的にロイヤリティを支払うので、リスクは大きくありません。
ある程度有名なキャラクターを使えば、四半世紀かけて、自社キャラを有名にする必要がありません。
ただ、有名キャラになるほど、ライセンスしてもらえる確率が下がります。
なぜなら、同業他社が先に契約していれば使えないからです。

企業が商品のために生み出したキャラクターが、キャラクターの全てではありません。
キャラクターをライセンスすることを前提にキャラクターを創り出す会社もあります。誰でも知っているサンリオです。
ハローキティ、シナモロールなど数百のキャラクターをライセンスしていますね。もちろん自社でも商品化してマーケティングも行い、綿密な計画でキャラクターをライセンスしています。

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基本的にライセンスは1業種1社です。
例えば「ノートにキャラを使いたい」ということで契約したら他の会社はノートに同じキャラクターは使えません。
ただし、流通で棲み分けすることがあります。一方は文具店、片方は量販店というように。その場合はデザインを大きく変えます。
(だけどね、ほとんど同じ商品だと価格競争になったりするので、後発のライセンシーが薄利多売したら問題になります←ライセンサー/エージェントの手腕が問われる)
商品企画で棲み分けることもあります。ノートブックと学習帳では違うカテゴリー(競合しない)と解釈する場合もあります。

またはターゲットで棲み分けをする場合があります。一方は小中学生、片方はアダルト向け。そうすると当然デザインが変わり、売り場も変わってきます。お互いにバッティングはせず、かえって相乗効果を生むこともあります。(いろいろな売り場で同じキャラクターが商品化されていると、流行しているように見えますよね)

ライセンスはキャラクターに限ったことではありません。
企業のロゴ(つまり商標)をライセンスしている場合があります。KAPPAやSlazengerなどスポーツブランドなどが多いかもしれません。

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絵画や写真を使う場合も決まった料金を支払いますが、ライセンスの場合とスポットの場合とあります。ライセンスは商品化する場合、スポットは報道や宣伝広告などに使う場合です。

もしあなたが、特定の商品を作るメーカーの、営業推進部、経営企画室、ライセンス関連の部署に所属していたら、キャラクターやブランドの力を借りて売上を伸ばすことができるかもしれません。

単に商品化かもしれませんが、企業コラボや、企業キャラクター/マスコット、キャンペーンや宣伝広告にも、キャラクターやブランドをライセンスすることは同業他社との差異化、アドバンテージをつくる可能性があります。

もし、使いたいキャラがあって、すでに同業他社が使用(契約)している場合でも、諦める必要はありません。商品のちょっとした違いや、あなたの会社の商品の強みを活かす交渉方法はあるのです。
こういったライバルとちょっとした違いを商品化の際にキャラクターやその他の味付けで、ライバルに勝てることも少なくないのですよ!!
これは企画の問題も絡んで来るので、また別途書こうかと思います。

これまでは、ライセンスの基本とキャラクターについて書きましたが、コミックやアニメ、映画のライセンスも存在します。
出版社が所有する権利や、アニメの製作委員会が所有する権利、映画配給会社が所有する権利など、これまで述べてきた一般的なキャラクターとは違い、少し複雑な契約になったりすることがありますが、商品化すると爆発的な販売の可能性を秘めています。
最近の印象的な作品としては「鬼滅の刃」「呪術廻戦」などがありますね。
どちらも、作品も商品化(ライセンス)ともに大成功でした。

ライセンサーが喜ぶライセンシーは、そのキャラクターの価値を上げてくれる商品化やコラボ、たくさん数を売ってくれる商品化、プロモーションに使ってくれるところ、企業のマスコットとして使ってくれるところなどです。

キャラクターの価値を上げてくれる商品化とは、ナショナルブランドメーカーがキャラクターを使って商品化をしてくれるということで、ライセンシーの既存流通(優良な店舗が全国にある)へ配荷してくれるので、他のライセンシーへの良い影響が大きいのです。

もちろんたくさん売ってくれるライセンシーはロイヤリティー収入が大きいけれど、それだけではなく、ファンを喜ばせたという証(あかし)にもなります。ライセンサーとライセンシーは仲良くなりますよね。

プロモーションにキャラクターを使うということは、例えばキャンペーンでの注目力を上げるために、キャラクターのチカラを使って、集客したりすることです。
この場合は、モノを販売するわけではないので、ロイヤリティの計算ができません。契約内容は案件によりいろいろですが、だいたい「プロモーション契約」という契約を交わします。期間や、内容によって「キャラクター使用料」を支払います。
この契約の中にも、キャラクター商品の販売を許諾する場合もあります。その場合も契約金に含まれていたり、別途売上に応じたロイヤリティを支払う場合もあります。

コラボでキャラクターを使うという場合があります。
キャラクターが他キャラクターやブランドとタッグを組み、相乗効果を出すというものです。
その目的は、新しい商品化を生み出す、商品のブランドと面白い企画をつくるなど、使い方はいろいろです。
キャラクター同士のコラボ以外にも、アニメ作品とのコラボであったり、食品とのコラボであったり、他の作家がキャラクターを描いたり、ゲームに他キャラが登場したり・・・

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つづく


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