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私が宝塚に出会って、贔屓が退団するまでの話・ヅカオタへの道編

出会い編の続きです


沼にハマっていく初心者

和希そらはもちろんだったが、私は並行して95期にもハマった。ヅカ初心者がみんな通るであろう、仲良し同期たちである。そしてれいまいに出会った。ハマった。そして、れいまいが次の公演で解散することを知った。この間わずか数ヶ月である。慌てて東京公演のチケットを取ろうと思ったら朝から部活だったので、妹に頼み込んで取ってもらった。1月末の大劇場千秋楽を配信で観て、2月末に東京劇場で観て、東京千秋楽も配信で観た。両千秋楽の水美舞斗の薔薇のことは今でも忘れない。れいまいForever。

ボニーアンドクライドの衝撃

2023年2月に御園座で公演されたボニーアンドクライド。雪組新トップ娘役・夢白あやのプレお披露目公演である。「ボニクラやばい」と観に行ったオタクが口を揃えて言い、「和希そらの事後シーンがある」とかいう変なワードも走り回っていた。「観ないと損」という一言で決心し、前日にキャトルレーヴにスチールとパンフレットを買いに行って、ワクワクしながら配信を見た。とんでもなかった。反社の雪組、ギャングの彩風咲奈。鬼に金棒とはこのことである。もちろん和希そらの事後シーンもあった。大変セクシーだった。そしてまた和希そらは死んだ。派手に撃たれて、血塗れになって死んだ。そこに被さる牧師の伸びやかな歌声はとても美しかった。私はまた和希そらと雪組を好きになった。

本格的な沼への入り口

イープラスに好かれていたのか、月組の「応天の門/deep sea」も貸切公演で見ることができた。原作再現度がえげつなくて感服したのをよく覚えている。しかしそれからしばらく、私は宝塚ではないものもよく見るようになる。まずは劇団四季のノートルダムの鐘。なんならこの年は合計3回観ている。そして同じく劇団四季の「クレイジーフォーユー」。そして、宝塚雪組の「lilacの夢路/ジュエル・ド・パリ」。宝塚でないものを見たと書いたばかりである。月組から3ヶ月しか経っていない。この作品は初舞台生たちが出る作品で、初舞台生の中に元同級生がいた私は少し楽しみにしていた。しかし初舞台生は宝塚劇場にしか出演しないらしい。直前に知った。下調べが甘かった。初舞台生への下調べは甘かったが、作品に対する下調べはある程度していた。例えば芝居で朝美絢が拗らせているとか、ショーで和希そらが生腹と生脚出して踊るとか。とにかく、和希そらを観よう!と意気込んでオペラグラスを構えた。おかげでlilacは和希そら以外の記憶がない。縣千がアクロバットしていて軽率に好きになった記憶はある。アントンかわいい。製鉄所の面々は格好良くて好きだった。それから、美穂圭子さんの歌声が素晴らしくて、さすが専科の方は素晴らしいと、とても感動した。お芝居はそれくらいである。ジュエルドパリはクラシカルで美しいタカラヅカレビューショーであった。和希そらの生腹生脚を堪能して、ラテンに心躍り、カンカンを楽しみ、フィナーレのダンスにうっとりした。メインテーマがとても好きで、観てからずっと口ずさんでいたら妹にうざがられた。もちろん舞台写真はたんまり買った。
ジュエルドパリ以降、夏はフランスのミュージカルばかり見ていた。ムーランルージュ、ノートルダムの鐘、ファントム。全部フランスの美女が男の人生変えちゃう話である。ムーランルージュでは初めて望海風斗を拝むことができた。初めてfff/シルクロードを観てから2年半経っている。美貌と歌声に射抜かれた。ファントムも、真彩希帆の歌声に射抜かれた。純粋にすごい、としか言いようがない。場所は違えどフランスで歌い踊る雪組に運命を感じた。

人生の狂った夏

夏の初め、タカラヅカスカイステージでとある特番があった。企画名は「サマースクール」。教師役のタカラジェンヌと、生徒役のいわゆる路線スターのタカラジェンヌがわちゃわちゃゲームをする番組だった。その宣伝として雪組の写真が公開されると、ヅカオタたちに衝撃が走った。教師役の「久城あす先生」である。私も久城先生のビジュに狂ってしまったオタクの1人である。あとで調べたら久城あすは私が蒼穹の昴で「美人日本人記者」と認識していた人ではないか。この時初めて久城あすをはっきりと認識した。そして狂った。

夏休みの出来事

個人的な話になるが、夏休みの終わり頃、部活で問題があった。色々あって何にも手をつけられなくなり、人生に絶望していた。情緒不安定にも程がある。そんな中、私がチケットを取らなかった、和希そら主演の「双曲線上のカルテ」が幕を開けた。初日から大評判、和希そらの怪演とカーテンコールでの迷台詞たち、そしてなぜか久城あすがTwitter中を駆け抜けた。配信は部活の合宿中。円盤を買わない限り見ることはない、と諦めていた。合宿中、とうとう諸々の限界が来て同期の前で泣き、練習一コマ休むことを勧められてそうすることにした。奇しくもライブ配信の時間とドンピシャだった。流石に良心が咎めて見ずに部活に参加したけれど、Twitterで様子は見ていたら、どうしても和希そらに会いたくてたまらなくなった。カルテを見ないまま死ねない。久城あすの結婚指輪を見たい。和希そらの演技を見たい。その一心でTwitterでチケット譲渡の呼びかけをしてみた。1人の心優しきご婦人が私に声をかけてくださった。しかもS席。あの方こそ本物の神である。それからは和希そらを見ることだけを支えに生きた。
初めて手紙も書いた。私は推しに認知されたくないタイプのオタクなので手紙なんぞ書くつもりは全くなかった。しかし、母の友人のヅカオタ様(こうして考えると私が知らないだけで私の周りにはたくさんヅカオタがいたのだ)が「手紙を出しなさい、絶対に後悔しますよ」と仰せになられたので出してみた。もちろん返事なんて来ない。しかし、何かが満たされた気持ちになった。自己満足だが、幸せになった。それからは筆無精の私にしてはかなりたくさん手紙を書いた。

双曲線上のカルテ

そして9月15日、私は「双曲線上のカルテ」を観に行った。(実は授業をサボった。人間には時に学業より大切なものがある。一度くらい許されるだろう)
衝撃的だった。どの登場人物も魅力的で、人間味に溢れていたが、和希そら演じるフェルナンドは、どこか浮世離れした儚い人間だった。そんな人間に惹かれてしまう男女たちの物語だった。本当に、和希そらに似合っていた。私の中で和希そらは、強かで、美しくて、触れたら消えてしまいそうな人間なのだ。死に怯え、快楽に逃げ、終いには1人で死んでしまうあのクズのような男のことを、彼に惚れた女なら誰でも許してしまうだろう。モニカとの束の間の幸せのあと、フェルナンドが1人で湖に沈むダンスシーンはとても美しかった。苦しさに一瞬踠いて、すぐにそんな力も無くなり、ゆらり、ふわりと水に沈んでいき、とん、と湖底に触れて揺れ、沈み切って2度と浮き上がってこない様が見事なまでに表現されていた。
和希そらフェルナンドのほかに、深く印象づいているキャラクターが2人いる。野々花ひまりクラリーチェと、噂の久城あすジョルダーノだ。もともとひまりちゃんの演技がボニクラの頃から大好きなのだが、今回の彼女の演技も素晴らしかった。美しく、人を愛し愛され、少し傲慢で、優しく、そしてほんの少しだけ寂しいキャラクターが繊細に表現されているのだ。そして、久城あす。存在だけで完璧だった。黒髪にゆるくパーマがかかっていて、左薬指には本当に指輪をしていた。あんなイケメンなレントゲン技師がいたら毎日でも骨折したい。余裕のある表現力と確かな演技は、意識しなくても自然と目を惹いた。フィナーレナンバーは和希そらのダンス力を活かしたバチバチにキメるダンスだった。どんなに悲劇的な死を迎えても、宝塚にはフィナーレがあることを感謝した。ただし格好良すぎて記憶は飛んでいる。ただひたすら、観にきて良かった、勇気を出してチケットを募集して良かった、和希そらに出会えて、好きになれて良かった、とひたすら思った。和希そらは私の運命の女であり、生きる希望だった。


ボイフロ編に続く…

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