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工場との良好な関係の作り方。

前回の『色ブレ』の回で「完全一致は絶対無理」と言いましたが、「そんな事言われても色は合わせて欲しい」といったリアクションは当然理解できます。わかります。そりゃそうです。
自分たちの思いが詰まった商品を買って着てくれる人たちに対して、自分たちが心底納得したものを提供したいと思うのは当然の事です。むしろこれがなかったらブランドとしてどうかと思います。僕ならそんな産む側や作り手の思いが詰まった服が着たいです。

自分たちの商品がイメージや指示通りに上がってきて欲しいのは誰もが願っている事だと思います。『コミュニケーションの齟齬』を防ぐためのツールなどは以前お邪魔した株式会社DeepValleyさんが開発されているようなシステムが出てきているので興味ある方は是非一度問い合わせしてみてほしいです。僕個人としてはとても興味深い内容でした。製造業に移植するのは少し強めの腕力と忍耐力が求められそうですが実現できたらとても素晴らしいと思います。

とはいえまだまだアナログな我々製造業にとって、アパレルメーカーとのやりとりは非常に感覚依存というか、ロジカルに説明できない部分が多く、『コミュニケーションの齟齬』は残念ながら生じてしまっている現状です。
色ブレの件なども製造工業側のテクニカルな言い分はあれど、依頼者側からすると、「そんなことより今見えてる色が同じになるようにして欲しい」というのが本音でしょう。わかります。首がもげます。首を振りすぎて慢性ヘルニア気味です。

では商品をイメージ通りに生産していくには、どのような事を実践したらできるようになるのでしょうか?

技術を学んで理解し具体的な指示を完璧にする

結構難易度が高いですが、このnoteシリーズや普段のブログで何度も書いているように、依頼者が表現したい状態を工業技術的な言葉で落とし込む事ができるのが一番なのは言うまでもありません。指示書や発注書の表現内容に不明瞭な部分がなく、かつ、技術職が見ても理解できる言葉で書かれている事です。

指示書でこれができていると、仕上がってきた商品に対して文言とズレがある箇所について、はっきり違うと指摘する事が可能です。当たり前ですが。
ところが、言語的に曖昧な部分が残っているとどうしてもニュアンスが表現できなかったりしますよね。
例えば丸編み生地作りの『度目』という項目だけで見てみると「糸長ラウンド700cmで〜」(糸長とは生地を一周する間に編み込まれている糸の長さ)クラスの知識が必要になってきます。
このような詳細数値で現場に指示しているのは他でもない丸編み製造工場の工場長や生産担当者です。その担当者はその先の生地メーカーの営業や生地問屋の営業から数値ではなく「もっと度詰め」とか「もっとちょっと甘く」という感覚的なニュアンスだけで伝えられて、出来上がったものに対して良いとか悪いとか感覚的な表現で評価されます。これを工業が完璧に汲み取って思い通りのカタチにするのは結構至難の技です。

ある意味、「上手い」と言われている工場はこのニュアンスを汲み取る力が高いということなのかもしれません。(もちろんベース技術の程度の差はあります)

工業は実数値で指示されたらそのデータを守ります。逆にそのくらい詳細な数値で指示されると、相手はその数値を測定する能力があるということになるので、工業は下手にチョンボできなくなります。
丸編みに限らずこのクラスの詳細な指示を全アイテムでやろうとすると規模が大きくないアパレルメーカーは企画担当者や生産管理者の負担が大きくなるのでしんどいですが、中間業者に依存せずに商品完成度を上げていくにはこれしかありません。

それぞれの知識を全網羅するというのは非常に時間がかかる事ですので、感度が良く、製造に精通している中間業者を頼るというのは、コストがかかるようで案外コスパの良い選択肢の可能性があります。

良好な関係性は築けているか

そこまで詳細な知識を持てない場合、依頼する先が中間業者にしろ工場直にしろ、現状でストレスが一番無い状態なのは『 #繊維製造工業マーケティング 』の内容にも繋がるのですが、アパレルメーカーと製造工業それぞれの担当者ベースでウマが合っている時です。依頼者と受託者の意思疎通が取れていて感覚も近く、曖昧な表現をカタチにしてきた実績で双方商売がしやすくなっていく状態です。

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