繊維製造工業マーケティングのすすめ。11

工業は生産性を重視します。それは安価に大量の製造を可能にするために必要な考え方です。生産性の向上で抑えられた価格の技術を市場に供給することで工業は発展してきました。しかし昨今の日本国内の繊維製造工業においては、その性質を無視した技術開発が多いように感じます。『日本の技術』を押し出したそれらは、卓越したモノであることに間違いはないのでしょうが、安価とは言えず、結果的には無用の長物になっているケースが散見されます。
何度も言っていますが、技術開発がいけないのではありません。むしろどんどんと研鑽を積んで深めていくべきです。が、それがそのまま売り物になるかどうかはまた別の話です。この点を混同していると市場との視点のズレから埋められない溝が深まっていってしまいます。

『市場が工業に期待しているところはどこか?』を具体的に掴んでいる場合はこの溝が深まることなく、うまく商売に繋がっていきます。この市場の期待値を具体的に掴むことがマーケティングの入り口です。
この作業をせずに、工場内で機械や資材と向かい合っているばかりでは時間はいくらあっても足りません。まして、自分の主観だけで練り上げられたモノから市場ができていくことは、全く無いとは言いませんが、ことファッションにおいては、片田舎の工場内から見た『イケてる』は、おそらく世間のソレとはズレていることが多いです。
「こんなに良い物がなんで売れないんだ!」の原因は、大凡コレです。

まずはお客さんを知ろう

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とはよくいったもので、工場内で自社リソースを把握して自己研鑽に努めつつ、お客さんの要求をしっかり把握するには、とにかく売り場を見ることに尽きます。これは何度も繰り返しになっていますが、ほとんどの工業の方がまだまだ蔑ろにしているところです。

工場が仕事を受ける際、問屋や中間業者が挟まっていてエンドユーザーが見えないことは良くありますが、ファーストステップとしては、問い合わせの段階で問屋に聞きましょう。「これはどういうブランドさんの仕事ですか?」この一言で一歩は踏み出せます。中間業者はこの部分を隠したがりますが、「一応ファッションやってるっていうことを知らせて現場のモチベーションを上げるため」などを理由に聞き出して情報を掴めたら、そのブランドの売り場や商品を見に工場を出て市場調査してください。

僕はおっさんですが、レディースの下着売り場でも躊躇せず行きます。恥など一瞬です。そんなくだらないプライドよりお客さんの『欲しい』を知ることの方が圧倒的に大切です。

そこで得られる情報は非常に多いです。コンセプト、嗜好、価格帯、クオリティ、主な原産国、お客さんの属性・・・これらは工場内では得られない情報です。これらを把握した上で、顧客さんが自分たちに求めていることは何か?を再考すると、技術や原料スペックに酔った高価格提案なのか、それとも安価な生産を期待されているのかは、すぐに気付くことができるはずです。

技術はあくまでパーツ

僕たち製造工業は、時々大きな勘違いをします。僕は元々テキスタイルメーカーですので、テキスタイルの意匠性を完成品として世間に対して発表して評価される場面があるから、それこそが市場に求められていることだという意識のズレが起こりやすい事実を目の当たりにしてきました。もちろんテキスタイルに意匠性を求めて突き詰めることは全く否定しません。何度も言います。技術を高めることは良いことです。でも、それが市場に求められていることとイコールでないことを知らなければいけません。

工場の中から世の中を見ていると、自分たちの従事ポイントが全ての主役になってしまう錯覚を起こしますが、その視点は早々に捨て去るべきです。

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ヤマモトハルクニ

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