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繊維製造工業マーケティングのすすめ。16

今や、繊維製造工業は総合力の時代です。
糸だけで良い、染めるだけで良い、織る/編むだけで良い、生地だけで良い、縫うだけで良い、単純な受託でそれぞれのポジションだけ全うしたら良い時代はもう終わりました。

みなさんが大好きな大手アパレルメーカーは、ODMの提案をチョイスすることが企画になってしまったデザイナーを多く要したセレクターになり変ってしまいました。いくら『企画を見直そう』と大きく打ち出しても、その実、能力的に培われていない人たちに、原料や加工技術を組み合わせて何かを生み出すチカラなどなく、当初の意気込みは売り上げの減少と一緒にむなしく忘れ去られていくだけです。

でも嘆いても仕方がありません。そういう事態を嘆いたところで何一つ改善されることはありません。現実を受け入れて、逆手に取って、生き残っていく術を編みだすまでです。仕事はちゃんとあるところにあります。そこへ自ら向かっていかなければ、控え目に言っても減少傾向である国内繊維産業においては、いつまでもその位置から動くことはできず、時代と共に消えていく運命なのは火を見るより明らかです。

では仕事が集まっている会社は、どのような動きをしているのでしょうか?要素のひとつに、『総合力を高める』があると僕は考えています。

先の先が動きやすい状態を考える

繊維製造工業にとっての総合力とは、一枚の服を企画する人たち、またはその人たちが商品を提供している市場、及びその市場にいる一般買い物客がその一枚の服を買う購買動機まで考えて自社の提供領域で最適なモノを提案していくチカラだと考えます。が、いきなりこの領域を体現できる工業はそうそういないので、まずは今自分たちが関わっている直接顧客(問屋や中間業者)が提案先(アパレルメーカーなど)に対して彼らが動きやすいように工夫してみることを考えてみると良いです。

例えば、特殊な染料を使用した加工を提案する際に、アパレルメーカーが気にするであろう堅牢度など物性上の問題点の明確化、使用することで得られる効果(具体的な使用場面が伝えられると尚良し)、価格的ハードルが相手に取ってアジャストするかどうか、など、加工技術ひとつ取っても伝えることで相手が動きやすくなる要素はたくさんあります。

更に最高な状態は、使用実績をサンプルとして用意しておくことができたら、「見たことないものを口で説明されてもわからない」と言いがちな最近のアパレルメーカーに対してとても有効です。
たくさん仕事が集まってくる中間業者たちは、自腹でサンプルを作るなど、この辺の準備をしっかりしている場合が多いです。逆を言えば、こういう投資的な動きが出来ていない中間業者には良いお客さんが付いていないことが多いです。

選択肢を用意しておく

先の先が動きやすい状況を理解できるようになってくると、事前準備として一つの提案案件に対して「選択肢を用意しておこう」という気が効くようになってきます。

「価格が高いと言われたらコレ」、「肉厚をもっと薄く(厚く)したいと言われたらコレ」というように、相手のリアクションパターンを想像して、その予測に対して再提案したりする引き出しをセットして最初の提案に含ませることができます。
これは必ずしも表に出てこなくてもよくて、最初に「コレだ!」と思って提案したものがズバリ気に入ってもらえたら、選択肢として用意しておいたモノは出す必要はありません。
しかし最初からドンズバで相手の欲しいものをあてがえるほど、残念ながら工業のファッション性は豊かではないので、慣れてくるまでは思いつく限りの選択肢を用意しておいた方が不安は少ないです。そして、ドンズバ来なかった時に、相手の感覚と自分の感覚のズレをしっかりと自覚して、次回から順次精度を上げていけばよいのです。

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