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繊維製造工業マーケティングのすすめ。10

早いものでこのテーマも10回目を迎え、季節は春、新しく若い世代が入ってくる時期になりました。同時に引退される方もいらっしゃるかと思います。
時間というのは待ってくれません。時代は移りゆくものです。繊維製造業もまた、時代の流れによって無視できない現実に向かい合っていかなければなりません。

製造工業がアテにしている中間業者の中には、担当ベースでパワープレーが効いていた人も、雇われであれば時期がきたら引退しますし、彼らの運動量が落ちれば取引は少なくなります。
インターネット環境がこれだけ整備されている中で、そのツールが使えないままというのも、若い世代が出てくると避けられない事実として仕事量を制限される可能性があります。

これらは全て、他力本願的な工業体質が直面しうる近い将来の現実です。
属人的かつ受動的な体質で先細る商いを持ち直すことができるでしょうか?それを凌駕するほど世間が欲しがる技術があるのでしょうか?
閉鎖的な環境下で浦島太郎にならないためにも取り入れることができる新しい世界に触れてみることは非常に重要なことです。

無知の知

特に前後ろに濃密なパイプで担保された受託があるうちはこの危機感が圧倒的に足りていません。水平分業されすぎた弊害も重なって視野も狭くなりがちです。
知らないということが大きな重荷になることもあります。自分の視点だけで「目新しいサービスでお客さんにメリットがある!」と思ったことが、実は全く目新しくないということはよくある話です。思い込み発車で事故るのを見るのは、同業者として辛いです。
だいぶ前に書いたブログですが、産地をまたがって取り組みをブランドとして打ち出そうとした企画が大幅にスベってる内容を書いたので前半部分だけで良いので参考にしてみてください。

例えばものすごく狭義な工程を生業としている技術職の方が、一新発起思い立って「よし、この稼業を再興するために、この地域周辺に関連設備を新設して地域で一気通貫できるようにしよう!」と、自社と関連がある他の技術部分を誘致して地域内でコミュニティを立ち上げ世間にそのメリットを訴求するとします。その際に『近隣で一気通貫することで密な連携が取れる』とかいう定量的に判断しにくいキャッチコピーしか世間に投げられず、他産地では既に同ジャンルで存在し、使用者側にとってメリットが無く、結局上手くいかないケースなどがあります。

実際に、丸編み某産地は関連企業が同一区域内に一貫して存在しています。編み、染め、縫製、全てこの産地内で完成するのに、その一気通貫を産地として世間にアピールしてこない理由としては、中間に存在する業者の働きのお陰でそれぞれの分業されている工場に仕事が満遍なく行き渡っていたからに他なりません。わざわざ自分たちで重い腰を上げる必要がなかったからです。
そしてお客さんたちも、僕ら含む中間業者の働きによってわざわざ分業をまとめる必要もなくなって久しいです。つまり、地域でまとめることで得られるお客さん側のメリットは現状ほとんどないということがわかります。

何か思い立って行動することはとても良いことですが、地域内で判断するのは非常に危険です。世間を広く見回した時に、その動きがお客さんになる可能性のある人たちにとって意味のあることかどうかを冷静に見極める必要があります。

中間業者もどうなるかわからない

今しがた『例え』を「目新しいサービスではない」と言い放った側から矛盾すると思われるかもしれませんが、今アパレルメーカーへ『用聞き』営業をして、工業キャパを産地またぎでまとめている業者さんもいつまでも元気というわけではありません。彼らとて冒頭で言った通り、雇われなら時がきたら引退します。また、『用聞き』営業は、その性質上、かなり属人的なスタイルなので、キャパを埋めてくれていた人が仕事を辞めてしまえば、そこに依存していた場合は確実にダメージを喰らいます。

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