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繊維製造工業マーケティングのすすめ。17

ゴールデンウイーク中も稼働している工業の皆様お疲れ様です。いつもありがとうございます。
連休前にぶん投げてきたメーカーに対して多少怒りをおぼえつつ、「いつものことだ」と割り切って稼働してくださっているおかげで、タイトなスケジュールが守られて連休明けからの商品が滞りなく納品されていくことを、当たり前だと思わずに感謝しながら今回も工業マーケティングいきます。敬意を表しつつ、敢えての憎まれ口をたたきます。

モノヅクリガーの僕は御多分に洩れず、前職時代に『原料や加工法など物さえ良ければ高くても売れる』と過信していた時期がありました。
もちろんそういった部分に共鳴してくださり、幸運にも幾ばくか商売に繋がった商品もありました。テキスタイルで販売している内は、手元を離れたら「売れた!」と思ったものですが、一方で客先の倉庫でダブついていた事実を知ると、本来の意味で「売れた」とは言えないことに気づきます。

図らずも生地としてはお客さんに売れたので、社内的にも『売れた物』として他の顧客へ対して別の営業からどんどんと提案されていきます。情報商戦的な時期でもあった当時の(今も?)繊維製造工業界は、「◯◯にこの生地がとても気に入ってもらってたくさん買ってもらえた」という情報で、それなりに売ってしまった時期もありました。
確かに原料のスペックも高く、紡績もニッティングも、思いつく限りのテクニック盛り盛りで、生機は高くなり、加工もこだわれば当然仕上がった生地は高価な物になりました。『良い物』と言えばそうなのですが、結果的に生地屋の手元を離れたのち、店頭小売で倉庫を圧迫した事実を深く考えなければいけません。

『良い物』の価値観

人によるし、ブランドにもよるのですが、いくら原料が高スペックだからと言っても、最終的なユーザーにとって理解できないレベルだったら『良い物』と判断してもらえることはありません。

何度も何度も伝えていますが、技術的に手を抜いて良いという意味ではありません。
相手をみて調整できるような、適度なバランス感覚が必要です。
誰にとっても良いものというのは、あれば理想ですが、なかなか実現するものではありません。

今お持ちのゴルフクラブは色々試した結果、自分に合うと思ったものを選びましたよね?全員が同じものを使ったほうが良いとは思いませんよね?
同じ様に、テキスタイルも、さまざまな加工、縫製テクニックも、適材適所があります。何でもかんでも全部盛りが『良い物』の称号を得られるわけではありません。
特にテキスタイル業界は、一つの品番に多要素を盛り込みがちです。
良い原料、高性能な紡績方法、高密度な編み方、特殊な仕上げ方法などを駆使して1mあたり数千円では、「分かる人に分かれ」という分には良いですが、誰にでもハマるものではないと言う事を理解しておきましょう。

盛り込みすぎて逆に使用感が・・・

素材や、加工技術などのテクニック開発は、盛り込みが行き過ぎると、スペックを拘るあまり、使用感が置いてきぼりになることもしばしば散見されます。先程の価値観と同じで、テクニックに酔うあまり、作り手のエゴが強くなりすぎて結果的に『使えないもの』になることは、よくあります。

コンテストなどの意匠性を競うものであれば何も問題ありません。が、実売を目的とするのであれば、やはり相手を見ながらバランスをとったテクニックを適度に添わせていく必要があります。

有名な話ですが

顧客はドリルがほしいのではなく、ドリルで開けられる穴が欲しい

のです。
物そのものに、価値を見出してくれる人は一定数いますが、必ずしもみなさんが望む市場規模ではありません。むしろ、みなさんが毛嫌いするような、対応するのも面倒だと思ってしまうような、凝りに凝った上で極小ロットの可能性が非常に高いです。

その辺ご承知の上であれば、このnoteにもたどり着いていないと思いますが・・・

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