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繊維製造工業マーケティングのすすめ。20

ある物が他社で売れてると、それがどこでも売れる物だと思うことって多々ありますよね。特に僕らの商売は流行という曖昧な定義にて常に売れるものが移ろうものですから、『その時その物が売れているという事実』を、商機と捉えて即時追いかけたくなる気持ちは非常によくわかります。わかりますよ。

一時期はそんなテクニックである程度数字を積み上げることもできました。
実際僕自身も、昔は他社の売れ行き情報を提案に反映させて受注に結びつけていた時期もありました。後追いでも売れる時期というのはありますので、そのタイミングが早ければ早いほど結果に繋がりやすかったです。それ自体を否定する気は全くありません。商売なので売れた方が良いですから。ただその結果、売り場商品の同質化などはまた別の問題なので今回は取り上げませんが、副産物として、そういう結果も生まれるということは、最終的にどこかで売れ残りが出るということにも繋がるので、売れ残ってしまったメーカーからすると、その『売れてるモノ』を提案してきたサプライヤーに対して少なからず良くない印象を持つこともあるかもしれません。(最終的に商品化を選んだのはメーカー側なので、売れ残りの責任転嫁は筋違いですが、感情的にあるかもしれません)

さておき、製造業は『どこで何が売れてるか?』という情報の『どこで』の部分があまり重要視されず、『何が売れてるか?』だけが一人歩きしがちです。
『〇〇の売り場に入っている〇〇のブランドの〇〇に使われている〇〇の生地』だった時、例えば生地なら、生産量的な情報は産地内で行き渡ったりするものですから、『〇〇の生地がよう売れとるらしい』という情報だけに注目が集まります。これ、『木を見て森を見ず』状態ですよね。

売れてるからと言って誰にとっても良いものではない

まず、製造業諸兄が勘違いしやすいポイントとして、「売れているものは誰にとっても良いものだ」と思い込むフシがあるります。もちろん、数量的に伸びているということは、『その時の誰か(しかも大勢の)』にとっては、『良いもの』として受け入れられた結果であるのは間違いないです。が、『その時の誰か』にとってなので、『誰にでも』という訳ではないのを理解する必要があります。

商品には属性があり、その属性の商品の数量が伸びやすい市場があって、そこに適時提供された時に、爆発力を発揮するのであって、提供する相手やタイミングを見誤っては、ほとんど力を発揮しません。

脱線しますが、僕はプレミアムビールが好きです。そして全国的に好評で売れているとコマーシャルされていますが、ある特定の地域では全く嗜好に合わないのか販売数が奮わず、仕入れた酒屋さんは残った在庫を消化するためにお中元やお歳暮用に相当値引きして各所へ贈答品用途で営業をかけたそうです。

繊維産業も同じで、特定の原料や仕様が好評でも、その好評の理由を商品のみに求めず、提供されている環境に求めた方が、その商品が良いものとされている理由にたどり着く近道です。

物自体がどうのこうのと分析したがる

先ほどの続きにもなりますが、売れている物を良いものと捉えてしまった後、良いモノの理由を商品に求めるがあまり、商品のスペックから分析する癖があります。これは先ほどの流れからいくと、さほど意味をなさない分析だったりします。もちろん無意味ではない部分もありますが、その商品の要素が売れていた決定的な根拠であるとは限りません。

『〇〇で〇〇という生地が売れてる』という情報は製造産地ではその『〇〇という生地が売れている』情報で拡散します。すると、そのモノに対して「どこがどう良いのか?」という分析が始まります。

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