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文学ごっこがしたい

 以前、マンガのネームを小説で書くという文章をここに書いたが、あいかわらず小説の勉強はしている。
 とは言っても、ずっとマンガのシナリオの勉強しかしてこなかったし、読んできた小説の数もたかがしれている。小説家になろうで頑張っている人たちと比べて腰が据わってないこと、この上ない。
 ではなぜ今さら小説を書こうというのかといえば、それはもちろん芥川賞が欲しくて……というのではない。自分の技術的な課題を見つけたからだ。
 僕が今まで書いてきたストーリーは、マンガ、ラジオドラマ、ゲームなどで、メインのマンガだけでも30冊を超える。どれも心をこめて書いてきたつもりだし、面白かったと言ってくれる人もたくさんいる。
 その一方で、いいアイディアのはずなのに日の目を見ないままボツになってしまった企画も山のようにある。なぜボツになったのかと言えば、ひとえに「僕がいい物語に書き上げられなかったから」なのである。

僕には運と才能がある

 正直、運の良さでやってきたことは否定できない事実で、相棒の村正みかどがマンガの名人なので、多少のことは絵の巧さでなんとかなった。また僕にはある種の才能があって、面白そうなストーリーをヤマカンで書いても、何本かに一本は担当編集者氏のチェックをくぐり抜け、掲載してもらうことができた。このヤマカンについては生まれ持ったものだと思うので、あまり他人に自慢するような性質のものではない。
 たとえるなら、豊かな自然の恵みがある島があるとしよう。島には高い木がはえていて、栄養満点の果実がいつでもぶら下がっている。
 そこにハマムラという動物が住んでいる。足は短くて不格好だが、胴がすごく長くて、木の上になっている果実に手が届く。あらかたは鳥が食べてしまっているが、残り物でも十分に食べていくことができた。そのくらい島の恵みは豊かだった。他の地上の生き物は食べ物が足りなくて痩せていたが、ハマムラはぶくぶく太っていた。
 ところが奇跡が起きた。ハマムラの足が長くなり、胴も細く短くしゅっとして、ついでに小顔になって、頭頂部に毛が戻り、肝臓の数値も良くなった。イケメンになったハマムラはすぐに困った。例の高い木の果実に手が届かなくなったからだ。
 腹がへったハマムラは、元に戻ろうと頑張って、足を短くして胴も太くして、顔も大きくして、髪の毛もむしって、酒も飲んだけど、肝心の胴が長くならなかったので、ついに果実には手が届かなかった。胴を長くする方法をハマムラは考えたこともなかったからだ。こうしてハマムラは絶滅した。

自分で手に入れたものはなくならない

 例え話を書いていたら勢い余って絶滅してしまったけど、才能があるっていうのは、こういう種類のものだと僕は思っている。生まれつきできることは、できなくなったときに、取り戻しかたもわからない。そういうことって世の中には結構あるよね。
 だから、ちょっとくらい運がよくて才能があったとしても勉強ってのは怠ってはいけない……
とかいう教訓的なものを書こうとしたんじゃないんだな。

身の回りにすごいやつばっかりで困る

 本題に入ろう。つまりここのところマンガのためにストーリーや表現に勉強や練習をしているのだが、小説、それも純文学の手法をマンガに適用すると、今まで僕がヤマカンでやってきたモロモロのことが、うまくいくかもと思いはじめたのだ。
 例えば、エッチなお姉さんを書くときとか、ヤマカンで書いていると新鮮な驚きがなくなってくるときがあるのだ。具体的には言わないけど、ストーリーの表現だけで色気を出すには、「色気ってなんだろう?」「おっぱいが大きいだけじゃ萌えないよ」とか深く考える必要がある。
 だけどマンガ原作の仕事は、そういうことをじっくり考える時間が用意されてないことがある。なぜなら絵を描く人が描いたものが、最終的に読者の目に触れるものだからだ。
 そして僕は幸いなことに、絵のうまい漫画家さんとばかり組んできたので、こういったことは漫画家さん任せになってしまうこともままあったわけだ。これではお色気表現もうまくなるわけがない。

書けばいいのでは?

 原作者がストーリーの中にエッチな表現や仕掛けを作っておいたほうが面白くなることは多いはずだ。カンが冴えてるときは僕もいいアイディアを原作に書き込んできた。
 そこである時、考える。
「もしかして、時間をかけて表現を煮詰めたら、もっとエッチになるのでは?」
 別にエッチな表現でなくとも、エモエモなやつとか泣き系とか、考えてみる表現はたくさんある。これは書いてみるしかない。できたら小説の形でだ。

身の回りにすごいやつばっかりで困る2

 僕はマンガとか雑誌の仕事が長いので、友人といえば漫画家かライター、ゲームクリエイターとか、そういうのが多い。この中でストーリーを作る工夫とか話せるのは漫画家になるだろうが、今回、彼らは当てにならない。
 それはもちろん、あいつらは絵がうまいので、エッチな表現をしようと思ったらエッチな絵を描くのである。それはいいことなんだけど、今回の目的にはそぐわないのである。
 それなら小説を書く知り合いはいないのか、と問われれば、小説のコミカライズとかの仕事をしていたこともあるので、知り合いにはいる。しかし彼らはプロである。自分のやり方で本を出版して生活している人たちに、僕の練習小説の話なんかできるはずもない。ハッキリ言えば恥ずかしい。
 練習小説なんて短いし、商品になるようなものではないから、内輪だけでこっそり回し読みして、あれこれブンガクっぽいことを気取りたいのである。

話がうまくなるには

 星新一氏が言われていたことだと思うけど、ストーリーがうまくなるには、とにかくいろんな人に何度も話すことだという。話すたびに、順序やトーンを工夫して、伝わるように、ウケるように洗練されていくのだ。
 僕もこの方法をずっと意識してきたし、ブンガクごっこでも,同じ話を何回も書いてみるだろう。悲しむべきは、この遊びに付き合わされる犠牲者が、まだ足りないことである。

……っいうわけで、マンガしか読まないような読書遍歴で、浅くてちょろいブンガクごっこに付き合って、短い練習小説を書こうという仲間を募集します!
Discordにサーバー作ったので、ブンガクごっこしましょ?
著絽文學(ちょろぶんがく)


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