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包丁研ぎのおじさんの謎。

この町に引っ越してきて、5か月目に入った。マンションから出て、数歩てくてく進むと、「包丁研ぎ」の看板を掲げた古びた一軒家がある。
その家の前にいつも座っているおじさん。朝会社へ行くときも、夕方、会社から帰ったときも必ず座っている。

いつ見ても座っているだけのときが多いけれど、ちゃんと包丁を研いでいるときもある。そんなときは、「今日は仕事があるんだ。よかった。」なんて思うようになってしまった。

たまに夜中に帰ったときだって、家の前をうろうろしているおじさんを見かけた。この町に越してきての一番の謎なのだ。

おじさん包丁研ぎで食べていけんの?

一度も話したことはないけれど、おじさんを見る度に、ホームに帰ってきたというほっこりした気持ちになれる。包丁研ぎのおじさんは、私の心の拠り所にすっかりなってしまった。

もし、この町とお別れするときが来たら、包丁を研いでもらおうと密かに決意している今日この頃。

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