見出し画像

ネタバレ 『マリオのスーパーピクロス』(SFC, 1995)のゲーム進行・エンタメ構造

WiiUとニンテンドー3DSでつづいていた「バーチャルコンソール」が、
いよいよ終了までのカウントダウンに入りまして。

来年2023年の3月下旬まで!

これは、上記2つのハードにむけて、昔のゲームソフトをダウンロード販売しているサービス。

もとはWiiのころ、2006年12月2日から始まったサービスで
当時最新機種にして飛ぶ鳥を落とす勢いだったWiiの
「でも、さいきんのゲームはわからないし・・・」
と、まだ尻込みしていた潜在層を、懐ゲーの魅力で引っ張りこんだ・・・と勝手に思っている。

なにしろ任天堂のファミコン、スーパーファミコン、64のみならず、PCエンジン、メガドライブ、MSXなどまで引き込んでのラインナップ、それはそれはすごいことになっておりました。

TVゲームって、ハード(本体)を持っとかないとできないから、過去の名作を手に取りやすくしていくのは、商売ってだけじゃなく、必要よね。

レガシー!


現行のニンテンドースイッチでは、サブスクの「Nintendo Switch Online」で遊び放題のタイトルが順次追加されていってますが、やはりWii時代のようなマニアックさは薄れているかと。

そんななか、『マリオのスーパーピクロス』をやりました。
これが、やっぱりニンテンドーってすごいんだなと・・・
そのエンタメ構造の作り方というか、隅々までのディレクションに、脱帽でした。


『マリオのスーパーピクロス』


ゲームの基本


タテ、ヨコに書かれた数字をヒントとして、方眼紙のマス目を埋めて絵を完成させる、論理パズルゲーム。
任天堂は「ピクチャー クロスワード」略してピクロス、と呼んでいるのだけど、一般のパズル雑誌などでは「お絵かきロジック」「イラストロジック」「ののぐらむ」等の名称が使われるそう。
発明の権利で少し揉めた、そう。

遊んでるときの感覚は、もう数独に近いです。論理だから。理詰めでひたすら「塗れるマス」「塗れないマス」を振り分けていく。

(Amazonより)

たとえば一番右の上、「15」と書いてあります。
これは、その数字の下の列を15マス連続で塗りつぶす、ということ。
その左の「1 1」は、1マス塗り、そこから(1マス以上)離れたどこか1マス塗る、ということ。

「1 1」を決めるのは難しいですが、「15」は簡単。この方眼紙はタテヨコ15マスずつなので、つまりその列は全部塗っていいわけです。
で、右端のタテ列が埋まったら、次はヨコ列。
ヨコの一番上は「5」と書いてあります。で、その「5」マス塗る列の右端が、さっきの15で塗られていますから、あとは左に伸ばして、合計5マス塗ったところでおわり。
・・・・・・という、ように、進めていくんですが。


ゲームの構成

↑ 以上説明したように、言葉ではよくわかりません!
なので、ゲーム中にはちゃんと「はじめに」という、説明&ちょっとやってみる動画パートが用意されています。初心者にやさしい。

まずは「LEVEL 1」として12問が用意されていて、そこで「5×5」マスから「8×8」マスあたりまでの、小さめのフィールドで慣れていく。
しかも紙の上でやるのと違い、まちがったマスを塗ってしまうと、ウワァ~オ、みたいな(?)音が鳴って、ここは違いますよとマスにバツが付く。勘違いしたまま進まないようになっている。
(そのぶん、持ち時間は数分マイナスされます)

そしてはじめの12問をクリアすると・・・

「ワリオのピクロス」開放!!

「マリオのピクロス」に対し、ライバルのワリオが導く「ワリオのピクロス」もできるようになります。
こちらはなんと、間違ったマスを塗っても教えてくれない!!
さすがワルいなあ~。
って、紙のお絵かきロジックではふつうのことですけどね・・・。

しかも開放時のメッセージが
「ざんねんながら ワリオのピクロスができるようになってしまいました」
だ。
世界観がしっかりしています。


段階的な開放 ~ 適切な「締め」どころをつくる


そうして「マリオのピクロス」LEVEL 1をクリアすると、「マリオ」「ワリオ」ともにLEVEL 4まで遊べるようになります。ここからは自分の好きなように、簡単なところからでも、難しいものでも、どこから攻めてもよし、というわけです。

さらに「マリオ」全問をクリアすると、マリオのLEVEL 7まで、
「ワリオ」も全問クリアで同様に、解放されていきます。
マリオのほうをやりたい人はそっちだけやっていても大丈夫だし、逆もまたしかり。

つぎに、LEVEL 7までクリアしたら、いよいよLEVEL 10まで開放となります。

この、一気にLEVEL 10までできるようにしていないっていう「締め」「チェックポイント」の作り方が、ちゃんとしてるなあと思う。
ひたすら問題を解きつづけるばかりでは疲れてしまうから、中途目標というか、絵替わりというか、新展開というか(何か起きるんじゃないか?)、そういう構造と構成を入れておいて、

ただ単にパズル解きを機械で計算して遊べるやーつ、という図式じゃなくしてる。


世界観設定・ゲームにする工夫

その工夫は世界観の作り方にもあって、
実はさっきからずっとミスリードで「方眼紙」とか「塗る」って書いてきたのだけど、『マリオのピクロス』ではそれが「石板」「掘る」に置き換えられているのだ。
マリオが、古代文明の遺跡にわけいって、石板からその謎を解明しようとする・・・みたいな設えになっている。
マリオの格好も、探検隊である。

(任天堂サイトより。前作のゲームボーイ用『マリオのピクロス』)

これも、ただパズルをやるということではない、体験への後押し、設定を組み込む、ということ。
(はじまってしまえばぜんぜん現代のモノや任天堂キャラの絵が完成したりするので、あくまでバックグラウンドとしてだけど)

先述した「お手つきは持ち時間マイナス」というのも、制限時間をもうけること、間違いにペナルティをつけること、というゲーム性。
逆に、ワリオのピクロスはペナルティがないため制限時間もなく、開始からの経過時間が記録されるだけになります。

それと大事なご褒美が、アニメーション。
問題を解いて出来上がった絵には、ちょっとしたアニメーションをするものもあります。これが楽しい。同じピクセル内で、GIFアニメぐらいのものですが、ループだったりちゃんとオチがつくものだったり、あれこれ。


まだあるまだあるクライマックス

「マリオ」「ワリオ」ともLEVEL SPECIALまでクリアすればエンディングとなるのですが、
そのあとなんと、ワリオがあらわれて意味深なメッセージを残していきます。

すると!
「ワリオのピクロス」に、こんだ「LEVEL ULTRA」なるものが追加されているでは、ありませんか!
いやーこれはしんどかった・・・。
連続マスがかなり少なくて、確定していくのがたいへんです。

任天堂って、入口はやさしく作って、でも全部クリアしようとするとちゃんと上手くならなきゃいけなくて大変、っていう、しっかりしたエンタメやってくれますよね。
(『スーパーマリオブラザーズ』だって、あれクリアするのすごい難しいですよ)

そしてそして、その8問をクリアすると・・・そう、8問なんです、ほかのレベルは12問(4問×3列)だったのになぜ・・・?・・・と思っていると、
さいごの3列目に、ゲームのタイトル画面をサムネにしたような窓が出現。
それを選択すると、タイトル画面に飛ぶのです!

う~わ~!
このタイトル画面、伏線だったのか!!

というわけで、左右の6×2列=12問を解いていくことに。
しかもしかも、この画面内に隠し問題もあり、真ん中のマリオの顔も、クリックすると問題の出る場所があります。

ここを全問解くと、次はワリオのタイトル画面に・・・(そんな画面は元はないのだが)

正直このへんまでくると食傷してますが、そこはわかっているようで、このレベル「EXTRA」は、難易度は低い。難易度のピークは「ULTRA」で、エクストラは最後のオマケ的な扱いなんでしょう。

ワリオの顔に隠されたラスト3問も解いたら、真のフィナーレ!
セーブデータが「300 COMPLETE」に変わり、全クリ(いつの言葉なんだ)です!

300問もやったのか・・・何時間使ったんだろう・・・・・・


流れまとめ

しかしすさまじかった「まだ来る、まだ来る」のいつまでもクライマックス感。
『マリオのスーパ―ピクロス』の構成、流れをおさらいしましょう。

・はじめに を見る
・マリオ レベル1クリア   →ワリオのピクロス レベル1~4開放
・マリオ レベル4までクリア →レベル7まで開放
・ワリオ レベル4までクリア →レベル7まで開放
・マリオ レベル7までクリア →レベル10まで開放
・ワリオ レベル7までクリア →レベル10まで開放
・マリオ レベル10までクリア →スペシャル開放
・ワリオ レベル10までクリア →スペシャル開放
・マリオ スペシャルをクリア 
・ワリオ スペシャルをクリア 
エンディング!!      →ワリオ ウルトラ開放
・ワリオ ウルトラをクリア →マリオのエクストラ開放
・マリオ エクストラをクリア →ワリオのエクストラ開放
・ワリオ エクストラをクリア
300 COMPLETE!!!


いや~、細かに足止めを作って、ゲームを構成してますね。

(レベル10+スペシャル)×各12問ずつ×マリオとワリオ
+ワリオウルトラ8問+マリオエクストラ13問+ワリオエクストラ15問
=11×12×2+8+13+15=264+36
=300問
でした。



ちなみに今作の開発元は(株)エイプと(株)ジュピター。
ジュピターは今も『ピクロスS』(ニンテンドースイッチでのピクロスシリーズ)を作っているが、
今作でディレクターとしてクレジットされているのは、いまや(株)ポケモンの社長である石原恒和氏。エイプ時代の仕事ってことですね。


参考


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?