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自然思想から生まれた算命学

このテキストの内容

【算命学の歴史】
 算命学の誕生
 鬼谷子から文化大革命まで
 現代の算命学

【算命学でわかること】
 自然の「あり方」と人間の「生き方」

【算命学の成り立ち】
 思想学
 運勢学
 算命学の思想

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【算命学の歴史】

・算命学の誕生

算命学は今から四千年ほど前、古代中国の「夏(か)」という王朝時代に、その研究が始まったといわれています。

当時、思想学や自然科学が盛んで、その最大のテーマは・・・

「なぜ人は生まれて死ぬのか?」

・・・という謎を解き明かすことでした。

彼らの考え方によると、太陽や月が東から昇って西に沈むように、また、草花が春に芽吹き、夏に花を咲かせ、秋に種をつけて冬までには枯れてゆくように、人間の一生も自然のサイクルと同じ法則に従っているのではないか?というものでした。

人間を知るために自然を研究する「自然思想」は、単なる哲学から、自然を観察し、仮説を立て、人間を観察することでそれらを検証していく自然科学へと発展していったのです。

やがて「陰陽論」、「五行説」、「十干十二支」、「六十花甲子」などの概念が生まれ、紀元前五百年ころには、その研究分野は人間の運勢にまでおよび、仏教、儒教、道教などにも大きな影響を与えていきました。

その頃、鬼谷子(きこくし)と呼ばれる人物が、それまでの膨大な研究をまとめて運勢学の基礎を築き「算命術」を完成させたと言われています。

算命術は命を計算する術と書きますが、この命とは人間の寿命のことだけを指すのではありません。人が所有する財産や仕事、名誉、知恵、結婚などにも寿命があると考えたのです。算命学は、これらを自然の法則に当てはめて計算することができる学問として発展していきました。


・鬼谷子から文化大革命まで

紀元前91年に書かれた中国の教科書「史記」によると、鬼谷子には蘇秦(そしん:前317年没)と張儀(ちょうぎ:前309年没)という二人の優秀な弟子がいたそうです。鬼谷子を含め、蘇秦と張儀は戦国時代を代表する縦横家(じゅうおうか)でした。縦横家とは、国と国との話をまとめる外交官であり、思想家であり、軍師、つまり戦術家を兼ねる人のことです。

この二人は鬼谷子のもとで算命学を学んだと言われ、張儀は秦国の宰相(さいしょう:今の総理大臣のような地位)となり、蘇秦は秦国に対抗する他の六国をまとめた同盟国の宰相となって、共に中国全土のパワーバランスを維持していたと伝えられています。

蘇秦と張儀の死後、紀元前221年に初めて中国全土を平定した秦国の始皇帝が登場して以降、算命学は歴史から姿を消します。自ら算命学を駆使して中国統一を果たした始皇帝は、同様に算命学を使って王朝を滅ぼす者が現れることを恐れ、自国の宮廷内にだけ算命術師をおき、その知識が外部に一切出ないように厳しく管理したのです。

こうして門外不出の戦略の学問となった算命学は、秦から漢へ、そして隋、唐へと王朝が変わっても絶えることなく保護され、その後およそ二千年に渡り一般の人々に知られることはなかったのです。その間、正統継承者たちは思索を重ね、多くの人々の人生を観察し、理論を検証しては新たな技法を生み出し、算命学を発展させていきました。

門外不出とは言え、長い年月の中で算命学の知識の一部が外部に漏れ、その情報をもとに人々の間でさまざまな占術が生まれました。「気学」、「四柱推命」、「九星術」、「奇門遁甲(きもんとんこう)」などがその代表です。これらは遣隋使や遣唐使を介して日本にも伝えられ、現在でも中国の最も古い占術として知られています。

ところで、本家本元の算命学はどうなったのでしょうか?

第二次世界大戦が終わり、中国で共産党による文化大革命が起こると、算命学のような思想や学問はすべて禁止され、もはや中国国内でその知識を維持、発展させることができなくなってしまいました。当時三人いた算命学の正統継承者の一人だった呉仁和は、数千年にわたって研究されてきた算命学の資料のすべてを日本に持ち込み、それを日本人の弟子に伝えた後、中国に帰国して亡くなられたそうです。

こうして1970年代になってようやく、算命学は中国王朝の宮廷を出て、日本に伝えられたのです。


・現代の算命学

算命学は、古代中国の戦国時代を通して軍略のための学問として発展してきました。味方の有利を活かし、運気を高め、敵の運気が落ちたときに弱点を突くための学問です。あるいは、しかるべき宿命を持った女性を相手国に嫁がせることで、敵の王族家系の運勢を崩して国を弱体化させ、戦わずして勝利を得るための学問です。

しかし元々は「なぜ人は生まれて死ぬのか?」という疑問に答えるため、人間の一生を自然の法則の中に見出そうとした自然思想から生まれた、人がより良く生きるための学問でした。現代の日本において算命学は、ふたたび本来の目的のために使われるようになったのではないかと思います。

ただし算命学が危険な道具であることも事実です。人間の運勢に大きな影響を与える部分を極めて正確に探し出し、効果的に運命を操作する術を教えてくれるのですから、これを適切に使えば人を幸せにすることもできますが、他方、悪意を持って使えば、いくつかの簡単なアドバイスをするだけで、相手の人生を捻じ曲げることもできるのです。会社を倒産させ、一家離散に追い込み、人の寿命を縮めることもできます。たとえ悪意がなくても、ちょっとした宿命の解釈の間違いがこのような悲劇を生み出すことがあるということも、決して忘れないでください。


【算命学でわかること】

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