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(全文公開)漁業の新しいルール

新型コロナウイルスの第3波が話題となっている中、12月1日に新漁業法が施行されるニュースが一部で紹介された(改正は70年ぶりになる)。漁業となっているので、そういった分野に日常から関わっている方々にしか関係ないっと思われるかもしれないが、決してそんなことはない。この法律は漁獲量を魚の種類ごとにコントロールするものであり、例えば趣味で釣りをしている人も誤って規制対象となっている魚を釣り上げて、持ち帰ったら密漁になってしまう。

これまで既にサンマ、イワシ、アジ、サバ、クロマグロなど8種類の漁獲規制が行われているが、これにブリ、ホッケ、マダイ等15種類の魚が加わる。これまではこうした規制対象になかった種類の魚の乱獲等により、日本の漁業生産量の減少が続いていたが、諸外国において日本の魚の需要は根強くあることもあり、適切な漁獲のルールを設定する必要があったわけである。

また、その他にも制度改正の大きな点として漁船ごとに漁獲量を割り当てる制度ができた。これまでは「早いもの勝ち」になっていた部分が適正に資源管理がされるようになり、割り当てられた目標値の範囲内で漁獲を行うことになった(これは昨年の漁獲実績をもとに、漁業者ごとに漁獲可能量が決定されることを意味する)。一方で課題としては、家族経営が中心となっている小規模漁業に分配される可能漁獲量は極めて少なくなるなどの公平性の部分があげられる。なお、制度改正の概要は水産庁のホームページから知ることができる。

こうした漁業の規制を強化することは、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にも大きく貢献するわけだが、一方で漁業で生活している人々や組織にとっては経営揺るがす大きな問題になりうることも表している。また、地域によって漁場の性質は異なるわけであり、絶滅が危惧される海洋域ではほかの地域よりも優先的に海洋保護が行われなければならず、これは単純な漁獲量の規制だけでは解決できない部分もあるだろう。「漁獲量」という視点だけにとらわれず、海洋保全や漁業者の生活の実態など、「漁業」に関わる様々な要素への配慮をもった運用が今後なされていくことに期待したい。

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