いーあるふぁんくらぶと、「さらば、わが愛覇王別姫」

はっきり言ってボカロ曲は詳しくないんだけど。作業中は思い出深い曲より、あまり知らないカジュアルな曲のほうが集中できるときもある。
そんなときにホロライブの桃鈴ねねさんがカバー曲で「いーあるふぁんくらぶ」を出していたので聴いていた。

普通にノリの良い曲だったのだが、歌詞の一部「天国のレスリー・チャンにおやすみなさいって言うために♪」
おい、今なんて言った。
レスリー・チャンと言えば香港映画の大スター。
若くして惜しくも自死してしまったのだが、なんで名前が出てくるのか。
思わず歌詞を調べた。
中国語学校に行って、大スターと同じ言葉を使いたいという、カワイイ感じの曲。
しかし、歌詞の中に出てくるスターのワン・リーホンやジェイ・チョウは台湾系。
レスリー・チャンも香港のスター。
そして、バイバイチャイナというフレーズ。
カジュアルに見せて、政治的なメッセージが込められているのか、意図せずなのか。
レスリー・チャンの代表作は「わが愛覇王別姫」。
これは文化大革命時代の中国を舞台に、京劇の女形を演じる男性をレスリー・チャンが演じる。
覇王別姫は項羽と虞美人の悲恋の物語。
レスリー・チャンの演じるチェンは祖母に指を切断された上で、京劇養成所へ預けられる。そこでも激しいいじめにあるが、兄貴分のドァンがかばってくれる。
やがてドァンは項羽、チェンは虞美人を演じ成功していく。
チェンは同性愛者(劇中では明言されていないがわかる)でドァンを慕っていた。
文化大革命の波に飲まれ京劇の崩壊を描く作品で、明確に中国政府への批判ともとれる。
今の香港では絶対に撮れない映画だろう。
覇王別姫の演目の中でも虞美人は自害し幕を閉じ、映画の中でもチェンは命を絶つ。
レスリー・チャン自体も同性愛者で自死の原因は長年のパートナーとの別離があったらしい。
レスリー・チャンのことを知らずに名前を使ったとは思えないので、いーあるふぁんくらぶはカジュアルだけど、強いメッセージが込められているのではないかと思っている。
いや、なんか長々熱く語ってしまったね。

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