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「キャンセル料は結構です」という文化を終わらせる

燃える

Twitterが燃えている。
253万インプレッションってナニ?ドユコト?
なんか夜に思った事を校正もせずにつぶやいただけなのにナニゴト?

驚くほどの量のリプライも引用リツイートももはや追いかける気にもならず、

  • 同調する意見だったり

  • 私は以前…という体験談だったり

  • 謎のマウントだったり

  • 純粋な質問だったり

  • 同業者の意見だったり

「なんかTwitterやなぁ…」と、どこか他人事のように見ていた僕ですが、取材の連絡があったのでしっかりと言語化しておくことにします。

140文字のテキストだけでは、僕の純情な感情は1/3も伝わらないですからね。

宿泊予約=契約

あなたはホテルや旅館にキャンセル料を支払った経験があるだろうか?

宿泊施設を予約する際、予約導線に必ず「キャンセルポリシー」という文言が出てくると思う。それは楽天だろうが一休だろうが公式サイトだろうが。
〇〇日前から○○%
○日前から〇〇%
などと書かれているアレだ。
恐らくほとんどの人があまり気にかけていないその文言が非常に重要。
宿泊予約は契約と一緒なのでその文言は契約内容ということ。破棄したらペナルティーがありますよという契約内容なのだ。

業界の不文律

では実際にキャンセル料はしっかりと請求されているのか?しっかり支払われているのか?

施設によるだろうが、「キャンセル料は今回は結構です」という対応をする宿も多くあるのかと。

当館もルールが曖昧で、今までは割と緩くキャンセル料の対応をしていたと感じております。その場の雰囲気で請求したり・請求しなかったり、と。

いや、その気持ちはすごい分かるんですよ。キャンセル料を請求するのってしんどいんですよ。
でも僕は「キャンセル料はしっかり請求するべきだ」と強く思うんです。

それが業界を守る事だし、旅館を守る事だし、スタッフを守る事だし、お客様を守る事だと。
「お客様を守る事?…はて?」と思われるかもしれないが、それは後述します。

今回のつぶやき

悶々とした気持ちをふとTwitterに呟いてみたら燃えに燃えた。

キャンセル料請求時に、電話口で相手から「残念ですよ」と言われたのが先日のこと。

「え?何が残念なんだ?」と困惑したが、どうやらキャンセル料を請求された事についてのようだった。
気持ちは分かるが2日前に突然キャンセルを受けたのだから仕方がないですよね、と。
残念なのはお互い様ですよね、と。

なぜキャンセル料を取るのか?

キャンセル料が必要な理由は大きく3つだと思っている。

  1. 実質的な損失の補填

  2. 機会損失の保険

  3. リスクヘッジ

1.実質的な損失の補填

実質的な損失とは、いわゆる食材・人材などを手配した損失。

当日キャンセルや前日キャンセルなど直近のキャンセルは実害が大きい。

食事もお部屋もスタッフも用意していた場合、キャンセルになると全て無駄になる。「スタッフ」と一口に言っても、接客スタッフ・清掃スタッフ・調理スタッフ・フロントスタッフ・洗い場スタッフなどそれぞれのセクションで人数を調整する。言わずもがな人件費をかけて。

なので、直近のキャンセル料は高く設定されている場合がほとんど。
キャンセル料は実害の補填に充てられる。

2.機会損失の保険

機会損失とは、予約販売する機会の損失である。

例えば1部屋しかない客室があるとして、5月20日の宿泊日で予約を4月20日にしたとしよう。
約1ヶ月間は予約したお客様がお部屋を押さえている。それ以外のユーザーは、5月20日の予約をしたくても出来ない状態になる。
そして5月18日にキャンセルをしたとする。

さてどうなるだろうか?

1ヶ月前には「予約したいな」と思っていたユーザーも、2日前に空室になっても予約が難しい場合がほとんど。
「他の宿を予約してしまった」
「別の日程にリスケした」

これが機会損失。

機会損失の時期をなるべく減らすため、10日〜1週間前からキャンセル料を掛ける宿が多い。損失の保険のために。

3.リスクヘッジ

機会損失と似ているが、予約の仮押さえなどによるリスクもキャンセル料設定で減らすことが出来る。

実は当館も2023年4月1日よりキャンセル料を改訂した。それまでは

  • 3〜2日前 宿泊代の30%

  • 1日前 宿泊代の50%

  • 当日・不着 宿泊代の100%

がキャンセルポリシーだった。

だが、2023年3月に以下のようなユーザーがいた事でキャンセル料の改訂に踏み切った。

  • 3月の土曜日に3週連続・2部屋・6名で同じユーザーから予約を受ける

  • →仮押さえであると感じたので電話にて連絡を試みる…が繋がらない

  • →メールをしても返信なし

  • →全ての予約はキャンセル料が掛からないギリギリの4日前にキャンセル

3月は全国旅行支援もあり、土曜日は2ヶ月以上前から予約が埋まっていた。何組のお客様をお断りしたか分からないほどだった。いくら繁忙期の土曜日とは言え、毎週4日前に2部屋キャンセルが出ても全て埋まる訳ではありません。でも、我々はキャンセル料も請求できない。

つまり、ルールが悪いのだ、そういう風に出来てしまう契約内容が悪いのだ、とキャンセルポリシーを改訂しました。

現在は

  • 10日前から 宿泊代の10%

  • 3〜2日前 宿泊代の30%

  • 1日前 宿泊代の50%

  • 当日・不着 宿泊代の100%

となっている。

10日前から10%取るのはどうなの?というリプライもありましたが、上記のような理由でリスクヘッジをしている。

業界の課題

そもそも「キャンセル料の反故」や「予約の仮押さえ」が簡単に出来てしまう現行の仕組みに業界の課題があると感じている。

  • 駄々を捏ねてキャンセル料免除を交渉する

  • 予約は早い時期に抑えてしまってギリギリでキャンセルする

などが出来てしまう構造に問題がある。

何故、宿泊施設は事前決済プランやデポジットのみにしないのか?
理由は2つあると僕は考えている。

1、予約数が下がる

事前決済やデポジットについては厳しくすればするほど予約数が下がるのでは?と危惧している場合が多い。

確かに不安はある。でも、

本当に予約数が下がるのか?
予約数が下がるのであればどの程度下がるのか?

を検証する必要はあるかと。

2、クレジットカードを利用しないお客様への対応

もう1つはクレジットカードを持っていない、というお客様が予約できなくなってしまうから。

しかしながら、カードを持っていない方が既にマイノリティなのでは?と思うのだが、どうなのだろうか。(個人のカード所有数値などは把握しておりませんが…)

僕が考えている対応としては

  • 旅行サイト(楽天やじゃらんなど)は事前決済のみにする

  • 公式サイトは現地決済も選べるようにする

というもの。

上記はあくまでも僕の仮説に過ぎず、いずれにしても期間を決めて実験・検証をする必要がある。

事前決済が主流になる(願望を含め)

今後、宿泊業界は事前決済が主流になると思う。希望を含めね。

理由としては3点。

  1. ユーザーの予約理解の低下

  2. インバウンドユーザーの増加

  3. スタッフ・ユーザーの負担軽減

1.予約理解の低下

近年は宿泊予約のほとんどがネット予約である。
宿を見つける→気に入った宿を予約する。一連の流れは全て手のひらの中で完結する。

”宿泊予約”が民主化し、誰でもストレスなく宿の予約が出来るようになったのです。
宿に電話したり、旅行代理店に足を運んだり、そんな面倒な事をしなくて良くなった。ユーザーにとっても宿にとってもとても良い事だと思う。

一方で予約した事への理解度は低くなっている。
「予約=契約」であることは前述した。
一方的に予約キャンセルをする場合、契約によってはペナルティが課される。

その認識が希薄になっていると感じている。

2.インバウンドユーザーの増加

コロナが落ち着き、インバウンドユーザーが増えている。

「インバウンドの流入数を増やしていく」というのは国の政策にもある。今後国内のインバウンドユーザーは更に増えていくことは間違いない。
ということは、宿泊施設が直面するのがインバウンドユーザーのキャンセル料トラブルである。

  • 言葉が通じない可能性

  • 連絡先も曖昧

  • 連絡手段も確証がない

  • 送金方法も不明

という相手に対しキャンセル料を請求するのだ。小さな宿が果たして出来るだろうか。

3.スタッフとユーザーの負担軽減

キャンセル料請求は、実際にやってみると非常に心が削られる作業である事に気づく。
相手の反応は必ずしも好意的ではなく、非情な言葉を受けたり、交渉が難航したりもする。

スタッフにとってはストレスのかかる仕事だし、時間もかかる仕事でもある。これを是正したい。

また、ユーザーにとってもストレスのかかる事でもある。

宿と連絡を取り、入金先を聞き、キャンセル料を支払う。
勝手に引き落とされている方がストレスが軽減されるのでは?というのが僕の仮説。

色々なものを守るために

予約やキャンセルの取り扱いについてはもちろん、宿泊施設は多くの部分で変化が必要なフェーズに入っていると感じる。

  • キャンセル料を免除する

  • 予約の仮押さえを許す

それは本当のホスピタリティなのだろうか。ホスピタリティという言葉を使って、面倒な問題から逃げているだけではないだろうか。
真偽は分からないが、電話口から「他の宿では請求されなかったよ」という言葉を聞くと一抹の悲しさを感じる。

  • その宿はどういう気持ちでキャンセル料を免除したのだろう?

  • その事実を他の宿に風潮する人

考えるとすっごく悲しくなる。

業界を守るため、宿を守るため、スタッフを守るため、変わっていかないといけない。

また、機会損失や実害がありながらキャンセル料を免除し続けるということは、他のお客様にツケが回ってしまうことになる。

理解してほしい事実として、”宿泊施設の在庫”というのは持ち越せないのだ。4月20日の在庫は4月21日に持ち越せない。つまり100%のロスになる。
ロスになった分はどこでまかなえば良いのか?

  • 販売価格を上げる

  • サービスを減らして人件費を削減

  • 質を下げてコストを削減

などの対応をしないとならない。
真っ当に予約していただいているお客様を守るためにも、悪しき風習は変えていかないといけない。

  • 物価は高騰している

  • 人件費も高くなっている

  • 光熱費は想像を絶するほど上がっている

  • 人材の確保はどんどん難しくなっている

業界として存続していくため、「今までの常識」を塗り替えていく時期ではないだろうか?
"事前決済"というツールを使って自分たちを守る必要があるのではないか?

そんな気持ちをギュッとしてTwitterに呟いたら燃えに燃えましたとさ。140文字じゃ伝え切れないよね。

我々も人なので

ここまで宿目線の意見ばかり述べてきましたが、我々も人間です。

子供の熱が出てしまって…
身内に不幸があって…
怪我をしてしまって…

など、予めご連絡をいただければキャンセル料免除を考慮する場合もあります。

キャンセル料を預かり金として、次回ご来館時に差し引くようなご対応もさせていただいております。
交通機関の影響であれば、キャンセル料を免除する場合だってあります。

宿に何も連絡せず、手のひらの中で「キャンセル」という文字をタップしていませんか?
キャンセル料の連絡が来てから「熱があった」と言ってませんか?

我々も人間です。

誠意あるお客様には誠意ある対応をしたいですし、誠意のないお客様にはそれ相応の対応に留めたいです。

あなたのスマホ画面の先に、料理を準備したり・接客の準備をしたり・お部屋の準備をしたりする人がいる事を忘れないでほしい。

くれぐれも「予約は契約」です。

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