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絵を描く理由

3歳から18歳までエレクトーンを習っていた。
物心が付く前は野球選手の野茂になりたいとか、お花屋さんになりたいとか言っていたらしいが、幼稚園の年中さんから中学卒業まで一貫してヤマハの先生を目指していた。
ヤマハの先生の夢を諦めざるを得なかった理由は経済的なものだったが、未だになれるならなりたいと思うくらい、私は音楽が大好きだ。

ヤマハの先生を諦めた後は見事に夢を見失い、盛大に迷走した。
当時高校生だった私は、毎朝、録画していた深夜アニメ(セブンゴーストとかデスノートとか戦国BASARAとかコードギアスとか)を見てから登校するほどアニメにドハマリしており、ヤマハの先生になれないなら声優になる! と一年くらい力説していたり、先生が無理ならエレクトーンプレイヤーになる(ピアニストみたいなもの)! と言い出したり、ひどいうつ状態に陥って目標どころではなくなったり……笑

ようやく進路を定めたのは高校3年生の頃だったろうか。
小学生で不登校になったときも、高校でうまくいかなかったときも、スクールカウンセラーの先生に大変お世話になった経験から、自分と同じように悩み苦しむ子どもたちを助けたいという思いから、スクールカウンセラーと臨床心理士(当時は公認心理師という資格がなかった)を目指し始めた。

大学に入学したあとも、一心に臨床心理士を目指して勉強をしたが、在学中にうつ病を発症し、結局大学院に進学できないまま、今は子どもと関わる仕事に就いている。


絵は、通っていた幼稚園の園長先生が元美術の先生だったためか、幼い頃から竹ペンで絵を描いたり、絵の具でポストカードに絵を描いて地域の展覧会に提出したり、動物園のピラニア展の壁画を描いたり、敬老の日や母の日、父の日にはみんなで絵を描いたり、テレビが取材に来たときに絵を紹介してもらえたり、なんだかんだものすごく絵をたくさん描く機会があったし、そういうことにとても熱心な幼稚園だったので、自然と「絵を描くこと」が身近なものとして存在していた。

小学生の頃にはNARUTOに激ハマりし、少ないお小遣いやお手伝いのご褒美を使いながら単行本集めに奔走し、同時に、漫画のお気に入りの扉ページをトレースしたりオリジナルの忍を作って遊んだりしていた。

中学生になると友人からBL文化を布教され、よく理解していないながらも盛り上がる友人の話を聞いたり、互いに好きなキャラやバンドのメンバーの絵を描いて遊んでいた。

高校生になるといわゆる漫研のような同好会に入り、先輩や後輩たちと日々アニメの話をしたり、絵を描いたりして過ごした。
16歳で二次創作サイトを作ってからは、自分の妄想を絵や小説にして発散していたし、この頃あたりから明確に「上手くなりたい」と意識するようになった。

社会人になってツイッターで活動を始めると、周りの絵のうまい人に負けじと必死になって絵の勉強をしたし、いいねとRTの数に一喜一憂した。


しかし、上記の通り、イラスト関係の仕事に就きたいと思ったことはなかった。
漫画家になりたかったわけでもないし、イラストレーターになりたかったわけでもない。アニメの設定資料なんかも見るのが好きで、アニメーターもすごいなとは思っていたが、なりたいとまでは思っていなかった。

ラインスタンプを作ったことがあるが、なんとなく単発で終わっているし、同人誌は小説本しか出したことがない。

ちょっと絵が描けるからって、生活の足しにもならないしなんの役にも立たないじゃないか! と思い悩んだこともたくさんある。

なんとなく、私にとって自分の絵というものは「お金にならない趣味の延長線」で、やめることもできない「表現の場」のひとつであった。

さらに言えば、最近は絵を描いていて楽しいという感情も湧かない。ただ無心で鉛筆を走らせ、一心不乱に描きあげていくものである。
ツイッターを始めた頃はコミュニケーションツールのひとつでもあったし、承認欲求を満たすための役目もしていたが、今はある程度そういうところから離れたところに絵の価値をおいている。本当に、描くだけで満足な状態だ。


今、私が絵を描く理由は、心を無にするため、体の痛みを認識しないようにするため、気をそらすため。
もちろん、描くからには上手に描きたいし、美しいものを作りたい。

しかし、今の私の心身の状態がよくなさすぎて、絵を描く作業が一種の治療となっているように感じるのだ。
絵を描いているときだけ、不安と痛みを忘れられる。

絵を描く理由としてはあまりにも後ろ向きかもしれない。

なんだろうな、マインドフルネスみたいなものだと自分では思っている。
「描く」ということだけに集中する数時間が、今の自分にとっては癒やしの時間になっている。


しかし、やっぱりいつかは楽しく絵を描きたい。
それまで修行のように、腕がなまらないように、黙々と描き続けるのも悪くないだろう。

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