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ゆがんでいる(3)

ものごころついた時には、私の歯は虫歯だった。
おそらく、歯磨きの習慣が付けられていなかったのだと思う。
そんなばかなことがあるの?
私は母に見てもらえていなかったのだろうか?
そんな不穏な気持ちが、いつも伴っていた。
小学生になると、歯科検診でいつも要治療、の用紙をもらってくる。
本当に恥ずかしい気持ちで、みんなの目が気になった。
だから私の顔はゆがんでいるの?
今から歯磨きをしても、治療した歯は元には戻らない。
子どもの私でも分かっていた。それでも歯ブラシは習慣付けた。

クラスの中に、虫歯が一本も無い綺麗な女の子がいて、表彰されていた。
あの子は親に愛されているんだな、と思った。
ああいう子が、表彰されるべきだ、という思い込みも明らかに私の中で育っていった。
私のような子は、みんなの前に出てはいけない、という思い込みも。

ここまで書くと、親の悪いことしか出てこないようだが、母はおそらく歯に対する正しい知識が無かったことと、歯ブラシをすると娘が嫌がるので何度も無理にやるのは難しい、と思ったのではないか。
両親ともに働いていて普段は構ってあげられない。お菓子を与えれば、娘が喜んで食べるのを見るのも嬉しかったのだろう。親なりの愛情表現だったのではないか。
と解釈している。

思い出してみれば父と母も、自分の歯科治療に苦労している様子があった。
あそこの歯医者さんが良いと聞けば、治療は辛かったけどいろいろな歯医者さんに行ってみた。
こんなにたくさん歯医者さんがあるのに、自分が納得できる歯医者さんって、なかなか見つからなかった。
信頼できる歯医者さんを見つけるのは大変だなぁ、と今も思う。

私は自分の子供には、本当にムキになって歯の大切さを語り、虫歯にさせてはならないと、歯ブラシを習慣付け、家族の大人たちにはお菓子をたくさんあげるのはやめて欲しい、と散々言ってきた。
砂糖が体に入りすぎるのは、虫歯になりやすい体を作っているのと同じだ。
なかなか伝わらないこともあったが、私がこだわっていたことだった。

今の時代は、予防歯科の知識は当たり前になっているが、両親の若い頃はまだ知識が浸透していなかったのか。

それでも、遅くなったが高校生の時に母は歯科矯正に援助してくれた。
同級生で矯正治療をしていた子がいて、その子がとても良い先生だと紹介してくれた歯医者さんに、治療をお願いした。
これでゆがんでいる顔も、なんとか治るかもしれない。

そう思っていたが、矯正が終わっても顔のゆがみは治らない。
顎の関節も関係しているのかもしれない。

ここで、美容にこだわる人は、整形を考えるだろう。
しかし私は、整形をしようと思ったことはない。

なぜか?なぜだろう…

つづく

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