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#1「ソウル若三杉」ドクター南雲とシルバーヘッドホーン

名曲の裏に迷曲あり。
あまり世間には知られていないが、一部では愛好されている、もしくは隠れすぎていてまったく愛好者がいないような一風変わった珍曲が好きです。
自分の備忘録代わりにも好きな珍曲・迷曲を紹介するコラムを細々と書いていこうと思います。
笑いあり、涙ありのはなちゃんオススメの珍曲をお楽しみください。

「ソウル若三杉」
歌:ドクター南雲とシルバーヘッドホーン

さて、コラム第1回目ということで、最初はやはり胸を張ってオススメできる曲を持ってこようと思いました。いろいろ候補を上げたのですが、ネタ面でもサウンド面でも抜かりがないと選んだ曲、それは「ソウル若三杉」。元横綱・二代目若乃花をテーマとした珍曲です。
1977年にリリースされたこの曲は、ディスコブームと若乃花(大関時代までの四股名が若三杉だった)の人気に乗っかって作られた1曲です。この時代、この手の企画系ディスコ曲が何曲も作られているのですが、その中でも「ソウル若三杉」は群を抜いてクールで、それでいて謎のパワーに溢れた様子のおかしい楽曲となっています。

まずこの曲を聴いて、最初に耳を傾けてしまう部分はやはり歌詞でしょう。
シルバーヘッドホーンと名乗る女性コーラス隊(詳細不明)による「わ・か・み・す・ぎ わ・か・み・す・ぎ」という呪文のようなコーラスが初っ端からインパクト絶大。しかも「わ・み・か・ぎ・す」「わ・す・か・み・ぎ」など若三杉の文字列を適当に並べ替えたコーラスが続くのですからそのテキトーさがたまりません。
そしてそのあとにはひたすら若三杉のプロフィールがメロディに乗り歌われます。プロフィールの最初に本名が読み上げられるのはどうなんしょうね。2番になると「わ・か・み・す・ぎ」の後に\がんばれ がんばれ/等掛け声が入りラストに向けて曲が盛り上がっていきます。そして曲が最高に盛り上がったところで、行司の高らかな声で若三杉の名が呼び上げられ、歓声の中曲が終了します。

1度目はこの3分足らずの曲のパワーに押され口をぽかんと開け、唖然と聴き終わることでしょう。しかし、ああ、変な曲を聴いてしまった、でもなんだこの癖になる感じは、もう一度聴こうと2度目の再生に手をかけると、気付いてしまうと思うのです、曲のかっこよさに。
個人的に珍曲は歌詞やコンセプトのおかしさはもちろん、サウンドもしっかりしていなければおもしろいものにはならないと思っています。サウンドはカッコいいのに、歌詞はおかしいっていうギャップこそが笑いの方程式。そういう意味でこの「ソウル若三杉」は満点をつけたい珍曲なのです。

この曲はディスコ調のアレンジになっているのですが、歌詞を聴かなければサウンドはひたすらクール。カッコイイベースラインに、リズミカルなカッティングギター、そしてクールなエレピ、クラビ、キレのいいブラスが一体となって駆け抜けていくグルーヴィーなサウンド。その名の通りソウル味に溢れています。特にイントロのアフリカ感溢れるパーカッションがアフロソウル的で超カッコいい!
歌詞さえ聴かなければ超カッコいい曲なんです、「ソウル若三杉」は。

それから最後に語っておかなければいけないのはボーカルです。
この曲の謎のパワーの8割はここにあると思うのですが、とにかくボーカルのドクター南雲氏の歌声がひたすらヤバい。
このドクター南雲とは、フォークミュージシャンの南雲修治氏のことです。南雲氏は「女風呂の歌」等、ナンセンスなフォークをコミカルに歌い上げるミュージシャンですが、なんかこの「ソウル若三杉」は様子がおかしい。ちょっと軽くキマってるんじゃないかというほどテンション高くブラックフィーリングたっぷりにシャウトしたり、時にはリップロールを混ぜたりとやりたい放題。  特に、1番のあとのやたらテンションの高い「寄り出し 突出し 上手投げ オー!オー!」という部分は曲とぴったりハマって最高に気持ちがいい。そのあとの女性の\ディスコー/という掛け声もちょっと恥じらいが感じられて味わい深いです。
ここまで聴き込めた人は、曲終盤には謎の高揚感に胸を満たされ、まるで自分も音源の中にいるような気持ちで一緒に歓声を上げてしまっていることでしょう。

ちなみにこの「ソウル若三杉」、当時は普通にテレビでも放送されていたというのだから驚きです。


このソウル若三杉、ちゃんとCD化もされているのでぜひお求めください。


サポートをしていただきましたら、はなちゃんの曲作りのスピードがあがったり、DTMの音が少しよくなるかも…!