未來2018年3月号

硝子戸を椅子でぶち破る空想にもうはつ雪はかろく降り積む
ちりとりに入り損ねた線状の埃をおいて眺めた夕陽
標本の烏賊の濁った両目から見える廊下は暗いだろうか
夕焼けは窓のかたちにきりとられ火の用心のポスターに差す
同僚がさざなみだてたぬるま湯の飛沫を浴びて それだけだった
どのひとも好きにはなれず宵ぞらの底はしずかに燃えているような
バス停の屋根はたわんで羽虫らの浮かんだ水をにわかにこぼす
遠藤はうつくしい名で聞くたびに霧のむこうでゆれる藤棚
階段をあがって駅を出るときの冬晴れ 次はこう産まれたい

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