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漢方入門③ 「気虚とは?」

 漢方入門の3回目は気虚(ききょ)についてお話ししたいと思います。

 元気の気に虚(うつろ)と書いて気虚といいます。気と言うのは生命エネルギーと言い換えることができるわけですけれども、元気エネルギーと言っても良いと思います。気虚と言うのはその元気エネルギーが少なくなっているわけですから、元気がない状態が気虚とイメージしてください。

 気には先天の気と言って生まれながらに持っている気と、後天の気と言って誕生後に外界から取り入れる気があります。

 先天の気は腎に蓄えられているとされています。腎というのは、現代医学における腎を指しているわけではなく、泌尿生殖器系全体を指しており、水分バランスを整え、成長に関わる一つの機能単位を指しています。年齢とともに元気がなくなっていくのは、この腎に蓄えられている先天の気が減っていくからと捉えます。腎の機能が落ちてきた状態は腎虚と呼びます。

 後天の気は、生まれた後に食物から取り入れるものや空気から取り入れるものから創り出されたエネルギーと言うことになります。気虚という場合、この後天の気が足りなくなっていることを指す場合が多いと思います。

 気虚になると、気力がなくなる、すぐに疲れる、体がだるい、寝ているはずなのに昼間でも眠気が出てくる、食欲がない。たびたび風邪をひく、物事に驚きやすい、目力がなくて声に力がない、下痢傾向が見られるなどの症状が見られます。

 漢方において、気虚の状態を改善するためには、主に消化吸収能を高める、つまり胃腸の調子を整えることによって元気をつける処方を用いる場合が多いようです。その代表は補中益気湯です。もともと元気がないといったような方に使っても良いですし、普段は元気だけどここのところ疲れが溜まってしまうといった場合にも利用できます。補中益気湯の中には、人参と黄耆と言う生薬が含まれており、この2つが含まれているものを参耆剤(じんぎざい)と呼び、元気をつける処方とされます。他にも人参湯、四君子湯、小建中湯など、気虚に用いられる用いられる処方はいくつかあります。元気がないと言ったこと以外にどのような症状があるかによって選択肢の中から最も適切と思われる処方を選ぶわけです。

 全身倦怠感や疲れやすいといった症状は、コロナ後遺症でもよく見られる症状とされています。そういった方には方は気虚の状態と考えて元気をつける漢方薬を利用すると良い方向に向かうと言う報告も見られます。あなたの日常生活でどうも最近疲れやすいなどといったことがあったら漢方薬のことを思い出して、薬剤師や医師に相談してみてはいかがでしょうか。

 今回は気虚についてお話ししました。次回は気のめぐりが悪くなっている、気鬱についてお話ししたいと思います。

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