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漢方入門④「気鬱(きうつ)について」


 前回は元気のでない状態である気虚についてお話ししました。今回は気のめぐりが悪くなっている気鬱についてお話ししたいと思います。気滞という言葉を使うこともあります。鬱といえばうつ病を連想すると思います。うつ病のような精神疾患の診断は専門の医師でないと難しいので、気分の落ち込みが激しいと感じたら、心療内科や精神科を一度は受診した方が良いと思います。精神疾患でなければ、心と体をまとめてみてくれる漢方の良い適応となります。
 日常生活でも「気詰まり」と言う言葉を使ったりしますが、気と言うのはうまくめぐっていないと体調にも影響するようです。気の巡りの悪化は、血や水の巡りの悪化にもつながり、また血水のスムーズな流れが障害されていると気の巡りが悪くなったりと言うように、気・血・水は互いに関連しあって働いています。気の巡りが悪いなぁと言うときには、気の巡りを良くしてあげるような漢方薬を利用することになります。
 気の巡りが悪いときの症状をいくつか挙げてみます。有名なのは喉のつかえ感です。いつも喉に何かがつかえている、引っかかっているというような感じを訴えることが多いです。他には抑鬱傾向がある、頭が重い、胸から上腹部にかけての詰まった感じがする、お腹が張った感じがする、どうも朝は調子が悪い、おならがよく出る、飲み込みが悪くてゲップが出るなどといった症状を認めることがあります。また、喉の違和感からよく咳払いをする、と訴える方もおられます。
 気のめぐりを良くする代表的な処方には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や香蘇散(こうそさん)があります。
 半夏厚朴湯には、厚朴と紫蘇葉(しそよう)という、気の巡りをよくしてくれる生薬が含まれています。のど、胸、上腹部のつまり感を訴えるような方によく使います。茯苓(ぶくりょう)という生薬も含まれており、これは気持ちを落ち着け、水分代謝も改善してくれます。
 香蘇散には、香附子(こうぶし)と紫蘇葉という生薬が含まれており、これらが気の巡りを良くしてくれます。また胃腸の調子を整え元気をつけてくれるような生薬も含まれています。元気のない方でしょんぼりしているような方に使い、高齢者にも安心して利用できます。
 これらの処方に含まれている生薬である、厚朴、紫蘇葉、香附子などが入っている処方を見かけたら、気の巡りをよくする意味合いも含まれた処方だと考えていただいて良いと思います。
 ちなみに、半夏厚朴湯は私が漢方にハマったきっかけとなった処方の一つです。処方した患者さんが、一包服用しただけでずっと悩んでいた喉のつかえ感が消失したためびっくりして「こんなに強い薬を飲んで大丈夫ですか?」とやってきたことがあるのです。そんな経験をすればあなたもきっと漢方ファンになりますよ。
 今回は、気鬱についてお話ししました。思い当たる症状はありませんでしたか。気になったら薬剤師さんや医師にご相談ください。次回は気逆についてお話しする予定です。

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