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ショーケンKANPO ⑨ 肌の痒みを訴える男性に当帰飲子

症例を通して漢方を学ぶ、ショーケンKANPOの第9回目です。今回用いた漢方薬は、当帰飲子(とうきいんし)です。体力が低下傾向で皮膚が乾燥傾向の人がかゆみを訴えるようなときに使う処方です。

【症例】男性 75

【主訴】全身が痒くなる

【現病歴】明らかな原因は無いのだけれど約1週間前から体中がかゆくなるようになった。皮膚に明らかな発疹等は無いけれどかゆみで辛いので受診した。

【所見】身長165cm体重65㎏。皮膚は全体的に乾燥傾向だが明らかな発赤や発疹、分泌物などは認めない。かゆみは特に夜に強くなる。お腹の力はやや弱いくらいで特に所見はない。

【経過】乾燥肌の高齢者で痒みを訴える、ということから当帰飲子(とうきいんし)を処方した。数日で効果が実感できたようで2週間後にはかなり痒みが軽減していた。さらに1ヵ月服用を継続したところすっかり痒みが取れてしまったので終診とした。

【解説】年齢とともに肌のハリがなくなり乾燥傾向が強くなる人が多いです。そのような方は肌に痒みを訴えることが多くなります。特に冬場の乾燥傾向の強い時期に掻痒感が強くなる傾向があります。こういう高齢者の皮膚掻痒症に対して第一選択となる漢方薬が、当帰飲子です。比較的体力が低下した人の皮膚症状によく用いられます。皮膚症状としたら乾燥、肌の荒れ、軽い発赤、掻痒感などが挙げられます。また一般的にやや貧血傾向であったり四肢の冷えを訴えたりすることもあり、高齢者に使われる頻度が高くなります。

10種類の生薬から構成されています。肌の栄養状態を良くし、血液循環を改善し、炎症を抑え、皮膚の傷などの治癒を促進するような生薬が配合されています。

保険適用は、「冷え性のものも次の諸症、慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ。」となっています。

皮膚の発赤が強かったり熱を伴ってたりと炎症所見が強い場合には消風散、十味敗毒湯、温清飲なども候補に上がってくると思います。

乾燥傾向が強い場合には当帰飲子と温清飲を組み合わせる場合もありますし、当帰飲子と消風散を一緒に服用してもらうこともあります。

周りにいる高齢者の方で、痒くてかきむしってしまい、ひっかき傷がたくさん付いているような方はおられませんか。そのようなときには当帰飲子その他の漢方薬を利用するとうまくいく場合もありますから、ぜひ相談してみてください。

漢方には、足りないものがあればそれを補うという発想があります。当帰飲子は血を補うという側面がある処方で、皮膚に潤いと栄養をもたらし、乾燥肌を改善してくれるわけです。

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