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皮膚をじょうぶにしてくれる黄耆(おうぎ)という生薬

 生薬の黄耆(おうぎ)には、皮膚を丈夫にし、元気をつけ、だらだら出る汗を止め、むくみをとり、膿をだすなどの効果があるとされています。マメ科のオウギの根が使われます。

 黄耆を含む漢方薬には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)、防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)その他があります。補中益気湯はこれまで何度かお話ししましたが、疲れて元気がないような方に、エネルギーを注入して活気を取り戻してあげる処方です。この処方は漢方薬の中では比較的新しく、800年くらい前に文献に出てくるようになったようです。

 それよりもっと昔の、1800年くらい前に元気づけの処方として使われていたのは建中湯類(けんちゅうとうるい)と言われるものです。中、つまり消化機能を建て直すお薬という意味での建中湯類です。小建中湯(しょうけんちゅうとう)、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などが挙げられます。小建中湯は虚弱体質の小児によく使われる処方ですが、私は漢方の整腸剤といった感じで使っています。この小建中湯に黄耆が加えられたものが黄耆建中湯です。保険適応病名は、「身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症:虚弱体質、病後の衰弱、寝汗。」となっています。この中で寝汗というのは、体力が落ちてしまったときに皮膚のしまりが悪くなり、水分が汗として漏れ出てしまうというふうにとらえます。黄耆は皮膚をつよくしてその汗を止めてくれるとされます。また、褥瘡のある人ならば治癒傾向が促進されるとも言われます。

 防己黄耆湯は、水太り傾向の人で膝の痛みを訴える人に使われる処方とされています。水分バランスを整えて、むくみをとり、関節の腫れも軽減してくれるわけです。また、適応病名の中には、多汗症も含まれており、汗っかきと言われる人に使うことも少なくありません。まさに黄耆が活躍していそうですね。防已や蒼朮と一緒になって黄耆が体の水はけを良くしてくれるようです。

 以上述べた処方のなかで、いろいろな構成生薬と黄耆が組み合わさって、うまく症状を軽減させてくれるわけですね。生薬ごとの働きをうまく引き出すように組み立てられた、漢方薬のすばらしさは、研究を重ねてそんな漢方薬を作り出した昔の人たちの努力の賜物ですね。そんな宝を、これからもうまく引継ぎ、発展させて、人々の体調改善に役立てていきたいものだと思います。

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