桜井の話③

まず、学校で一番お笑いに詳しいやつということで目立とうとした。

そもそも小学生の時から親のお笑い英才教育のせいでダウンタウンがとにかく大好きで、周囲がアニメや漫画の話で友達と盛り上がってる中、僕のグループだけは「昨日のガキのフリートークがいかに面白かったか」で盛り上がっていた妙に背伸びした小学生であった。

そういったお笑いのDVDを大量に持っていたりもしたから、クラスの友達に貸したり、最近見た面白かった番組やお笑い芸人の話をしたりと、とにかく「お笑い=桜井」とクラスの内外に認知してもらえるようにお笑い好きアピールをしまくった。

次に、とにかく面白いと思われるよう、授業中でも構わず隙あらば大きい声で喋って喋った。
友達をいじって、先生にツッこんで、ガヤを入れたりして。
違うクラスにも友達をたくさん作って、その友達にも面白いと思ってもらえるよう、精一杯ボケてツッこんで、自分なりに「面白い」を頑張った。(3年間「面白い」を頑張ったせいで勉強は一切頑張れなかったため、僕は大学受験に見事失敗し、浪人することになる。)

そうして迎えた高校の卒業式の後、僕は保護者も交えたクラスの謝恩会の司会を務めることになった。
生徒はもちろん親御さんにも事前にアンケートをとり、その回答を土台にして1人で1時間以上喋りっぱなしいじりっぱなし、もう本当にさんま御殿ならぬ桜井御殿で、我ながらこのスキルだけで飯を食っていけるんじゃないかと思うくらい、とにかく集大成的な「面白かった」手応えを感じつつ、無事高校生活を終えることが出来た。

ところが、である。
そこまで「面白い」と言われることに3年間を賭してやってきたのに、同級生は皆、口を揃えて「桜井は面白くない」と言う。
そして、皆次いで「岡田君の方が面白い」と言うのだ。

何故だ。
俺がお笑いのDVDを貸したら、1番ハマってたけど。
お笑いの話で1番盛り上がれる友達だったけど。
俺の周りで1番面白かったけど。
何故、岡田の方が面白いと言われるんだ。
俺の方が頑張ってたのに。
俺の方がたくさん笑わせてきたはずなのに。

俺の方が目立つ存在だったのに。

いつの間にか僕は、クラスで1番面白いやつじゃなく、クラスで1番面白いやつと仲良いやつになってしまっていた。

つづく



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