岡田の話①

岡田は、僕が会った中で1番変で、1番面白いやつだった。

僕らの高校は高校3年間クラス変えがなくて、だから岡田とは3年間クラスが一緒だった。
岡田は1番仲の良い友達で、2人で放課後マクドナルドに行ってどっちがシャカシャカチキンに辛い粉をたくさんかけて食べれるかとか、2人で一緒に入った塾の自習室でどっちがより多く寝れたかを競ったり、お互いそういう1番しょうもないことをする間柄であった。

岡田は変わった男で、まず、自己主張が全く無い。
「これして遊びたい」とか「あれが食べたい」とか、そういうことを全く言わない。
どんな遊びや食事の予定でも、岡田が言い出しっぺになることは一切なかった。
というか誘ったら付いて来るけど、ちゃんと誘わないと「誘われてないから」って言ってシンプルに来ない。

それから、とにかく遅刻を嫌う。
今でも覚えているのは、クラスの友達の家でワールドカップを見ようと集まった時の話。
友達の家で夜中ワールドカップを見て、その後も朝までひとしきり遊んで、みんなで眠たい目を擦りながら学校へ向かっていた。
うちの学校には朝の読書タイムというのがあって、8:40からのホームルームに対して、8:20までに教室に到着していないといけないというルールがあった。
ただ、そもそも読書タイムって何?という支配への疑問は日頃からあったし、ましてや国を挙げてのお祭りの次の日なんだから、今日はいいんじゃない?ってみんなも緩んでるわけで。
そうして朝みんなで8:40を目指してダラダラ登校していたら、岡田1人だけ急に焦りだして、しまいには怒り出したのだ。

「お前らのせいでおれが遅刻してまうやろ」

いやいやちょっと待ってくれ。そもそも8:40には間に合うのだ。8:20の線引きは、今日くらいはいいんじゃないかっていうやつだったじゃないか。あとお前らのせいでって何だ。別にみんなで図ってお前を困らせようとしてるわけじゃない。
そうしてみんなのケツを叩いて急がせた岡田は、一時間目から六時間目まで、昼休みも含めその日1日ずっと寝ていた。遅刻よりダメじゃない?

お笑いに1番ハマってくれたやつでもあった。
後に岡田は「中学までの俺は全然面白くなかったけど、高校1年の時から急に面白くなった」と語るのだが、僕が貸したガキ使のDVDやらYouTubeのお笑いの動画やらを1日3時間以上365日毎日見てから面白くなったらしい。ハマり方急すぎ。

何より、物の見方というか、角度が他人と違うやつだなぁと思うことが多かった。

ある日友達と「鼻が性器だったら」などという馬鹿な話で盛り上がっていた時のこと。
そもそも鼻の形に特徴がある友人の鼻を性器みたいと言い出した戦犯は僕だったのだが、その話を聞いていた岡田が

「じゃあ、ずっと気持ちいいやん」

とボソッと呟いたのを聞いてハッとして振り返ると、岡田が自分の鼻をさすっていたのだ。
この時僕は、面白いと同時に脳天を貫かれたような衝撃を受けたのだ。
鼻の形状が性器に似ているという僕のボケを受けて、それが顔の真ん中に付いているということは、いつでもどこでも触りやすいですねという岡田の被せボケがあまりに面白くて素直に笑えず、「何言うてんねん!」とあまりにも角度のないツッコミをしてしまったのを覚えている。

当時の僕はダウンタウン松本人志信者だったから、お笑いで目立つためにはボケとして面白くないといけないと思っていた。
だが今振り返ると、当時から岡田が圧倒的なボケで、僕はいつもツッコミに回らされていた気がする。

つづく。

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