見出し画像

安田純平さんと鎌田慧さんのトーク会2

トーク会の前日、100円ショップで黒いサングラスを買った。

今の時代、政府に都合の悪いことを言う人、聞く人は監視カメラで撮影されているのではないかと思ったのだ。しかし、花粉症でマスクをしている上、安物の黒サングラスをかけたら、余計に不審者っぽく職務質問されそうなのでやめた。

会場に遅刻して入ると、壇上には安田純平さんと常岡浩介さんがいて、拘束されていた状況を淡々と説明していた。

目が悪いので、前から二番目に着席した。

話の内容を大幅に要約すると、

 安田さんを拘束した団体は、ISではない。何故なら彼らはISのことを「ダイシュ(現地語でISの蔑称)」と呼んでいたから。

ISに拘束された人は、後藤健二さんをはじめ皆殺された。身代金を払わなくても自分が生きて帰れたことが一番の証拠だ。

そして、今現在のシリアでは政府軍による爆撃により、毎日女性子どもを含む多くの市民が亡くなっている。

ISの2014年時の名簿や詳細な給料、予算管理表等の資料、爆撃されてみんなで助けに行くが、手足を吹っ飛ばされて亡くなっている子どもたちの映像をたくさん交えて説明してくれた。

そして安田さんの奥様、深結さんと鎌田慧さんが登場。深結さんは当時の辛い状況を時折声を詰まらせながら話してくれた。会場は年輩の女性が多かったので、貰い泣きしていた。もちろん私も。

安田純平さんがシリアに入った直後から一週間連絡がつかなかった。夫から「何かあったらこの人に連絡して」と渡されていたシリア人に電話したら、「実は拘束されている」と知らされた。誰にも言えず鹿児島の実家に帰っていた。後藤健二さんの件で、政府は何もしてくれないのがわかっていたので、外務省から留守電が入っていたのを無視していた。

ある日電話をかけてみたら、外務省の方が鹿児島まで飛んできてくれて「家族の同意がないと動けない」と言われた。

そこで安田純平さんが「初めて聞いた。家族の同意がないと、言ったんですか?家族がいない人はどうするんですか?」と言った。確かにそうだ。変な話だ。

純平さん「日本は何もしてくれなくて、ブローカーを通して拘束している相手と交渉していた。相手は『命の保証はする。しかしメディアに流したら作戦変更する。』と言っていた。

しかし官邸の会見で記者が漏らしてしまい、あっという間に話が広がってしまった。

普通、誘拐事件の際は、事件最中は報道しないようにメディアは配慮しますよね?解決してから報道する。なぜ海外で誘拐されたら配慮してくれないのか。命の危険があるのに」

深結さん「私に対応してくれた外務省の方は感じ良かった。日テレやテレビ朝日の記者さんも食事に連れ出してくれたり、支えてくれた」

純平さん「でも解放されたら、こちらに取材もせずに勝手に『身代金が払われた』とデマを流しましたよね。妻と電話一本で繋がる間柄なのに」

ここで一旦休憩時間になった。鎌田さんと安田さんが購入した本にサインしてくれた。

私は安田さんにサインしてもらいながら「私、帰国した時のひどいバッシング騒動でこの国はおかしい!と思って、安田さんに興味をもったんです。」と話しかけた。

安田さんは背が高いが座高は低いようで、テーブルに座ると顔がだいぶ低い位置にあった。

その低い位置の頭を深々と下げて「ありがとうございます」と返してくれた。握手を求めると快く応じてくれた。

やっぱり思っていた通り、弱者に優しく強者に立ち向かう勇者なんだと思った。

後半は鎌田さんがインタビューする形式だった。

鎌田さん「拘束されて良かったと思う事は?」

安田純平さん「今までの人生が走馬灯のようにグルグル回っていた。仕事とか人間関係とか、もっと上手くやれたんじゃないか、と後悔した。こんなしょうもない走馬灯で死にたくない。自分のしたいことを自由にできていた過去がどんな幸せだったか実感した。絶対に生きて帰るという信念が生きる支えになった。遺書は書かなかった。書いたら死にそうだから。帰ってきてこれから生き直せることは、糧になったと思う。今後の仕事とか生き方には活かせると思う。」

鎌田さん「暴力には暴力で向かってはいけない。ペンだったり、音楽だったり、聴診器だったりで立ち向かわないといけない。」

安田純平さん「自民党は改憲するとか言っている。『家族仲良くしましょう』なんて一見良さそうな事を言ってるけど、そんな憲法作ったら『家族連帯法』とか絶対作りますよ。家族による相互監視ですよ。」

ここで会場はどっと笑いに包まれた。安田さんの冗談だと思っているようだった。

私は、ここ最近の一番の懸念事項(自分の周囲に触れ回っているが、誰も相手にしてくれない)を初めて言語化してくれたことに感激し、胸が熱くなった。

場内爆笑の中、私だけ真面目な顔で「そう、そうなんだよ!」という意味で大きく頷いた。

すると常岡浩介さんが気付いて頷き返してくれた。常岡さんに耳打ちされて、安田さんもこちらを向いて頷いてくれた。

気持ちが通じたようで、すごく嬉しかった。ちなみに常岡浩介さんも、テレビで見るより誠実で思いやりに溢れているような容姿だった。

最後に一言づつ

安田純平さん「自分の好きなことを書いたり考えたりする人は、多ければ多いほどいい。このまま流されていくと、ますます硬直した社会になってしまう。」

鎌田慧さん「一人一人が自立して、まっとうな社会にするにはどうすればいいか考えたい。寛容な社会にするために努力しなければいけない」

とても充実したトークイベントだった。全員のファンになった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?