八丁堀小町おさきの事件帳

「ながもちの役者」

3、死体の正体

源太郎と拓磨は、あらためて、ながもちの中の死体を調べてみた。
男のふところには、金のくさりと十両
(今の六十万円ぐらい)もの金があった。
背中から、刃物でひとつきされ、胸まで血がひろがっていた。
「物取りとは考えにくいですね。金は盗まれていないのだから。それに坂野様、あの雪之助とやらが殺したようにも思えませんが」
拓磨がそこまで言った時、部屋のすみで、雪之助と美和と一緒にいたおさきが、ながもちのそばに寄ってきた。
「父上、こんなものが落ちていました」
おさきの小さな手のひらには、いつの間に拾ったのかさいころがのっていた。
「このさいころ、なんだかおかしいわ。
片方だけ、やけに重くなっています」
おさきは、持っていたさいころを、父に手わたした。
「いかさまばくち、か……」
源太郎と拓磨は、顔を見合わせた。
「いかさまばくちって?」
おさきが、たずねた。
「さいころの目が奇数が出るか、偶数が出るかに金をかける。このさいころには、決まった数字がよく出るように細工をしてある。つまり、金をかける者をだまそうとして作られたものだ。何も知らずに、金をかけた者は、損をしてばかり……。それが、いかさまばくちじゃ。
雪之助、おまえは、いかさまばくちと関わりがあるのか?」
源太郎が、するどい声をかけると、雪之助は、首を何度も振った。
「とんでもございません。私はばくちなどしたことはありません! ましてや、いかさまなど」
「とにかく」
拓磨は、源太郎にささやいた、
「死んだ男はかなりの金を持ち、ばくちと関わりのある者と思われます。まず、
後藤という呉服屋に行けば、何かわかるかもしれません」
(続く)
#探偵小説#時代小説#子ども向け

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

自然と歴史の勉強につかわせていただきます。決して、飲み代宴会代にはいたしません byお天気屋&おさき

“スキ”ありがとう💓💞💗

八丁堀小町おさきの事件帳

小中学生向け時代小説!江戸時代、八丁堀に住む、同心の娘“おさき”の名推理を描く。「黒い金魚」のみ偕成社より 書籍化、出版されています。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。