八丁堀小町おさきの事件帳

「ながもちの役者」

4、番頭の伊造
(ばんとうのいぞう)

「な、ながもちの中に人が! そんな」
呉服屋・後藤の主人は、たずねてきた
木村拓磨の話を聞いて、あわてふためいていた。
そこへ店の奥から声がして、男が一人、表に出てきた。
「だんな様、大奥の荷は……」
男は、十手(捕り物道具)を腰に差した
拓磨の姿を見ると、急に口をつぐんで、
顔色を変えた。
「ああ、お役人様。これは番頭(店の使用人の頭)の伊造で……」
そう言うと、主人と伊造は、拓磨に聞こえないように、ひそひそ話をした。
あらためて、主人が拓磨に言った。
「あとは、この伊造におたずねください。私は、他に用がありますので」
主人が店の奥へ去ると、拓磨は、伊造にたずねた。
「役者の市澤雪之助はこの店の客か?」
「ああ、お客様というより、うちのだんな様はお芝居がとても好きで、よく、お芝居を見に行くようでございます」
「この店の者で、ばくちをする者は?」
さいころなどでばくちをする(お金をかける)のは、今も法律で禁じられている。もちろん、江戸時代も同じだ。
「お役人様。私どもは、お城の大奥にも出入りを許されております。それこそ、
まじめに商いひとすじです。そ、それをばくちなどと……」
大奥とは、江戸城の中で、将軍の奥方や女中たちのいる所のこと。伊造が言うように、商人なら誰でも出入りできるわけではない。
しかし、そう言いながらも伊造の目つきは、なぜだか、そわそわと落ち着かないようすだと、拓磨には思われた。
同じ頃、源太郎は、ばくち場のまわりを調べて、死体の男が「加六(かろく)」
というばくち打ちであると突きとめた。
(続く)
#時代小説#子ども向け#探偵小説#推理

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八丁堀小町おさきの事件帳

小中学生向け時代小説!江戸時代、八丁堀に住む、同心の娘“おさき”の名推理を描く。「黒い金魚」のみ偕成社より 書籍化、出版されています。
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