今年のクリスマスは忘れられない1日になりました。
なので覚書。

昼間、ヴィム・ヴェンダースの「パーフェクトデイズ」を見ました。　
とても美しい映画でした。
生まれ育った世界で生きていくことができなかったのであろう主人公が生きる場所は、木漏れ日の小さな光の中にあるようなひっそりした世界でした。
本当の悲しみを知る人は、それを心の奥に沈めて口を閉ざし、削られた心を晒して、慰撫を求めるような事をしません。
そしてそこからそっと目をそらす。
二度と戻ることのない過去に手を伸ばすことの無意味さは、その人がいちばんよくわかっています。
主人公がみつめる先にあるものは、日々日常の中で私たちが溢れ落としてしまっているものでした。
そうやって私達は、小さな幸せの粒を失くして生きているのだなと思いました。
見終わった後、空の青さがことのほか眩しく感じられました。

夜、毎年恒例の吉田美奈子さんのクリスマスライブ　冬の柊に向かいました。。
ライブ会場に向かう道すがら、このnoteに書いた一連の事をライブ友に話したら、腹をかかえて大笑いされ、「すごくいい話だと思ったら、自分からそういうオチをつけるなんて、やらかしたねぇ」と言われました。
やらかしたどころの話じゃないです。穴があったらはいりたい。
とはいえ、まぁ、今年もCHRISTMAS TREEは歌わないだろうねとライブ友と言い合っていました。
場内、開演前に子供のコーラスで「CHRISTMAS TREE」が流れていたので、これでよしとしますと言っておりました。

が。

二曲目でいきなり美奈子さん、歌ったんですよ。
「CHRISTMAS TREE」を。
何の予告もなく。
瞬間、無茶苦茶動揺しまして。
大泣きしました。
なんというか、もうね、いろんな想いが怒涛の如く押し寄せてきまして、ですね。

ライブ、素晴らしかったでした。
余韻にひたりまくって駅に向かう途中、ライブ友が突然真剣な顔で言いました。
「あの『CHRISTMAS TREE』、泉さんのために歌ってくれたんだよ」
えー、まさかぁ。そんな事、あるわけないって。たまたまだよ。
本当に本気でそう思っていたのでそう言ったら、また言われました。
「あのタイミングでいきなり、何も言わずに歌って終わったのは、流れ的にはちょっと違和感がある。だから、泉さんに聞いてもらおうっていう美奈子さんの気持ち、あったと思う」
駅の入り口前で私、ガチで呆然としました。
そんな事ある？　でも言われてみれば、そうかもしれない。
ぐるんぐるんしてたら、ライブ友が言いました。
「それが真実かどうかは我々にはわからない。だったらそういうふうに思っていてもいいんじゃないかな」

電車でひとりになって、iPhoneにはいっている「CHRISTMAS TREE」を聞きました。
そんでもって、電車の中でまた泣きました。
涙が止まらなくなっちゃって、地元の駅までずっと泣いてました。
まわりの人たちには、クリスマス前に男にふられたのか？　とか思われてたかもしれません。
どーでもいいです。もう、周囲の目とかマジどーでもよかったです。

実は今年の夏の終わり、５０％の確率で死に至る病の可能性があると医師から告げられました。
聞いた瞬間、マジか！と思いましたが、あんまりショックじゃなくて、わりと大変な人生だったんで、このあたりで終了するのはむしろいい事かもと思って冷静に受け止めました＞看護師さんの方が動揺していた
思い残す事もとくにないし（一応、どうしても本にしたかった物語があったんですが、原稿はあげて編集さんに送っていたので、個人的にはもういいやになってた）、いろんな人に迷惑かけるのは悪いから、エンディングノート用意しておくかとか考えてました。
一応セカンドオピニオンで別に医者にも行き、検査となってそのまま手術しまして、結果としては、全然死ぬ予定なかったというオチ。
なんだ、死なないのか。と思いましたが、逆に、そっか、もうちょっと生きろって事なんだなって思いました。
って事は、まだまだこの大変な人生が続いていくのかぁ……って、実はちょっとやなだって思ってた。
それが１１月のこと。

その直後にまた、「CHRISTMAS TREE」聞いちゃったわけですよ。
初めてライブで聞いた時も私、死の淵に立っていて、本当に危ない状態でした。
でも美奈子さんの「CHRISTMAS TREE」を聞きながら、本当に心の底から、「この歌聞けてよかった。生きていればまた、美奈子さんの歌が聞けるんだ。だからこの歌を聞くためにがんばって生きよう」って思ったんですよね。
今回、「そっか、死ぬかもしれないのか」ってさらっと受け入れちゃってたけど、そこでまた「CHRISTMAS TREE」聞いちゃって、もうね、なんといいますかね。
すみません。神様がもういいからこっち来なさいって言ってくるその日まで、私、がんばって生きます。

本日、一か月に一度通っているお医者さんのところに行ってきました。
長年のかかりつけの先生で、何から何まで私のこと、よくご存じの方です＞ちなみに５０％死ぬって言った医師とは別の人です
今回の吉田美奈子さんのライブの話したら、「その歌聞きたい」と言うので、iPhoneにいれてある「CHRISTMAS TREE」を聞いていただきました。
聞きながら、だーだー泣きだした私にティッシュの箱を差し出して先生、「いい歌だね。大変な事たくさんあるけど、そんなふうに、生きててよかったなって思える事、あるよね」って言ってました。

吉田美奈子さん、ライブで「CHRISTMAS TREE」を歌ってくださってありがとうございました。
２０２３年１２月２３日の柊ライブ、一生忘れません。
石井さん、吉野さん、森さん、石井（息子）さんにもどうぞよろしくお伝えください。
次のライブも楽しみにしています。