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模写の風景 画家の心 第30回「ポール・セザンヌ 三人の浴女たち 1879~82年作」

この絵が発表されると会場に来ていた青年マティスは一目で気に入り、当時貧乏だったにもかかわらず新妻に頼み込み購入した。そして晩年になり、この絵から学ぶのもなくなったといって、手放したという。きっと購入したときの何十倍、何百倍もの価値になっていたことだろう。

マティスはこの絵を見た瞬間に全身が震えるような衝撃、これから自分が進むベキ道を、それもとんでもないヒントをこの絵から得たに違いない。

まだまだ何ものでもない画家だったマティスはそのヒントを誰にも知られたくなくて、いてもたってもいられなくて新妻に頼み込み購入した。

ところでマティスはこの絵からいったい何を感じ取ったのだろうか?

画題である三人の浴女はギリシャ時代からのモチーフ。画中の三角形の構図もありふれている。左右にある二本の木は日本画、浮世絵の影響はあるものの本質はいったい何なのだ。

残るは色だ。色使いだ。黄、緑、青などの原色をそのままカンバスに塗り付けている。そう、マティスはこの絵から後に言われるポスト印象派、「フォービズム(野獣派)」を感じ取ったのだ。

マティスは昔から描いていた画題を何度も何度も繰り返し描いている。そして徐々にマティスのフォービズムが完成へと進む。
それは1909年「ダンスI」につながっていく。マティスは40歳になっていた。その発端が、セザンヌの「三人の浴女たち」なのだ。


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