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二匹の猫と楽しい毎日ー5(子猫との毎日は、喜びであり闘いでもあった)

1.そらが来てから毎日のスケジュールが変わった。
 朝ゆっくりと寝ていたのが、そらの泣き声で起こされる。
 時には人の顔を引っかくので目が覚める・・・といっても、爪は柔らかい 
 ので、カユイだけだが。

 そして朝ごはんの用意。
 妻は自分の朝食の用意をしているので、猫の朝ごはんは僕の仕事にされて  
 しまった。
 更に猫の水やりとトイレ掃除も自分がさせられた。

2.朝出かけるとき、妻が猫の手を挙げて「バイバイ」をするようになった。

いってらっしゃいの合図


 
あまりに可愛いので、猫に「チュー」をしようとしたら、その小さな爪 
 で、僕の唇をひっかいた。
 少し痛いが・・・なんかとてもうれしい!

チュー

3.仕事を終え、退社するのも早くなった。
 退社時間になると、嬉しそうな顔をして、早足で会社を出るので、
 部下から「子供ができたのですか」とか「愛人でもできたのです 
 か」と冷やかされる。 
 
 確かに子供はできたのだが・・・ちょっと違う。
 電車を降りると足取りも軽くなる。
 新婚のときでもこんなことはなかった。

 妻にも「いつも仕事で遅くなるって言ってたのに帰ろうと思えば早く帰れ 
 るじゃない」と文句を言われた。

 それでも気になってしょうがないのだ。
 以前、部下が子供が出来たと言って退社時間になるとすぐに帰ろうとする
 ので呆れたことがあったが、その気持ちは・・・今はよくわかる。

 <たかが、子猫一匹で>と思うのだが、結婚して10年が過ぎ、子供をあ 
 きらめかけていたとき、代わりにやってきた子猫がこんな気持ちにさせて
 くれるとは全く想像できなかった。

4.そんな幸せな毎日が1ケ月続いた。
  子猫の成長は早い。
  我が家に来た時は700gだったのが、すでに1㎏になっていた。
  食べ物もミルクからウェットフードに変わったので、小さなスプーンで
  食べさせようとした。

         しかしスプーンを口元にもっていっても口を開かない。
  思わず、「あ~ん」といって自分の口を開けた。
  
確か、母が子供のころそうやって食べさせて記憶がある。

 「何しているのよ」
 妻が僕をみて笑った。

 「そういうときは、こうするのよ」
 妻はエサを指につけ<そら>の唇や鼻先に擦り付けた。
 
 <そら>はそれをペロペロと嘗めだした。
 それから妻が目の前に置いたエサ入れに顔を突っ込んだ。

 <そら>も大きくなり、手足もしっかりしてくると、あちらこちらを走り 
 回るようになった。

  あるとき、妻がベランダから<そら>を手すりに乗せて、一緒に「バイ
 バイ」をしていたところ、
 

 <そら>が突然、手すりから滑り落ちた。

 


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