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ノートを書くのをやめた。

ノートを書くのをやめた。

思ったことをノートにとにかく書く癖があって、
9月以降ずっと悩んでた進路のことも、ノート1冊びっしり費やすくらい書いてた。

気づけばもう12月も終わる。
4ヵ月ノートを書き続けてようやく気づいたことがある。

「書いてても何も変わらねぇ」

ってことだ。

笑っちゃう。ほんとあっけない。

ふとページをめくり読み返してみたのがきっかけだった。
9月に書いていたことと、全く同じことを私は12月でも黙々と書いてた。
ゾッとした。

“どんなふうに生きたいのか・働きたいのか”
     “心のわくわくをちゃんと聞くんだ”
“なるべく早く実力をつけたい”
     “新しいことを学ぶのがめちゃ好き”
 “挑戦しつづける”

こんなにかっこいい言葉たちを、わたしはたくさんたくさんノートに並べてた。
頭の中だけの、このかっこいい言葉を、私はノートに並べて、そのかっこよさに、自分で満足して、頭の中だけのかっこよさを、自分のかっこよさだと思い込んで安心してた。

どれだけ頑張ってノートにかじりついたって、現実は何も変わらない。
ただ、文字でいっぱいになって、少し重さを増したページだけがそこにあるだけだ。
私は何も新しいことを学んでないし、挑戦もしていなかった。

「考えてても何も始まらないよ」
「行動するのが大事だよ」

そんなこと、超当たり前じゃん!って思ってた。
なのに、わたしは自分がそんな状態にいるなんて、気づいてなかった。
悩むことは、誰にも何も言われず、好きなようにできるから、最高の暇つぶしだった。
4ヶ月かけてずっと暇つぶしてたら、プライドだけが高くなって、目の前にある進路では満足できなくなってた。
頭の中だけで生きて、未来ばっかりを考えて、「今」を浪費した。
脳内でブツブツいうことは、精神をすり減らすのに、そのすり減らしで「今日は頑張ったなぁ」って思えちゃうから怖い。

動き出さなきゃ、変わらない。
何も、わからない。
毎日ノートに向き合うのはもうやめる。
なんでもいいから自分で足を動かす、手を動かす、
誰かに考えを伝えてみる。

この結論に至るまで私は4ヶ月もかかってしまった。
時間もお金もつかってた。

悩むことはクセになる。
立ち止まり続けると、一歩踏み出せなくなる。
私はどんどん殻に閉じこもって、その殻もぶ厚く、硬くなっていった。

卒業を間近に、進路に悩んでいる人も多いかもしれない。
授業選択や、短期のプロジェクト選び、そのくらい簡単に、気軽に選べたら、どれだけ楽だろう。

卒業後の第一歩目が、突然、「キャリア」として扱われる重さに、私はずっと怯えていた。

もっと自分なら他の選択肢がある。
もっとすてきな環境がある。

そう自分に言い聞かせて3ヵ月が経った。
私が学んだことは、ひとつだけ。

動かないと何もわからない。

ほんとに、それだけだ。

働いてもいないから、わたしは実際どれほどの重さが、最初の一歩にあるのかわからない。
もしかしたら、とてつもなく重要なのかもしれないし、
大したことないのかもしれない。

立ち止まっていったん休むことはとっても大切だと思う。
だけど、休むってすごく難しかった。
わたしは大学を卒業して、バイトを辞めて、家にずっといた時期があった。
そんなわたしは、はたからみたら超休んでたと思う。
だけど、心はずっと悩んで、前に進めないことに苦しんで、どんどんすり減らしてたって今ならわかる。
そのあと胃腸炎になって、5日間くらい熱で動けないときがあった。
わたしは、その時はじめて、心も身体も休めた。「胃腸炎」っていう建前のおかげで、はじめて気負いなく、たっぷり休めた。

この4か月の間、私は人生で初めて「死のうかな」って思ったことがある。
お風呂の中で、このままお湯に顔をうずめれば、全部終わるんだなって思った。

はたからみたら、「そんなことで死ぬとかいうなよ」って思うかもしれない。
でも、本当に、死ぬことってすぐ近くにあって、人は案外簡単にすいこまれていくんだとも知った。

考えること、悩むこと。
きっと大切だし、きっと必要なこと。

だけど、心がすり減って、死を感じて、
頭の中の言葉だけで自分を守って気づいたのは、
動かないと何もわからないってことだった。

ノートを書くのをやめた。

最近は代わりに、受話器をにぎってる。

わたしはとりあえず、働いてみることにした。
とあるベンチャー企業でインターンを始めた。
問い合わせの電話対応、相談メールへの返信が私の今の業務内容だ。
なんだかとても簡単そう。
でも実際は、電話の音にびくびくし、受話器を持つ手は湿る。
PC作業に肩はかちこちになるし、メール特有の丁寧な言い回しに戸惑う。

私は、全然大した人間じゃないことを知った。
”早く実力をつけたい” もなにも、仕事の基礎すらままならないじゃないか。

だけどそれは、この4か月ノートに必死に向かい、心をすり減らしても、死を感じても、それでも気づけなかったことで、
1週間働いてみたら、あっさり学べたことだった。

またきっと、ノートを書くだろう。
理想の言葉で固めた、かっこいい自分はもうあきたよ。
現実にぶつかった、かっこ悪い自分を、ちゃんと見つめたい。


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