ユニゾンの音楽は鳴り続ける。

7月24日、UNISON SQUARE GARDENの武道館ライブに行ってきた。
インディーズ時代から応援していたバンドが武道館に立つという経験は初めてではないけれど、今一番好きなバンドは?と聞かれたら、間違いなくUNISON SQUARE GARDENだと答えるであろうくらいに、今一番好きという状態で武道館ライブが観られる、ということに特別な嬉しさがあった。
会場に着いたのは開演の数十分前くらいだったけど、その時点でも開演までにとても買い終わらないであろうくらいに物販待ちの列ができていた。
今回のグッズのプロデュースはドラムの鈴木さんが担当していたらしいけど『素人がいくら頭使っても、プロの人には追いつけない。でも、いくらプロな人でも、UNISON SQUARE GARDENにはなれない。10年の歴史をグッズに落とし込めるのは僕だけ。ステキなグッズを手にした時の喜び、好きなバンドロゴが入っているグッズを身につけた時の無敵感、色んなものを届けたくて』と語っていた鈴木さんの想いが間違いなくファンに伝わってる感じがした。

ライブはいつも通りの入場BGMから、いつものように始まった。『誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと』から始まったのはちょっと意外とも思ったけど、『カップリング曲はそのリリースツアー以外でやりたくない、でも今回DUGOUT ACCIDENTに収録されたことでその縛りが解禁される』と嬉しそうだった田淵さんの気持ちもあったのかもしれない。
斎藤さんの『今日は長いよー』という一言のとおり、もしかして全曲やる気なんじゃないかというほど新旧織りまざった曲たちを休みなくどんどん歌っていく。
『シュガーソングとビターステップ』は世間的には大ヒットした曲になったけど、ほとんどのお客さんがそのリリース前に今回のチケットを取ってただろうし、ユニゾンファン的にはもっと思い入れの深い曲があるだろうからか、おそらくこれから出るフェスや他のライブでの反応とは少し違う、『待ってました!』ではない、『おかえり』とお出迎えするような雰囲気があったのも良いなって思った。もちろん生で聴けて嬉しいというのはあったし。
『天国と地獄』では炎が吹き出る演出もあって武道館という場所のスペシャル感やダイナミックさを感じられた。
バックスタンド席も開放して後ろにもお客さんが入ってるのを見て『後ろ近いね!三十路3人の後頭部はどうですか?もしかしたら20周年のときは誰かが帽子をかぶってるかもしれないけどその時は察してください』という話が出たのは今回の武道館ならではだなぁと。
そこから斎藤さんが武道館ライブの前日に引っ越しをしたという話。理由としてはただ単純に部屋の契約満了の日が近かったから違約金を払うのが嫌だったという理由だったけど、『部屋を借りた2年前は武道館やるなんて思ってなかった』という気持ちだったり、『新しい部屋も決めていたけど10周年の企画で忙しくてなかなか引っ越しする時間がなくて、それでちょうど武道館の前日が休みで、そこで気づいたんですけど、この日に引っ越しをすれば、その新居から初めて出かける場所が武道館になるって気づいたんです。だから僕ね、今初めてのお出かけ中なんですよ』というのは良い話だった。
そういう話からの『プログラム continued』。今回の武道館というか10周年の記念の意味も込めて作られた楽曲。この曲の『何気ない歌で何気ない記念日をお祝いしたら ああ 星も降るから 派手なやつを歌っていこう』という歌詞をなぞるかのように、そこから『光のどけき春の日に』『クローバー』『harmonized finale』と続いていったのはただただ感動しかなかった(このあと桜のあとや徹頭徹尾といった派手なやつが続いていく)。
せっかくだから他のメンバーにも喋ってもらおうと斎藤さんから話を振られた鈴木さんがしばらく黙っていて『話聞いてた?』とツッこまれながら、引っ越しみたいな面白い話はないなぁと言いつつ、『自分も何か特別なことをしたいなと思って、家から武道館までをタクシーでドアtoドアで移動をしてみたんですよ。ハイヤーと値段がそんなに変わらなかったから、ハイヤーにしようか悩んだけど、武道館に着いたら物販で並んでいる人にすごい見られて、もしハイヤーなんかで来ようものなら、あいつドラム叩いてるだけなくせにハイヤー移動かよと思われてたかと思うと、タクシーにしてよかったなと』と庶民的な話をしていて、先日武道館ライブのときに赤じゅうたんにリムジンで乗り付けた[Alexandros]さんとのギャップを思って笑ってしまった。
そのあとで『自分はユニゾンに救われて今までやってきた』という良い話をして鈴木さんが感謝を述べたあとなのに、次に話を振られた田淵さんが『あのね、おみくじを引いたわけ(唐突)』といつものすっとんきょうなトーンで話し始めたのも面白かった。
そのおみくじには12か月ぶんの運勢が書かれていて、『今年なかなか良いじゃんと思って見ていってたら、7月だけ何て書いてあったと思います?「言葉に注意」だってさ!やかましいわ!そんなのね、神様に言われなくても身をもって痛感しておりますから!僕が皆さんにアドバイスできることがあるなら「言葉に気をつけよう」ってことです』とオチのついた田淵さんの話に『落語みたいだね』と感心する斎藤さん。
『こんなにバラバラな3人がよくバンドを続けてこられたなって思うけど、バラバラな3人だったからこそ、UNISON SQUARE GARDENという場所に3人のアイデアを持ち寄れたんだと思う。3人でカッコいい音楽を作り続けることだけやってきたし、3人で音楽をやり続けているかぎり最高の音楽を鳴らし続けていけると思う』と改めて納得する斎藤さん。
ここから『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』や『シャンデリア・ワルツ』と続いていくけど、これが先述の『シュガーソングとビターステップ』よりも待ってました!感があって大いに盛り上がっていたのが、いいユニゾンファンが集まっている感じがした。
そのあとはライブではおなじみの鈴木さんのドラムソロコーナーだけど、さすが武道館らしく迫り上がるセットでいつも以上に気持ち良さそうに叩いてた。
アンコールで出てきて『機材を片付けに出てきただけですよ』とボケるあたりまだまだ余裕あるし楽しんでるなって感じがしたけど、田淵さんが『武道館という場所にはやっぱり思い入れがあって、いつかこの場所でライブができることがあるなら言おうと思っていた言葉を5年前から考えてました!』ダサいねー!ボーカルでもないのに!とツッこまれながら『でもやっぱり10年で言っていい言葉ではないと思ったので今日は言わずに帰ります』と言ったあと、
『君の好きなロックバンドは、万人に愛されるような曲や求められるような曲は書いてこなかったし、これからも書かないと思う。だから親とか人に薦めてくれるのはありがたいけどあんまり良い反応はもらえないと思う。それは僕が保証します。でも、君の好きなロックバンドは他の誰が何と言おうと絶対にカッコいいロックバンドです。それも僕が保証します。ついて来いと言うつもりはないので、これからも君は君の好きな音楽を追いかけて、気が向いたときにまたユニゾンのライブに遊びに来てくれたら嬉しい。今日は楽しかったー!』と、とても『言葉に注意』と言われた人とは思えない、言わないままで終わった5年前から考えていたという言葉よりもきっと、今の自分たちにとって何よりも嬉しい言葉を言ってくれて嬉しかった。
武道館でのアンコールで『3 minutes replay』→『kid, I like quartet』の流れをそのままやっちゃうのもユニゾンらしくてカッコいいなぁって思った。
ラストはこれしかないでしょという『フルカラープログラム』。自分がユニゾンを好きになったきっかけだったし今も一番好きな曲であるこの曲で終わったのも幸福感があった。『約10年前から閉ざしていた心が 今、絶妙のタイミング そうしてもう一度 ちょっとだけ世界と仲良くなったあなたは 今、誰より高く 高く飛んだ夕暮れ』という歌詞の歌を10周年の絶妙のタイミングで武道館という場所で歌えてしまうなんて、まさに、完全無欠のロックンロールだった。
最後に斎藤さんが『UNISON SQUARE GARDENの目指しているのは、いっぱい売れることとか大きな会場でやることではないと思ってます。それは結果としてついてくるもので。僕らがなりたいのは、僕らにとって大事な皆さんの、大事なバンドであり続けたいです!』と堂々と宣言して約三時間のライブは終了。
UNISON SQUARE GARDENのライブは一人で観に行って一人で楽しんで、それこそ誰とも喋らなくても、孤独を感じないどころか、一人にならないライブだなって思うんです。
田淵さんはいわゆるライブの一体感というやつが嫌いだと言うし、斎藤さんも君は君に与えられたその場所で自由に楽しんでと言うし、その通りに正直に、好きにライブを楽しんでいるような正直な、バカ正直なファンたちが集まっているから、好き勝手に楽しんでてもそれが『みんなで楽しい』になる。
武道館ライブを終えて思ったのは、UNISON SQUARE GARDENにとっての武道館という場所が、他のバンドやアーティストみたいな『通過点』や『到達点』ではなくて、まさに斎藤さんの言ってた『お出かけして行く場所』だし、だからこそ『何かが変わる』とか『新しく始まる』とかじゃない、『続く』ということの前向きさがユニゾンらしくてユニゾンにしかできない武道館ライブになっていた原動力なんだって思った。
自分は自分の好きな音楽をぶれずに追いかけ続けていけば、ついて行くとかじゃなく、傍に居続けてくれるのがUNISON SQUARE GARDENの音楽だっていう自信になって確信を得られたライブだった。自分は自分の『好き』に胸を張っていればいい。だからこそ出会えたのがUNISON SQUARE GARDENだし、これからも聴き続けていくことになる。
ユニゾン大好き!ありがとう!。これからもよろしくね。

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