佐藤みどり

佐藤みどりです。レスで悩んだ経験を元に私小説を書きました。セックスがないからといって、…

佐藤みどり

佐藤みどりです。レスで悩んだ経験を元に私小説を書きました。セックスがないからといって、愛されていないわけではないし、女性としての魅力がないわけじゃない、そんなことを表現したかったです。読んだ後に、優しい気持ちになれるような作品を書きたいと思っています。

最近の記事

いびつな愛情 最終章 ~愛の形~

 家に帰り、息子の宿題を見て、食事の支度をしました。  洗濯物は干しっぱなしにせず、きちんと取り込み、畳んでタンスにしまいました。  夫が帰ると、目を合わせて、笑顔で「おかえり」と言いました。  次の日は笑顔で「おはよう」と言いました。  彼を見送る時には私からキスをしました。  ここ最近は、これまでにないほど、静かな気持ちで夫と向き合っています。  もう洗濯物が干しっぱなしになることはありません。  ひょっとすると夫はこれまでで一番穏やかな、理想的な結婚生活を送っているのか

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    • いびつな愛情 第22章 ~濡れる文脈~

       夫への愛着や社会への順応を諦めた私は、「やっと解放されたぞ!」そんな清々しい気持ちでセックスをすることにしました。昼間から男女がセックスできるという、とあるバーにたった一人で出かけたのです。

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      • いびつな愛情 第21章 ~過去の過ちに気付く~

         いったん夫との未来を諦めると、私はむしろ、これまでの我慢が逆流するように彼を無性にディスりたい気持ちが溢れてきました。  それは多分、喧嘩したいとか彼を責めたいとかいうものではなくて、私たちはそもそもまったく合ってなかったのではないだろかと感じ始めたからなのです。  実は彼からの手紙を読んだ時に、その真剣な文脈を読んで、私は正直、「ぷぷぷっ」と吹き出していました。  彼の手紙にはこうありました。

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        • いびつな愛情 第20章 ~本当の自分に気付いてしまうこと~

           つまり、もう遅かったのだと思います。  私が夫からの手紙を読んで覚えた喜びよりも、仕事を諦めてでも離婚を延長しようと思った愛情よりも、もう一つ大きな感情がどんどん膨らんでいくのを私は感じていました。

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        いびつな愛情 最終章 ~愛の形~

          いびつな愛情 第19章 ~夫婦の形を再考する~

           この手紙を読んだ後、私は夫に対して、二つの大きな感情が芽生えていることに気付きました。     一つ目は、喜ばしいことで、彼が私に心を開いてくれたことが純粋に嬉しかったです。

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          いびつな愛情 第19章 ~夫婦の形を再考する~

          いびつな愛情 第18章 ~夫からの手紙~

          「最後の手紙を書きます。  ミドリにもらった手紙を読んで、ミドリはもう別れたいのだと思いました。もう決めたのだと思いました。少なくとも、ここからの俺に何かの選択肢があるようには思えませんでした。

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          いびつな愛情 第18章 ~夫からの手紙~

          いびつな愛情 第17章 ~離婚を延期しよう~

           夫の手紙には、私がイラストレーターとして活動するには、周囲の応援を得る必要があるという説教がつらつらと書いてありました。

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          いびつな愛情 第17章 ~離婚を延期しよう~

          いびつな愛情 第16章 ~離婚しましょう~

          「あなたのことが大好きだったけど、私はもうこの思いをやめることにします。  察することをやめたいと思います。

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          いびつな愛情 第16章 ~離婚しましょう~

          いびつな愛情 第15章 ~洗濯物の意味~

           今からちょうど一ヶ月くらい前、その日は休日で、夫は家にいました。私は息子を実家に預け、仕事をしていましたが、夫がテレビを観ていたので、邪魔しないように、どこか場所を移そうかと思っていました。 「この後打ち合わせだから、家を出るね」  私がそう申し出ると、夫は言いました。 「俺が出て行くからいいよ」

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          いびつな愛情 第15章 ~洗濯物の意味~

          いびつな愛情 第14章 ~最後の片思い~

           私は反抗期の夫を受け入れながら、ただ愛するという作戦を「最後の片思い」と名付けました。(この名前には「それでも私はあなたの母ではない」という最後の抵抗もありました。飽くまで私とあなたとは恋愛でつながる関係なのだ、親子愛ではなくて、プラトンの『饗宴』で言及されているエロスで、飽くまでも恋愛の欲求なのだというこだわりがありました。)  それまでに夫が何度かキレている姿を見て、きっと何かあるのだろうと思っていました。セックスしたくない心、洗濯物があるだけで鬼切れする心、私にお金

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          いびつな愛情 第14章 ~最後の片思い~

          いびつな愛情 第13章 ~夫の怒りの行間を読む~

           MYさんと二回会って、行為的には三回しました。それ以降は会いませんでした。

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          いびつな愛情 第13章 ~夫の怒りの行間を読む~

          いびつな愛情 第12章 ~対等なセックスとは~

           MYさんとのセックスが思いのほか良くて、私は逆に罪悪感が芽生えました。実にそれが、私にとっては六年ぶりのセックスだったのです。三十代になってから、夫以外としたことはなかったので忘れていましたが、二十代はこんなに余裕のある営みは一度も経験したことがありませんでした。それらはただ、男性に付き合って、相手の射精を応援するような、そんなスタンスでした。それは別にそう強要されたわけではなくて、私がなんとなくそういうものだと思っていただけのことですが。  でもMYさんとの行為では、ど

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          いびつな愛情 第12章 ~対等なセックスとは~

          いびつな愛情 第11章 ~現実の不貞~

           MYさんとして思ったことは、「セックスって楽しいんだ!」ということでした。セックスってこんな風に楽しいのだということは、初めての発見でした。  ホテルに行ったのも、久しぶりでした。  私は昔から男性に「よく濡れるね」と言われました。自分でもその感覚はわかっていました。頭の中がそういう色になると、濡れていくジワリとした感触が、下着との間に広がるところがありました。それは例えば、授業中とか、電車の中とか、神社とか、冠婚葬祭とか、重要な会議とか、とにかく静かで厳かな雰囲気であれ

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          いびつな愛情 第11章 ~現実の不貞~

          いびつな愛情 第10章 ~夫と手をつなげたこと~

           MYさんと手をつないでから、夫への愛情を確信した私は、意を決して、夫に手紙を出しました。  それはこんな手紙でした。

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          いびつな愛情 第10章 ~夫と手をつなげたこと~

          いびつな愛情 第9章 ~母親の言いなりになる文脈~

           ところで、母親の言いなりというのは、実は私が選んでやっていたことでした。別に母親にマインドコントロールされていたわけではありませんし、マインドコントロールされていたとしても、それは私が、マインドコントロールさせていたのだと思っています。  なぜ私がそんなことを母にさせていたかというと、傷付きたくなかったからです。  私は夫の生き方を、オナニストだと揶揄しましたが、それは私のことでした。私は母親の言いなりになることで、つまり、母親にすべてを決めさせることで、傷付かずに生きてい

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          いびつな愛情 第9章 ~母親の言いなりになる文脈~

          いびつな愛情 第8章 ~母の人生の文脈を読む~

           私の母は、二十五歳で姉を産み、二十七歳で私を産みました。その後に二回妊娠したそうです。そのうち、一度は流産して、次は中絶しました。 「風疹かも知れないって言われたの」  出産経験のある人にはわかると思いますが、妊娠初期で、風疹の検査をします。実は大人になると症状が出なくても、風疹にかかっていることがあるらしく、その場合、母胎は健康なのに、胎児だけ病気になってしまうそうです。 「もしも、風疹にかかっていたら、赤ちゃんの目が見えないかもって言われたの」

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          いびつな愛情 第8章 ~母の人生の文脈を読む~