見出し画像

ホップの困りごとQ&A

■はじめに

ホップを育てているうえで、様々な事が沢山あると思います。植物の姿は、良いことも悪いことも管理した日々の表れです。まずは、植物の日々の姿を観察し、物言わぬ植物からのサインを見逃さない事が、植物を元気に育てる第一歩です。また、ホップの育て方の記事を読んでみて、大きく逸脱している部分がないか、明らかな不足の管理はないか、照らし合わせていただければ植物の求めている事に近づくかと思います。この記事が、植物の健やかな生育のお役に立てれば幸いです。

【花、毬花でお困りの場合】

〇花が咲かない

株が充実出来ない、もしくは出来なかった理由があると考えられます。畑の場合は肥料や有機質分、土壌改良剤の与え方等に原因がある場合があります。鉢植えの場合は、概ね水やりや肥料が足りない、鉢が小さい、脇の芽が沢山伸びすぎた等が原因ですが、様々な管理の面でも上手くいかないと開花までたどり着かない場合があるので、今一度、育て方を見直してみましょう。尚、葉に明確な異常がある場合は、病害虫によって充実出来なかった可能性が高いです。

〇花は咲いたが茶色くなった

主に水不足、ハダニの害が考えられます。開花期に水不足がひどい場合、症状はまず花と枝の先端に出ます。水が不足するのは主に鉢植えの場合ですが、その原因として、そもそも水かけの量が足りてない、根の量に対して鉢が小さい、鉢に植え付けて何年も植え替えてない、根が古くなり水分の吸収力が落ちている等が考えられます。用土の改良や水かけ管理の徹底などが必要となります。また、ハダニ等も病害虫の場合も花が茶変する場合がありますが、それよりも先に葉も異常が出ます。生育時点で葉に異常が確認できたら、適応の薬剤を散布することで、花に害が出ることは防げます。

〇花後、毬花にならない、大きくならない

水、肥料不足が考えられます。ホップの生育の上で、水と肥料を最も必要とする期間の一つが、花から毬花に肥大していく過程の期間です。その期間の水と肥料の管理を見直すのは勿論、他の期間でも株全体の肥料や水が不足が起こらない様、育て方の肥料、水やりの項を改めて確認し、生育期間トータルでの管理計画、見直しをしてみましょう。

〇収穫した毬花は自然乾燥ではダメなの?

毬花は収穫後放任していると数日で酸化し茶変してしまいます。茶変した毬花は香りも落ち、見た目もあまりよくありません。何かに利用したい場合は、温風で乾燥するか、もしくは直接冷凍庫に入れることをお勧めします。

【葉の様子でお困りの場合】

●葉に斑点がある

サビ病や黒点病、ベト病等病気、もしくはハダニや飛来害虫の食害、および肥料不足の可能性があります。数個見受けられる場合は、初期症状なので、斑点の葉は取り除き、念のため殺ダニ剤、及び殺菌剤を葉の裏を中心に株全体へ散布します。また、肥料不足、生育不良等から下葉を中心に若干の斑点を生じる場合もありますが、この場合は管理を改善すれば問題ありません。

●葉の色が薄い

水及び肥料不足が考えられます。今一度育て方を確認し、水やりや肥料の与え方等を改善します。品種によって、葉の色が元々薄い個性のモノもあります。葉の色が薄くても枝が元気に伸びている場合は、この個性によるものです。(かいこがね、ニューポート等)

●葉が小さい

根の周りの環境の問題が考えられます。鉢植えで考えられるのは鉢が小さく根が窮屈であることで、植え替えや株分けなどで改善されます。また、植え付けに使った土があまりよくなく、新しい根が伸ばせない為、葉が小さくなるということもありますので、鉢から株を抜いてみて、根の周りを確認してみましょう。また、開花期より後に伸びたツルの先端の方の葉も小さいですが、その場合は植物としての生理現象で特に問題はありません。

●葉の表面が白く粉の様になっている

うどんこ病によるものです。適応の薬剤を散布しましょう。

●下の葉が茶色、黄色くなる、落ちる

水と肥料不足、根の周り環境の問題が考えられます。生育期に水や肥料が不足すると、先端の若い部分を生かす為、下の古い葉を落とし始めます。水不足、肥料不足は様々な管理面での問題の表れですので、今一度育て方を確認して、不良な点は改善します。

●葉に穴が開いたり、削れた様な跡がある

飛来害虫、毛虫などが原因です。穴をあけるのは概ねコガネムシ等です。毛虫は葉の他に毬花も食害するので相応の薬剤を散布し、被害が広がらない様にします。

●葉が萎れている

ツルに何らかの原因がある可能性が高いです。ツルの中で萎れている葉、萎れていない葉を確認し、その境の箇所に原因があると思います。概ね、ツルが折れた、ツルを誤って切った、アズキノメイガの幼虫の食害が考えられます。
折れた場合は、当ページのツルが折れた場合の項を、黒い穴がある場合は、アズキノメイガの対処をご参照ください。

・これはツル下げの時に茎を折ってしまい、数日後の様子。なかなかに悔しい。

画像2

【ツル、枝の様子でお困りの場合】

◎ツルがあまり伸びない

様々な要因が考えられます。葉を確認し異常がある場合は病害虫が原因の可能性があります。鉢等から株を抜き、根に異常がある場合は、土に問題がある可能性があります。どちらも正常の場合は、ツル上げの時期が遅かった、水やりや肥料、鉢が小さいなど管理面に問題がある可能性があります。どれもすべて完璧である場合は、ベト病の可能性があります。改めて育て方を確認していただき、不足な点を見つけ、改善してく方法が一番の近道です。

◎去年はツルが沢山伸びたが、今年は伸びが悪い

鉢植えの場合は根詰まりの可能性があります。鉢植えの場合、大きな鉢に植えてもあっという間に根詰まりを起こしてしまうことが多いです。また、前年が元気に伸びたら伸びだだけ、同時に株も大いに充実しているので、管理の良かった証拠とも言えます。春先の株こしらえの際には、あまり大きな株のままで植え戻さない様に、コントロールするとよいでしょう。

◎ツルが折れた

折れたことによりすべてが枯れる、という訳ではなく、主幹から脇の芽がどんどん出てくるようになります。その中から高い位置で元気に伸びる脇の芽を代わりの主幹として育てると良いです。ただし、開花まで成長してくれるかは折れた時期や生育しだいとなります。

画像1

◎ツルが沢山出すぎる

ホップは土の中に地下茎という茎を這わせ、広範囲に芽を出したい植物です。ツルが沢山出るのは本来の強さの表れで、ホップなりの工夫でもあります。ですが、そのまま放任しておくと、養分が分散しすぎてしまい、生育の緩慢、花が咲かない、葉に異常が出るなどの弊害が出てきます。畑の場合は3~4本ほど、鉢植えの場合は2~3本までにとどめ、それ以上のツルは地際から都度刈り取ります。また、ツルの節から出る脇の芽もある程度の高さまでは剪定、及び摘心すると良いです。詳しくは株こしらえ脇芽の切り落としを確認してください

◎ツルの先が枯れた

鉢植えで多い症状で、肥料不足や水不足など管理面での原因、日差しが強い、気温の急激な変化等の気候面の原因と、アズキノメイガの食害が考えられます。鉢植え栽培のコツを確認して、環境を整えます。また、強い風や遅霜や遅い雪やヒョウなどの異常気象などで傷んでしまう場合があります。その後は上記の「ツルが折れた」と同じような管理をすると良いです。アズキノメイガの食害は、茎の途中に幼虫の糞が散見できるので、糞がある場合はアズキノメイガへの対応を行います。

・春に急激に暑くなり、そして氷点下近くまで寒くなった日の数日後のツル先。寒風も相まって脇芽も主幹も全てこの様な感じに

画像3

◎ツルがうまく絡んでくれない

ツル上げが遅れたこと、用意した紐に原因が考えられます。ツル植物は何かに絡んで上へ上へと伸びたい、伸びる事が必要な植物です。ツル上げが遅れると、脇の芽の伸ばしてでも上へ伸びる生育に変更され、主幹の勢いが落ちます。勢いの落ちた主幹は元気に伸びない為、うまく絡めなくなってしまいます。また、紐があまりにツルツルで絡めない場合があります。麻ひも等絡みやすい紐を用意しましょう。

【根の様子でお困りの場合】

△根が黒ずんでいた、ドロッとして腐っている様だ

土が合わない、水の抜けに問題がある可能性があります。黒ずんだ部分、腐っている部分を取り除き、新しい土を使って植え替えます。また、畑の場合は水たまりになり水がいつまでの溜まっているような場所、鉢の場合は鉢底に皿を置いたり、鉢底に水が溜まる様なタイプの鉢の場合は、土ではなく水がうまく抜けない事による根腐れの可能性が高いです。畑の場合は暗渠等で排水の改善、鉢の場合は皿などに水をためない様な改善が必要です。尚、中心部の根の塊の部分が腐っていなければ復活の可能性は高いです。

△根がすごい量でどうしたら良いかわからない

育て方が間違いなかったという証拠です。素晴らしい事です。まずは、育て方の株こしらえの項をご参照ください。根をそのままにしておいて良いことはあまりありません。毎年、株こしらえを行い、根がすごい量にならない様コントロールをしてください。

△根が成長しない、動きがわるい

概ね、鉢植えで多い症状です。数本の強い主根を伸ばし成長をする植物なので、強い主根が伸びれないと根全体の成長も緩慢になる様です。改善としては出来るだけ大きく深い鉢に植えるか、庭や畑に植えるしかないと思います。

【株全体の様子でお困りの場合】

▲全体の葉が一斉に茶変、もしくは萎れ、その後戻らない

全ての葉に症状が出た場合は、根に問題があった可能性が高いです。上のツル、葉をある程度切って整理し、鉢から株を抜いてみて根の様子を確認してみてください。根が黒く腐ったような感じであれば、土、及び排水に問題があったと思われます。対処は同ページにあります「根の様子でお困りの場合」の項をご参照ください。また、根は元気そうだが地中で切れている、土の中に幼虫の様な虫がいる場合はネキリムシ等の害虫による被害です。適応の薬剤を散布するか、新しい土に代えて植え替えます。

▲ツルの途中から突然葉茎が元気がなくなる、枯れてくる

ツルが折れたか、アズキノメイガの食害の可能性があります。ツルを確認し、糞がある様であればアズキノメイガに対する対処を行い、折れている場合は剪定を行いツル折れの対処を行います

▲元気であったが、突然として全体の枝の伸びが悪くなった

様々な原因が考えられますが、必要な時期に必要な管理には至らなかった可能性が概ねの理由かと思われます。ホップには水や肥料が多量に欲しい時期があります。(その時期は育て方の水かけ、肥料の項をご参照ください)計画通りの水やりや肥料を与える様にしましょう。また、開花期以降は、花に力が回るのでツル自体の伸びが緩慢になります。この場合は生理現象ですので問題はありません。

▲苗を植え付けたのち、枝葉の動きが全くない、または枯れた

ひとまずは、様子をみてみてください。植物は根を伸ばして、それから枝を伸ばしていきます。今は大きな場所に移されて喜んで根を伸ばしている段階かと思うので、様子を見てみていただければ幸いです。また、植え付けて数週間経っても伸びない、または枯れていった場合は、土に問題がある可能性があります。根の様子を観察して、黒かったり腐っている、または全く伸びていない場合は、新しい土に代えて植え替えます。マルチで地温を上げた方がいい、というお話がある様ですが、あまりお勧めしません。

【育てる環境や方法でお困りの場合】

▽暑い地域だけど育つの?

育ちます。様々な地域の方々に苗をご購入頂き、育てていただいておりますが、概ね元気に育っている様です。また、2018年の猛暑(数年ぶりに日本の最高気温が更新された年)でも、関東、関西、それ以西の地域でも毬花まで到達しておりました。気温は生育にも関係ありますが、概ね収穫量の多少に関わる様で、暑い地域は寒い地域に比べ収量が少なくなるようです。

▽ものすごく寒い地域だけど育つの?

育ちます。というかホップの得意な気候です。活かさない手はありません。違いは収量で、寒い地域の方が収量が多い傾向にあります。ホップの栽培は概ね北緯40度線以北に集中しており、世界的にも寒い地域で栽培されている植物です。

▽日光が当たらない、もしくは数時間しか当たらない

育てることは可能です。日が当たらない事によるデメリットは、ツルが軟弱伸びる事からくるツル管理の繁忙、花の数が少なくなるといった点です。
逆にメリットとしては、乾きづらいので水不足の心配が少ない、小さめの鉢でもツルを大きく伸ばすことが出来るといった点です。ベランダ等の狭い場所で育てたい場合、水管理が不安だという場合は、あえて日光が当たらない半日陰で育てるのも1つの方法かと思います。

▽大きな鉢は置けないので小さな鉢で育てたい

基本的にはオススメしません。小さい鉢だと鉢に合わせてツルもあまり伸びず、花が咲かない場合が多いです。どうしても大きな鉢が置けない場合は、口径が狭くとも出来るだけ深い鉢で、かつ日陰育てると、花まで咲く可能性が幾分高まると思います。

▽多品種を育てたい

メリットとしては、意外と明確に香りが違ったり、生育の様子、その環境にどの品種が合うのか一目瞭然と、やってみなくては分からない様子がありありと分かり、そのメリットは何物にも代えがたい財産になると思います。
デメリットとしては、生育が違う為、管理が大変、特に薬剤散布や収穫などのタイミングの見極めが大変です。また、地下茎で品種混雑しやすいので、そういった余計な管理も出てきます。
デメリットを上回るほどのメリットもありますが、植えたが最後、移動や難しい所も判断を難解にさせています。
スタートは数品種の育てやすい品種を軸に、うまく行ったら少量ずつテストで増やす、という形をお勧めします。

▽忙しくて頻繁に水かけ出来ないけど大丈夫?

大丈夫ではありません。水管理に不安がある場合は、畑か庭に植えてください。鉢の場合で水管理が出来ないという場合は、水管理が出来るタイマー式の機械を買うか、ホップを育てる事自体を諦め、自分の生活サイクルの水管理で育てれる他の植物をお探しいただいた方が良いかと思います。

▽なるべく伸びない様にしたい

ホップは伸びる事が必要な植物なので、難しいです。あまり伸びられては困る場合は、育て方のツル下げの項をご確認頂き、頻繁なツル下げを行うと低く仕立てることは出来ると思います。

▽花はいらないからとにかく茂らせてグリーンカーテンにしたい

枝の剪定を繰り返すと、枝分かれが促進されて、1株でも沢山の枝葉を茂らせることが出来ます。

【その他の困りごと】

▼毬花はどのぐらい採れるの?

生育環境や品種で大きく左右されるので一概には言えません。
私が育てた一例として挙げるとすると、
●品種カスケードの状況違いの収量
地植え数年株、管理は悪く放置 1株で500gぐらい
・鉢植え18号数年株 管理は割としっかり 1株で200g無いぐらい
・鉢植え8号1年株 管理きっちり 1株で10個も無いぐらい
知人の農家さんの所だと、1株1kgぐらい採れるという方もいますし、お客さんの中では数年経っても未だ収穫できてないという方もいます。
管理が良い方が収量は多いですし、鉢よりは庭、畑の方が圧倒的に収量は多いです。
品種的にはアメリカ種、特に育てやすいカスケードやセンテニアル等は収量は多いですし、ガッチリ育つ傾向のマグナム、チヌーク等は収量は少なめです。ヨーロッパ種はより収量が少くなる傾向がある様です。
因みに、乾燥すると生のホップの概ね3分の1ぐらいまで重さは減ります。

■最後に

ご質問やご不明な点等ありましたら、お気軽にコメント欄などへご連絡ください。

サポートは紹介した植物の苗の生産維持拡充、記事の充実に利用いたします。どうぞよろしくお願いいたします。