小さな帽子屋さんで自分の「好き」を知るのです。
世にも奇妙な物件ものがたりで、少し怖い思いをしたせいで、それからは、しばらくおやすみ。
そんなことがあると、物件探しもカフェをやるのもやーめた!になりますが、とある町に行った時のはなしです。
片隅の町で小さな小さな雑貨販売&喫茶店をしております店主のpekoriです、こんにちわ。2019年になり「わたしが店をはじめたわけ」書いております。
友達の住むその町は、たくさんのいろいろな小さな店が並び商店街が活気のある、とてもにぎやかな町で、わたしも好きな町。
こんなとこでやりたいなあ。
なんて思っていて、友達に町を案内されながらうろうろしていました。
駅のすぐ裏のその細い路地、店はあまりない道の一階の奥まったとこに入り口が緑色の小さな店らしきものがありました。
ツタが絡まる入り口には椅子や植物の鉢。
フランス語の書いてある小さな看板が下がり、なんかかわいい。
でもここ何屋なんだろ?
店じゃないのかな?
そんなふうに思っていると、緑色のガラス扉の奥から、女性が手招きしています。
入っていいのかな?
そう思いながらおそるおそる中に入りました。
あたまにはリボンをつけた50代くらいのかわいらしい女性がいました。
(良かったら入ってゆっくりしていきなさいよ)
女性は言いました。
小さな小さな店内には、棚があって、たくさんのオシャレな帽子が置いてありました。
奥には数台のミシン。
かわいい帽子の箱の山。
型紙や布やリボンや。
壁には、カラフルなピカソやカラフルな帽子が印象的な映画のポスター。
外国の洋服や帽子の写真集。
まるで映画にでてくるような帽子の店のアトリエでした。
フランスの街の中にある帽子やさんのような素敵な場所。
個性的なカラフルな帽子がぐるりと並び、素敵なアトリエ。
いるだけでわくわくする。
ごちゃごちゃしている中でも、ふしぎに落ち着いて、探すとたからものがありそうな店。
たまたま入ったその店のオーナーは、かわいらしくておしゃれで元気なパワーあふれる素敵な人でした。
「ゆっくり、お茶でもいかが?」
入り口にある小さな椅子でお茶をいただく。
たまたま目についてこの店に入ったこと。
カフェをひとりでやりたいんだ、でも一人での不安もあることを、話始めていました。
するとオーナーさんは、自分が帽子屋さんになった話をしてくれたんです。
とある有名な女性の帽子作家さんの作った帽子が好きで、ある日店に買いにいったんだそうです。
ちなみにその帽子作家さんはとても有名な先生で、余談ですがその先生のアトリエが、ハウルの動く城の帽子やさんのモデルになったそうです。
そこでその先生に、「帽子が好きなんです」と話したら、先生はこう言いました。
(あなたは、あたしの帽子を買わないで自分で作りなさい)
先生にそう言われたオーナーは、そのまま帽子を作ることを先生から教わることにしました。
そして勉強のために、いきなりフランスに行ってアパートを借りちゃったんですってー!
ご結婚されているのにですよ。
そして帰ってきて、こちらで店を始めたらしいのです。
なんとまあ。
言う方も言う方ですが、言われて行動する方もすごいな。
どっちもすごい人だ。
フランス語も話せないのに、フランスに行って大変だったときの話や、アパートを借りるときの失敗談や、たくさんのフランス人との出会い、全てを楽しそうに昔話をする彼女が好きになりました。
無謀だけど直感で突っ走るところが、どこか同じにおいがしたんです。
それからなんどかお店に遊びにいきました。
彼女はほかにも、今の物件と出会ったときの話もしてくれました。
今の店は、なんとピカソの絵が繋いだ縁らしい。
たまたま入ったとある店に飾ってあったピカソの絵が気になり、思い切って店主に話しかけて、最後に譲ってもらって、帽子屋をしたいという話になり、物件を紹介してもらい、たまたまオーナーが来ていて、すぐに相談して、今に至るらしい。
たまたま来た、たまたま出会った、たまたますぐ決まった、たまたま…。
そんな話をしました。
「すべてたまたま…だけど、スムーズにいく瞬間はたまたまじゃないのよ。
ピンと来たたまたまの言葉や出来事は、逃しちゃダメよ」
そう教えてくれました。
それから、不動産やさんを紹介してくれたり、空き物件を見かけると、教えてくれるようになりました。
女性ひとりで店をはじめたオーナーさんに話を聞きにいきなさいなと他の方を紹介してくれたりもしました。
その街で店を始めることはできませんでしたが、あれから忘れた頃に電話をくださいます。
アタシが落ち込んだときになぜか電話をかけてくださるんですよね。
そして近況報告とか話します。
店を始めようと行動を起こさなかったら、この大切な出会いもありませんでした。
人との出会いも、おもしろいですね。
そして、たまたま入ったこの店と知り合えたことで、自分の好きな場所がはっきりしました。
やりたいのは古民家じゃない。
自分が好きなのは、かわいらしい場所だ。
いろんな色のある店、フランスの片田舎にあるようなアトリエのような雑貨屋のようなお茶やさんのような、そんな店がやりたい!
そう気づきました。
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