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藤井風が推しになった日

2020年の春だったと思う。車の中でAmazon Musicの『2020年 人気急上昇アーティスト』というプレイリストに含まれていたある1曲に耳を奪われた。ノスタルジックなピアノの和音で始まるイントロ、男性ボーカルの低温で甘い声、弦楽器で構成されるクラシックなメロディー。懐かしさも感じるのだが、後半に響くビートが都会的でもあり新しさも感じる。停車したときに、曲名とアーティスト名を調べた。『優しさ』という曲名で、藤井風というアーティスト。ちょっと変わったFirst name。ジャケット写真の長髪で目を閉じた青年の顔は整って美しくシティ派に見えた。

珍しくググりもした。私が拾ったプロフィール内容は、『岡山県出身、23歳、身長181cm、3歳からクラシックピアノを始める、YouTubeに動画を投稿』。これらの情報をもとに、私が導き出した勝手な想像は、『地方の金持ち・豪族の息子、幼い時からクラシックピアノを習う。身長180㎝以上でこの顔ってできすぎ。今は、東京の大学に出てきて、ヘラヘラしてます。歌作ってYouTubeに出したら売れちゃいました。』ていういけ好かない最近の若い人。でも曲には罪はない、『優しさ』は、私のヘビロテの1曲となった。

藤井風の名前は、そのあと、時々見聞きした。『虹色カルテ』の主題歌『旅路』のクレジットに。そして、『関ジャム』では、多くの音楽家たちを絶望の淵に陥れている才能とルックスの持ち主で新進気鋭のミュージシャンだと。そうか、私の感性、悪くないかも。と思っていたところ、確か、Free Liveの取材で多くの報道番組に出演しいた際、インタビューを受けていた、おそらく、報道ステーション?で、初めて彼の肉声を聞いた。

ラフな格好で現れた藤井風は、一人称が『わし』だった。。えー、その顔で千鳥みたいな岡山弁丸出し!そして、ところどころはさみこむカタカナでない英語発音(笑)、紹介されていたFree Liveでも英語を話してる。。この人、何?帰国子女? グランドピアノをビーサン履いてひいとる、雨の中、寝っ転がっとる。!!そして彼は言う、『少しでもFreeな気分になってもらえたらうれしい』。今まで私が抱いていた『いけ好かない若い男』のイメージとギャップがありすぎる情報が多すぎて、俄然興味がわいてしまった。

それから、私は彼のYouTubeの動画を曲を貪るように見て聞いた。
そして、ある1曲を聞いて号泣したー『帰ろう』。生きていくことに無気力になっていた私は、この曲に諭され、同時に肯定された気持ちにもなれた。
今でも以下の歌詞を聞くたび、涙がとまらなくなる。。

”ください ください ばっかで 何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま
ああ 全て与えて帰ろう ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの ありがとう、って胸をはろう”

『帰ろう』


2021年9月、『優しさ』と出会ってから1年以上たってしまったが、『帰ろう』との出会いで藤井風は、私の人生初の推しになった。


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