長〜〜いタイトルの通りです。
実況文化を全く知らない、むしろ先入観すらあったFE風花雪月のオタクが、実況者グループのナポリの男たちにどういうわけか沼落ちするに至った備忘録。
なかなか無さそうな経緯ではあると思うため、へ〜こういうこともあるんだな〜という沼落ちの実例として、覚えている限りのことを書いていきたいと思います。
お時間のある方は宜しければお付き合いください。

令和に初めて実況文化に触れる

2020年。
ファイアーエムブレム風花雪月をやるか仕事をするかの極端な二択の生活を送っていた最中、職場のストレスで鬱病になってしまい、とうとう年末に休職。
二週間ほどはただひたすら希死念慮と共に眠る毎日が続きます。起き上がる気力が出てくると、時間もあるし風花雪月をやろうと、狂ったように一日18時間くらいプレイして眠るだけの日々が続く。
風花雪月以外のことが何も手につきませんでした。

当時は実況文化のことは無知も無知。
ニコニコは学生の頃から見ていましたが、特定のアニメのMAD関連しか検索していなかったため、ランキングも全く知らず。幕末志士の名前だけ辛うじてツイッターでほんの少し聞いたことがある程度で、それすら志士の真似をする芸人の方なのだと思ってました。

しかし無知とは言えど、ゲーム実況動画が存在すること自体は知っており、正直なことを述べると当時は「実況動画」全般に対してどこか苦手意識と先入観がありました。
知らない人が喋りながらプレイしているのを見て面白いのだろうか？
自分でやった方が絶対面白いのに、動画を見てストーリーを知ってしまったら新しくゲーム買う人が減るのでは？
今では実況動画ならではの楽しさ面白さ見応えは身をもって理解しましたし、ゲームを買わなくなるどころか、むしろ実況がきっかけで興味を持って買ったゲームもあります。でも当時は実況動画の意義を疑問に思っていました。

実況動画に微妙な苦手意識と先入観を持ったきっかけは、遡ること数年前。ポケモンのレート対戦動画がどうしても見たくなって、YouTubeで検索して一番上に出てきた実況動画を再生したことがありました。

再生ボタンを押すと、初手から鼓膜をつんざくような大声(すぎるさんではない)、そして爆笑、罵声。クソだバカだゴミだと早口で捲し立てる喋り声に驚いて、すぐに動画を閉じてしまいました。
なるほど実況動画ってこういうものなのか……と納得。それ以来検索することはありませんでした。

そう思ったはずの数年前、しかし人間というものは好奇心に任せてつい手を伸ばしてしまうもので。風花雪月にどっぷり浸かった日々の中で、ネットに広がる考察ブログもツイッターの呟きも粗方読み切ってしまいました。
どこに行けば風花雪月に触れた人の感想をもっと見ることが出来るのだろうか……。
あまりにも風花の感想に飢えるあまり、とうとう未知の領域である実況動画にまで手を伸ばします。初手爆音のリスクを負ってでも、どうしても初見の人の新鮮な悲鳴が聞きたかったのです。

実況界の三葉虫との邂逅

探してみて分かりましたが、そもそも風花雪月を実況している人自体がとても少ない。プレイ時間が長いしルート分岐はあるしで実況では扱いづらいゲームなんですよね。
無心で検索しているとふと目に止まった、再生数コメントマイリスが高い動画。

実況界の三葉虫、ジャック・オ・蘭たんの実況動画でした。

名前で抱いた第一印象は「ウワーーッ蘭たんって！アイカツで聞いたことあるぞ！！」です。
もう名前からしてアイドルっぽいしコメント欄もファンが熱狂的に書き込んでいて怖いのでは……こりゃ風花雪月どころではないかもしれない……未知の世界への杞憂で二の足を踏みながらも、ふと気付きます。
蘭たんさん、もしかしてディミトリの誕生日に幻覚みたいなお祝いしてた実況動画の人では？


ゲーム内で偶然にも誕生日を迎えた風花雪月の主要キャラ、ディミトリ。その背後に父親と従者の顔を円形に並べて回転させながらやたら癖のあるハッピーバースデーを歌ってケーキを差し出すという、とても常人には思いつかなそうな切り抜き動画が海外ファンのツイートで回ってきたことがありました。
世の中には凄い人もいるもんだなあと他人事のように笑っていた記憶が蘇ります。あれ？これ本人では？

本人でした。


恐る恐るPart1を再生してみた時のことは忘れません。耳をつんざくような叫び声が来たらいつでも動画を閉じられるようにと音量も最小にして構えていました。
再生しても入らない音声。何度も自分がプレイしている時に見ていたゲームのオープニングムービー。それから初めて聞いた「さあ」という柔らかい声。

オープニングムービーで花が踏んづけられる場面で「ああ！花が……」って言っていて、えっそこ気になる！？って驚いたことをよく覚えてます。

蘭たんの風花実況は鬱に効く

ところで風花雪月。なにせ4ルートもあるため、どの学級を支持するか論争でオタクの間でもかなり荒れがちで。特に蘭たんが動画内でプレイしていた蒼月ルートは、個人的に好きな紅花ルートと対を為す話のためとりわけ荒れやすく対立が起こります。世界からもFEからも戦争が無くならないわけです。
蒼月ルートが初めてプレイした風花雪月だった場合の、紅花ルートの主人公格である黒鷲級長の印象は、ハッキリ言ってしまえばあまり良くはないでしょう。

私はこの黒鷲級長であるエーデルガルト=フォン=フレスベルグさんがとても好きで。周回して三度結婚したほどには彼女の人生を全肯定している意味での好きなのですが、全てのルートを経ないと、本心と目的が初見ではかなり分かりにくい子なのです。

そのため本格的に敵対することになる蒼月ルートでは、匿名掲示板などで馬鹿にされたり文句を言われたりすることが割合的にどうしても多い。実況動画もその辺りを覚悟をして見ていたのですが。
初めてキャラクター全員を見る場面。蘭たんは気に入ったキャラに豊かな語彙で全力の好意を伝えるのはもちろん、あまりピンと来ていなさそうなキャラにもしっかり言及して、馬鹿にしたりせず蔑ろにもしていない。
ああ、この人なら大丈夫そうだなあ。
安心して最後まで見届けることが出来ました。

エーデルガルトさんが敵対しても尚「でも何か理由があるんだろうな」「分かり合える道とか無いのかよ」と、敵だから悪！と決めつけない。
このルートでは敵役である彼女の背景を、ちゃんと知ろうとして、違えた道を悲しんでくれていたこと。
敵対しても「姉さん」という愛称で、ずっと呼んで気にかけてくれていたこと。
エーデルガルトさんのことを想いながら400時間風花雪月をプレイしたオタクにとって本当に、本当に、本当に嬉しかったです。

毎回終盤にある通信簿なんて、もう愛がないと出来ない。実況動画って基本的にここまでやらなきゃいけないものなんだなあ、と当時は思っていましたがそんなわけはない。蘭たん先生の努力と編集と愛情あってこそのもの。
メルセデスさんに対する白骨化するまで膝枕してほしいは愛情云々超えてマジでやばいなあと思いましたが。

蘭たんの声は、とにかく聴き取りやすくて耳に優しい。
そして直接的な刺々しい言葉を滅多に吐かないので、鬱によりめちゃくちゃに荒れ果てた精神状態でも身構えずに聴くことが出来ました。

そして語彙が豊富で、ゲーム内で起こった出来事を視聴者側に伝わりやすいように再翻訳するのが非常に巧い。
ストーリーに自然と寄り添う語り方をするから、何度もやったゲームでも初めて見るゲームでも、違和感なくその世界に入り込ませる手腕は天才のそれです。

実況という特性上、動画を見ていれば必然的に多く肉声の喋り声を聴くことになります。
いつまで聴いていても苦にならない話し方というのは一朝一夕で身につくものでは無いと思うので、本当に努力と才能の言葉に尽きると感じました。

こんなにも恐ろしい程に才能溢れた人がいるのか！と衝撃を受けるのと同時に、こんなにも良い動画をどうして今まで知らなかったんだろう……と悔やむ気持ちもありました。リアルタイムで更新を追ってみたかった。

不思議なもので、蘭たんの風花実況を見始めた日辺りから、どんどん心身ともに調子が良くなってきます。
この頃は毎晩訳も分からず泣いて眠れなかったのですが、風花実況を聴きながら寝落ちすることを覚え泣かずに眠れるようになりました。
どうしたの、顔色が見違えるほど良くなったね、と精神科の先生に驚かれたことを覚えています。

蘭たんさん呼び。

隔離先のホテルで見たぼくなつ実況

蘭たんの風花実況のお陰で(？)鬱も回復の兆しが見えてきて、職場復帰の日程も決まった頃。
まさかの同居家族の新型コロナウイルス感染が判明。濃厚接触者として検査を受けた結果、なんと自分と母も家庭内感染で陽性反応。ウワーーーーッ！！

結果として自宅隔離を一週間、もう一週間はホテル療養。一家壊滅の危機、狭い自室の部屋の中、母と二人で隔離状態。あのニュースで散々見聞きしていたコロナにまさか自分が……というショック、家に引き篭もっていたのにどうしてという行き場のないやるせなさ。
倦怠感に頭痛、味覚障害に嗅覚障害。

絶望にも等しい状況でしたが、その間の心の支えはYouTubeの蘭たんの実況動画。

当然外にも出られず寝たきり状態、やることがとことん限定された八方塞がりな状況の中で、唯一触れることができた娯楽。冗談抜きで本当に命を救われた心持ちでした。
もうこのまま死ぬかもとメソメソ泣いた数時間後に、クッキングシュミレーターの賽の河原ハンバーガーを見て涙が出るほど笑ったり。一生味が分からなくなるかもしれないと思い詰めた数時間後に、トロと休日を見て親子丼食べたいなあと思いを馳せたり。
ハンバーガーは笑い堪えすぎて枕に突っ伏して震えていたら、母に引きつけを起こしたと勘違いされました。

ラーメンLANCOを見て自分も開店したくなり買ったガールズモード4、コロナ療養期間中は自室でもホテルでも大変お世話になりました。療養中は蘭たんの実況を見るかガルモやるかの生活だった。

ホテルに移動してからはずっと、蘭たんのぼくのなつやすみ2の実況動画を見ていました。

隔離先のホテルには正方形の窓がひとつだけあって、換気のために三分の一ほど開くことが出来るんですよ。
息が詰まりそうな部屋の中。僅かに空いた窓の隙間から真っ青な空や夕焼け、星空を見て深呼吸して、ああ早く良くなって普通に空の下を歩きたいと涙したものです。

その窓から見える空よりうんと青くて自然の匂いがするようで、人と人との関わりが優しくて。ゆったりとしているのにどこか切なく時間が流れていく、ぼくなつはそんな動画で。
穏やかなのに、それでも何か抱えている登場人物たちを邪魔せず、ボクくんと付かず離れずな距離からそっと寄り添っている蘭たんがいて。

小さな液晶画面の中に広がる美しい夏休み、動画を見ていると本当に太陽の下に出て風を浴びているような錯覚に陥るような。ぼくなつ実況に没入している時間は、今現在の自分が置かれている状況を忘れさせてくれました。

ナポリの男たちって何者なんだ？

ぼくなつ実況を見ていて気になったのが、関連動画に高頻度で出てくる「ナポリの男たち」なるグループの実況動画。ぼくなつを最終回まで見届け、次に見る動画を探している時にふと気になりました。

グループ内での蘭たんは他のメンバーとどんな掛け合いをして、どんな実況をするんだろう？

ナポリの男たち。

黒背景にマフィアみたいな四人のキャラが描かれているアイコン。アイコンとグループ名を見た第一印象は、ゴリゴリに怖い陽キャ実況グループ。蘭たんだけが唯一の陰キャ担当なのかと思ってました(ひどい勘違い)

数ある動画のサムネイルを見ながら、蘭たんのトロと休日が好きだったこともあり、4にんで育てるどこでもいっしょを見てみようと決める。

トロが愛くるしい顔に似合わず「すたどんに行って おんなをたべたニャ」と言ってるサムネイル。少し違和感はありましたが、まあ蘭たんもこれに近いこと言う感性はあったような……と特に深く考えず再生。
これが初めて見たナポリの男たちの実況動画でした。

すたどんでおんなをたべるのはまだ良い方で、後半になるとかなり直球ワードが飛び出してきます。(こんな人気ある実況者集団がオフパコとか言って炎上しないの！？と戦々恐々とした)頭抱えそうになるシモなネタのオンパレード。
それなのに動画の振り返りでは誰も「お前これヤバいぞ」的な弄りをすることもゲラゲラ大笑いもせず、ただ淡々とぼそぼそと、トロは人間になれたのか？→これは無理だろうよと語っているだけ。何だこの人たちは……？？？

なんだか只ならぬ雰囲気に圧倒されながらも、次に見たのは、なぜか高頻度で関連動画に出てきていた高槻ワンサイドラバーの太鼓持ち切り抜き。

エーッ蘭たん歌うますぎやしないか！？
shu3って人どこいつだとあんな大人しそうなのに太鼓叩いて合いの手入れるの！！？

ナポリの男たちって一体何者なんだ！？と一気に興味を惹かれたきっかけでした。
そのあとにhacchiさんの一人ラジオの切り抜きを聴く。鬱病真っ只中な自分ですらもこの人ものすごく生き辛そうだけど大丈夫なのだろうか……と勝手に身を案じていた記憶があります。

ヒットソングメドレー2020。
蘭たんの動画を見ていると度々おすすめに出てきたのですが、2020年に流行ったJ-popなどの音楽をナポリの男たちが選りすぐってメドレー形式にしたものだと思ってました。それもあってイケイケトレンド陽キャ集団だと勘違いしていた節もありますね。
まさか蓋を開けてみたら本人たちが作詞して歌ってるオリジナルソングのメドレーだとは思わない。それも毎年。
会員になった今でもなぜ歌っているのか？と訊かれてもよく分からないけど、好きであることは確かです。

550円になった日

YouTubeのコメント欄を見ていると、頻出する「550円」という単語。どうやらチャンネル会員を指す総称らしく、週一で生放送配信を行っていることをこの時初めて知ります。この人たちのトークをもっと聴いてみたいなあと思いチャンネルのあるニコニコへ。

初めて見たナポリのチャンネル動画はなぜか「クリスマス恋のかま騒ぎ2017」でした。本当に何で？？？
おじさんたちがボイスチェンジャーで可愛い女の子の声になってキャッキャしてる生放送。開始10分ほどであたし肛門舐めれるわよ発言が飛び出し、メンバー同士がバーでデートシミュレーションをする生放送。何？？？

ただこの放送で初めて、ナポリは実況のみならず素のトークもめちゃくちゃ愉快で面白くて、他人を笑わせる力を持った人たちが集まっている場所だと実感します。
手を叩いてお腹を抱えるような、爆発力のある華やかな笑いではなく。隣で何の気なしに呟かれた知り合いの面白い発言を後々思い返して、何度かニヤリとするような笑いが断続的に続く。
数年前から匿名ラジオが好きでよく聴いていたのですが、空気感や話題の内容にどこか近しいものを感じ腑に落ちました。

確信を得ます。ナポリの男たち、キラキラ陽キャアイドルグループじゃない……陰に限りなく近い個性爆発人間大集合グループでは……！？

一週間ほどでホテル療養が終わり、退所の日が来ました。大量の荷物を抱えながら、フラフラと乗り込んだ帰りのタクシーの中。
家への懐かしい景色を眺め、落ち切った体力のために息切れしながら、私には確信めいた予感がありました。

あ〜家に帰ったらチャンネル会員登録するんだろうなあ。

コロナに罹ってしまった為、予定していた休職期間が伸び、職場復帰が遠のきました。休職期間中とはいえ職場内で初めての感染者という事実は消えません。
ニュースを見れば感染後の後遺症に悩まされる人のインタビューが、連日繰り返し報道されています。
インターネットでは感染者の事情そっちのけで、自己管理が甘いことを叩く言葉がずらりと並んでいて。
明日の我が身もどうなるか分からない状況の中、二度と感染前の人生には戻れない。過去に感染経験のある人間として後遺症を背負って生きていく。

そんなこれからの自分の人生のことを考えた時に、先立つ数えきれないほどの不安よりもずっとずっと、ナポリの男たちの面白い実況もトークもまだまだたくさん聴けるんだ！という未来への楽しみの方が勝っていました。

帰宅後は、心から焦がれていた自室のベッドに倒れ込み、安堵して泣いて、チャンネル会員登録をしてから10時間ほど眠りました。もしもホテルに長期滞在する際は、なによりも慣れた枕を持っていくことを強くお勧めしたいです。枕です。

ありがとうナポリメン

チャンネル会員になったからといって、5ヶ月経った今でもコロナの後遺症も鬱も完治はしないし、彼女は出来ないし、仕事で大成功もしないし外車は買えないし、宝くじも全く当たりはしませんが。
順風満帆にはいかない、ただ生きていくだけでもそれなりにしんどいことが多い毎日の中に、小さくも平穏な幸福がたくさん舞い込んでくるようになりました。

今日頑張れば蘭たんの動画が上がる。すぎるさんの配信がある。
今週頑張ればナポリのチャンネル配信がある。
数ヶ月頑張ればイベントがある。
その先、もっと未来には予想もできないような、とんでもない企画が待っているのかもしれない。

マラソンの休憩地点のように、道路の白線から落ちたら負けゲームの途中にある横断歩道のように。確実な安全地帯が定期的に存在することの、なんと心強いことでしょう。
つらいこともかなしいことも沢山ある世の中ですが、面白いことや楽しいことを追いかけるその姿に元気をもらって、毎日生きるのが楽しいです。
挫けそうな心を一方的に掬いあげてもらって、頑張る気持ちを思い出させてもらって、感謝してもしきれません。

ありがとうナポリの男たち。人生が豊かで幸せだと感じられるのは貴方たちのお陰です。
がんばれナポリの男たち。大きくなればなるほど活動への賛否も別れ様々な声が届くでしょう。グループ実況も、生放送も、催し事も、未知の領域へと挑戦するその姿も、やることなすこと全てを応援しています。

そして蘭たん、実況14周年おめでとうございます。
風花雪月を実況タイトルに選んでくれて本当にありがとうございました。全てはこれに尽きるのです。

いちオタクの備忘録に、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。定年退職した日の寝る前に蘭たんの実況動画を見ることが今の人生最大の夢です。
ナポリの男たちに溢れんばかりの幸あれ。