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卒業をもって2

こんにちは、M1の小路です。前回に引き続き振り返りを書いていきます。
今回は十傑戦と王座戦を振り返って終わりにしたいと思いますが、全国大会はいい棋譜が多く長くなってしまいそうです。ごめんなさい。

十傑戦

卒業研究が行き詰って中々絶望していた頃、四日市市での全国大会がやってきました。前入りを含め12月23日から、個人戦・団体戦合わせて1週間四日市市で過ごすことになりました。別にクリスマスの予定なんてないんですけど、この時期はよくないと思います。
前入り当日。余裕をもって電車に乗って、余裕を持ってホテルに着き、チェックインしようとするといきなり問題が発生。なんと運営の用意してくださったホテルに自分の名前がありません。頭が真っ白になり、大慌てで運営との連絡係をしてくれた後輩に確認すると、連絡ミスがあったとのこと。いきなり宿がなくなり、カラオケ泊も考えているとそのホテルにまだ空きがあったため、なんとか復活。全国大会に宿なしで挑む男にならなくて本当に良かった。その後周辺で夜ご飯に行くと、おそらく全国大会の出場者であろう人たちが。将棋をやっている人ってなんとなく分かるの不思議ですよね。

そして迎えた十傑戦1日目。緊張しながら会場に向かうと、そこには応援で来てくれた大阪公立大学のm本くんが。大阪公立大学からは女子代表が出場していたので自分の応援だけではないですが、味方がいるのは本当に心強かったです。しかも実況までしてくれて最高の後輩です。
ちなみに大阪大学からの応援は一人も来ませんでした。(団体戦もあるので前入りついでに何人か来るかと思いましたが)

会場の選手のレベルは本当に高く、当初目標を十傑入りとしていましたが、正直行けるわけないと思っていました。全国の厳しい予選を勝ち上がった人たちに比べ、僕は救済処置枠ですし大学将棋で実績はありません。
それでも、応援してくれる人がおり、阪大の参謀陣からも「小路が勝てば勝つほどオーダーが組みやすい」と言われていたので、団体戦のためにも気合全力で臨みました。背負うものがあるとやはり力は発揮されますね。
なにより自分自身救済枠で来ただけの奴になりたくなかったので、必ず爪痕は残そうと強く決心していました。
試合形式は4戦行うソルコフ方式。迎えた予選1回戦。相手は明治大学のk田さん。対戦相手が決まった後、m本くんの顔が曇ったので強い人を引いたのだろうと思いましたが、そんなことは無視して挑みました。

相居飛車に見えるかもしれませんが、これは相振りの進行です。僕が相居飛車なんて指せるわけがないです。左玉調にしようとしたのですが、的確な牽制で振り飛車党なのに飛車すら振れませんでした。完敗です。ちょっと強すぎでした。
試合後m本くんに相手が元奨初段の優勝候補と教えてもらい震えてました。
春に続き全国大会の引き運が恐ろしいです。

続く2回戦。予選通過のためには後がない一戦。相手は北大のk村さん。北大は団体戦の方でも当たるので、絶対に負けられません。戦型は自分の三間飛車に対して、相手は急戦模様からの穴熊となりました。まず飛車を振れたことに喜んでいました。

局面は終局図で得意戦形に持ち込め勝利。玉はいつのまにか55にいました。

3回戦。ここを勝つと本気で予選通過が見えてくるところ。相手は同じ特別招待枠のk本さん。戦型は嬉野流をされました。嬉野流!?
正直明確な対策をしていなかったので、一手一手を慎重に指しました。

いつのまにか力戦調になり、玉頭戦で力が出せる展開になりました。
局面は遠見の角(?)を決めたところで、そのまま押し切り勝利。

3局終わって2-1。次を勝つと予選通過が確定する位置までやってきました。
予選を通過すると、ベスト8が確定するためかなり熱い展開。成績が2-1の人は6人いたため、誰と当たるのかドキドキしていると4回戦の相手はなんと3連勝中の新潟大のs藤さん。全勝の人を引いてしまうという引きの強さを再び発揮してしまいました。3局も全力で挑み疲れた状態での全勝者で、心が折れそうになりましたが相手も疲れているはず。しかも相手は予選通過確定のため本気を出さないのではという甘すぎる期待を持って4回戦。

△33角に対して▲55歩は△76銀▲同角△55角▲同銀△56飛がきつく、受けが厳しい

戦型は相振り飛車。いつもどおり玉を中央に構え、隙をなくしたつもりでしたがあまりにも鋭い寄せを連発されそのまま投了。局面の△33角はあまりにも痛かったです。読めば読むほど感嘆の一手ばかりで、今まで対戦してきた人の中で最強でした。ちなみにs藤さんとは対局後なぜか意気投合し、友達になれました。今でも交流があり嬉しい出会いです。

予選の結果は2-2。気持ちよく負けたので、2日目の9.10位目指して頑張ろうと思っていると、m本くんからソルコフ点での予選通過があるとの報告が。
なんと自分が負けた2人は4戦全勝でソルコフ点がかなり高いことになっていました。引きの強さがまさかこのような展開になるなんて。
さすがに期待せずにはいられず、全局終了までそわそわしていました。結果はなんと8位でギリギリ予選通過。まさかの結果に会場でまじで飛び上がってました。目標の十傑入りも確定。奇跡が起こりました。
その夜は他大の人からも大いに祝ってもらえ、大満足で一日を終えました。
ちなみに阪大の団体戦のメンバーからは3人からしかおめでとうが言われませんでした。こういうところが阪大には足りていないと思います。

予選結果

十傑戦2日目。1日目喜びすぎたためよく眠れました。試合形式は予選通過者によるトーナメントで、1回戦の相手は予選の順位による決まります。
自分は8位通過なので1位と対戦。相手は再び明治大学のk田さん。予選ではボコボコにされましたが、自分の爆発力を信じ、たとえ相手がプロであろうとその1局だけなら勝ってやるという気持ちで対局。今度こそ飛車を振ってやろうと挑むと、相手は居飛車を選択。どちらもできることに感嘆しましたが、これはこちらも好都合。先後が入れ替わったことを警戒しての居飛車だったそうです。戦型は相手の居飛車穴熊に対して真部流という得意な戦型に。というかこれしかできません。

局面は8筋を捨てる代わりに、3筋・5筋を主張していく真部流としては理想の展開。しかし、相手は4枚穴熊で実践的にはまだまだこれからの将棋でしょう。以降は△79飛成▲53歩成と攻め合い、33の地点に駒を叩き込み穴熊の分解に成功しました。

ここでこちらの指し手は▲41金。一見角を取りにいくぬるい手ですが、相手の持ち駒が悪く、角を取る手が▲33角からの詰めろになります。また角を取らずに▲31金もかなり強烈です。最善かどうかは分かりませんが、当時は決まったと思ってました。以降△56桂▲51金△39銀と厳しく迫られ、局面は以下のように。

ここから▲33歩成[詰めろ]△13銀▲48銀[詰めろ]△51角▲25桂[詰めろ]△33角▲39銀という3連続詰めろを決めながら敵の攻め駒を一掃する華麗すぎる手順を披露。さすがに手が震えました。以降は安全に攻めを繋げ見事勝利。優勝候補相手に大金星をあげました。対局中は本当に苦しかったですが、応援してくれる人のためにもここだけは譲れませんでした。
なんとこれで4位以上が確定してしまいました。当初の目標を大きく超え、阪大としても快挙を成し遂げ、言葉で表せないほどの達成感・充足感を感じました。
このまま優勝までと意気込んで対局に臨みましたが、準決勝に負け、3位決定戦でも負け結果は4位となりました。両局激戦でしたが最後の勝負所で勝てなかったのは、ベスト4という結果に満足してしまったことも要因だと思います。貪欲になれなかった自分はまだまだです。
よって最終結果は4位となりました。応援してくれた人達本当にありがとうございました。最後は失速してしまいましたが全国4位という結果は素晴らしいもので、春からのことを想うと、まるでドラマのような体験をさせていただけました。
少しは自分の名前が全国に広まったかなと。2023年を飛躍の年と言うに値する結果と言えるでしょう。

王座戦

十傑戦が終わった翌日。王座戦1日目が始まりました。今度は14人1チームで戦う団体戦です。全国大会の個人戦と団体戦の両方に出れるなんて贅沢な経験ですね。大学将棋では初めてとなる団体戦全国大会出場であり、なにより昨日の個人戦の結果からエースとしての自覚・プレッシャーを感じていたため、チームを鼓舞するように、実際は自分に言い聞かせるように「3-3をまわしてくれたら勝つ」と言っていました。

1回戦の相手は山口大学。今後に繋がる大事な初戦、四将での登板でした。
相手は山口大学の絶対的エースy村さんでここでも強烈な引き運を見せつけました。y村さんには昨年の学生選手権で負けており正直分が悪い戦いですが、自分が勝てばチームの勝利にかなり近づくし、なんなら自分が負けてもチームが勝ってくれるとポジティブに挑みました。実際作戦会議ではy村さんを倒す想定ではなかったですが、当たったからには倒しに行きます。
戦型は相手の居飛車穴熊に対して真部流。棋譜を見返す度本当にこれしかしてません。得意戦形に持ち込めたためか、終盤をおそらく優勢な局面に持ち込めました。

これを勝てばチームに勢いと自信を与えられる、なにより強敵を倒したいと思いながら局面を進めました。しかし相手もエースとして簡単には勝たせてくれず、何度も難しい局面を迫られました。本当に苦しかったですがなんとか勝利、強豪を沈めました。大歓喜。
この一勝があれば負けないだろうとチーム状況を確認するとまさかの3-3。緊張の一局を木村が勝ち切り4-3で勝利!(正直局面的には負けかと… ) まさに団体戦の醍醐味を味わいました。
チームとしては激戦を制し好調なスタート、個人としてはエース対決を制したことで完全に勢いに乗りました。

2回戦は名古屋大学。四将として登板、戦型は相振り飛車となりました。
自分は(途中大ポカがあり気が動転しましたが)らしい形で勝利、きっちりと仕事を果たしました。それよりも隣で福田が敗勢の将棋を怪しい粘りや寄せで迫り大逆転していたのは感嘆しました。あれは自分にはできません。
結果は4-3と勝利!福田の逆転が大きかった。

3回戦は金沢大学。立命、早稲田、東大の上位3チームに並ぶ強豪です。
四将として登板、相手は大エースk井さんとなりました。引きの豪運が止まりません。他のメンバーも厳しい当たりをしており、阪大の勝利には誰だろうが勝つしかありません。戦型は相手の天守閣右四間に四間飛車で挑みました。序盤から難解な力戦調となり、力と力のぶつけ合いでした。

相手の大きな駒音にも負けないようにこの局面で▲47角と得意の筋違い角を放ちました。妙な手に見えますが、中々受けにくい実践的な手で相手もここで長考。ペースは握ったかなと思っていたら、数手後に技をかけられあっという間に不利に。強すぎでした。ただ不利からの誤魔化しは自分も負けていません。ここでは書ききれない程の緻密な攻防があり、迎えた以下の局面。

駒が少なく押しつぶされそうなここから▲53桂成△同玉▲41龍と最後の猛攻を仕掛けます。以降△同銀▲54金△42玉▲43金△51玉…と進み以下の局面。
ここで抜群の一手が炸裂します。次の一手問題にしたいくらいですね。
ソフトにかけてないので最善かどうかは知りません。

ここで▲83歩成ではなく、▲79香。△同とには▲同飛から馬に当てて、馬が動くと55の銀が取れます。持ち駒も悪く78に合駒もできません。すべてが嚙み合ったぴったりの一手で、60秒将棋でこれが見えたのは一瞬だけ藤井聡太が憑依したようでした。間違いなく2023年のベスト一手です。
相手は△89歩成とし▲77香と馬を取りながら73に利かすことができました。
以降端の猛攻を仕掛けられましたが、首の皮一枚で耐えて見事勝利!まさかの勝利にチームメイトも驚いていました。エースを倒したことで、チームの勝利もあるかと結果を確認すると2-5で敗北。さすがの強さでした。

以上で初日が終了し、チームとしては2-1と悪くない滑り出し。個人としては3連勝で、しかもエースを2人も倒すという最高の結果でした。あの時は本当に誰にも負ける気がしなくて、完全にゾーンに入っていました。
全国大会になると自分の棋力が数段上がっている気がします。

王座戦2日目。このまま全勝してやろうと朝起きるとなんだか体調が悪く、回復するまでホテルで休むことになりました。原因は個人戦団体戦合わせて10局も指したことによる疲労だと思います。そのため初戦の東北大戦は応援となりました。休まないといけないのに、気になりすぎて実況をずっと見てしまってました。結果は3-4負けとなり、自分が出れていればと本当に本当に悔しかったです。自分が出てない試合でもチームみなで悔しくなれるのは団体戦のいいところですね。

2回戦は早稲田大学。今回も自分はおやすみです。ただ少し回復したのと余りにも悔しかったので会場で観戦しました。結果は1-6でしたが、惜しい将棋がいくつもありパワーをもらえました。強豪相手に1勝もぎとった松村はやっぱりさすが。

3回戦は立命館大学。同じ関西地区の大強豪です。まだ完全には回復していませんでしたが、全国の舞台でぜひとも戦いたく登板させていただきました。今の自分なら勝てると全力で挑みましたが、なんとチームで一番最初に負けてしまいました。完全に読み負けで純粋にm越さんが強かったです。
この早さでの敗北はチームにもよくないだろうと不安に思いながら観戦に回ると互角以上の局面が多く、全くわからない勝負となっていました。
阪大将棋部強いです。
福田は序盤から研究で圧倒し完勝、橋口は異次元の頓死を決め、松村は序盤でのリードを一度も譲らず勝利、最後は木村が長手数の難解な終盤を制し、なんと立命館相手に4-3での勝利を収めました。まさか全国の舞台で立命館を倒すなんてのは夢にも思っていませんでした。自分が負けた中勝ってくれたチームは本当に最高でした。団体戦はこういう時が一番楽しいです。
さすがにこの夜は余韻に浸りましたね。

王座戦3日目。体調もほぼ良くなり、東大戦です。東大はこれまで全勝しており、立命と早稲田から勝利をお願いされて臨みました。立命に勝った自分たちならと思いましたが、結果は2-5。そう簡単にはいきませんね。
しかし次の北大戦は7-0、九大戦は6-1と好成績。後輩もしっかりと勝ち切っており、成長を感じられるうれしい結果になりました。九大戦では西日本大会団体戦で同じチームのm井さんと対決。同じチームかつエース対決は熱かったです。

以上をもって王座戦は終了し、大阪大学は5-4で5位という結果になりました。入賞はできませんでしたが、立命に勝つなど大変記憶に残る大会で大満足です。大阪大学チーム最高です。
個人成績は6-1で、強敵ばかりの中本当によくやったと思います。
自分は多く出場させて頂きましたが、全国大会での対局は本当に貴重な体験でレベル・空気感・プレッシャーすべてが質の高いものとなります。経験するだけで棋力も精神的にも大きく成長できるのでぜひ後輩たちには再び全国に行ってほしいと願っています。

学生選手権も振り返りたかったですが、終わりそうにないのでやめます。
すいません。

最後に

まず4年間阪大将棋部として関わっていただいた皆様、本当にありがとうございました。嫌な思い出など一つもなくとても楽しい日々でした。
先輩方、少し生意気な後輩だったかもしれませんが4年間頑張ったので許してほしいです。
大会では苦しい期間の方が長かったですが、最後の最後に有終の美を飾れて思い残すこともありません。強いて挙げるなら、後輩たちにもう少し自分を倒してほしかったくらいです。
自分が意識していることですが、後輩たちには気持ちを大事にしてほしいと思います。将棋は100%実力の勝負ですが、人同士の対決ならば気持ちも大きな要素だと思います。大会や重要な勝負ならなおさらです。
「勝てない」ではなく「勝てるかもしれない」、団体戦なら「自分がチームを救う」など実際自分は気持ちで棋力が大きく変動しました。なので全国出場(個人戦でも)や立命撃破など、気持ちや志は高くもって将棋(将棋以外も)に臨んでほしいです。
また向上心は大事ですが、それゆえに気持ちをすり減らすような無理はしないでほしいです。研究や将棋の勉強は重要ですがあくまで楽しみながら強くなってほしいですし、楽しくないなら強くなれないと思います。自分を大事にして、いい意味で自己中であってほしいです。
同期のやつらはたまにいらつくことをするけれども、なんだかんだ大好きなメンバーです。また将棋でもしながらだべろうと思います。

もうブログを書くことはないのでだらだらと書きましたが、大学院生になったのであと2年だけいます。もう少しだけよろしくお願いいたします。

令和6年4月11日 小路優輝

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